区間 (数学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/31 00:29 UTC 版)
性質
- 実数直線 R 内の区間の概念は、R の連結部分集合の概念にちょうど一致する。したがって、任意の区間を任意の実数値連続函数で写した像もまた区間となることがわかる。これは中間値の定理の一つの定式化である。
- 区間の概念はまた R 内の凸部分集合の概念とも一致する。ゆえに部分集合 X の区間包は X の凸包である。
- 区間からなる任意の族の交わりは必ず一つの区間である。二つの区間の合併がふたたび区間となるための必要十分条件は、両区間の交わりが空でないか、一方の区間の開端点が他方の閉端点に一致することである。後者は例えば、(a, b) ∪ [b, c] = (a, c] のようなことを言っている。
- R を距離空間と見るとき、その開球体とは有界開区間 (c + r, c − r) のことであり、その閉球体とは有界閉区間 [c + r, c − r] のことを言う。ここで中心が c, 半径は r であることに注意せよ。
- 区間 I の任意の元 x は I の交わりの無い三つの区間 I1, I2, I3 への分割を定義する。これら三つは順に、I のx より小さい元全体、一点集合 [x, x] = {x}、x より大きい元全体である。分割片 I1, I3 がともに空でない(特に内部が空でない)ための必要十分条件はx が I の内部に属することである。これを区間に対する三分原理と言う。
一般化
高次元区間
多くの文脈において、n-次元区間は、各座標軸上に各々ひとつ取った n 個の区間の直積集合 I = I1 × I2 × ⋯ × In として書ける Rn の部分集合として定義される。
n = 2 のとき、これは各辺が座標軸に平行な矩形領域(各区間の長さが等しければ正方形領域)として見ることができ、同様に n = 3 のとき、軸に平行な直方体領域(同様に立方体領域)となる。高次元の場合にも、n 個の区間の直積は有界な n-次元超立方体または超矩形である。
いま定義した意味の区間 I のファセット (facet) は、I を定義する直積因子のうち任意の非退化区間 Ik を Ik の有限端点のみからなる退化区間に取り換えて得られる区間を言う。I の面集合とは、I 自身および I の任意のファセットの面となるもの全てからなる集合である。I の頂点集合とは、Rn の一点のみからなる面全体の成す集合を言う。
いくつかの場合には、一次元の場合の記法を流用した記法も用いられる。a, b ∈ Rn を成分表示したものが a = (a1, …, an) および b = (b1, …, bn) であるとき、
- 閉区間
- 開区間
- 半開区間(左閉右開)
- 半開区間(左開右閉)
複素区間
複素数の区間は複素数平面内の矩形領域もしくは円形領域の何れかとして定義することができる[2]。
区間の位相環
区間は両端点を座標とする平面上の点と対応付けることができ、したがって区間からなる集合を平面上の領域と対応付けることができる。一般に、区間を実数直線の直積集合 R × R に属する順序対 (x, y) と対応付けるとき、y > x はしばしば暗黙の仮定としてあるが、数学的構造を見る目的でこの制約は課さず[3]、y − x < 0 なる「逆向き区間」("reversed intervals") も許すことにする。そうすると、区間 [x, y] 全体の成す集合は、R 同士の直和に成分ごとの和と積を入れた位相環と同一視できる。
この直和環 (R ⊕ R, +, ×) は二つのイデアル {[x, 0] | x ∈ R} および {[0, y] | y ∈ R} を持つ。この環の乗法単位元は退化区間 [1, 1] である。二つのイデアルに入らない区間 [x, y] 乗法逆元 [1/x, 1/y] を持つ。通常の位相のもと、この区間からなる代数系は位相環を成す。この環の単元群は各座標軸(これはいまこの環のイデアルとして与えられているのであった)で分けられる四つの四分象限からなる。単元群の単位成分は第一象限である。
任意の区間は、その中点を中心とする対称区間と考えることができる。M Warmus が1956年に出版した再構成では、「均衡区間」("balanced interval") [x, −x] の軸を点に退化した区間 [x, x] の軸に沿って用いている。 区間の環を、直和環 R ⊕ R ではなくて、分解型複素数平面に同一視[4]したのは M. Warmus と D. H. Lehmer である。同一視は
- z = (x + y)/2 + j(x − y)/2
を通して得られる。この平面上の線型かつ環同型な写像は、平面上に乗法構造を与え、そこでは通常の複素数の算術にあるような極分解などの類似物を考えることができるようになる。
- ^ http://hsm.stackexchange.com/a/193
- ^ Complex interval arithmetic and its applications, Miodrag Petković, Ljiljana Petković, Wiley-VCH, 1998, ISBN 978-3-527-40134-5
- ^ Kaj Madsen (1979) Review of "Interval analysis in the extended interval space" by Edgar Kaucher(要登録) from Mathematical Reviews
- ^ D. H. Lehmer (1956) Review of "Calculus of Approximations"(要登録) from Mathematical Reviews
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