労働 国際労働基準

労働

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 00:07 UTC 版)

国際労働基準

国際労働基準は、国際労働機関(ILO)が制定した条約・勧告の総称である。ILOでは人類の平和と継続的な発展のために人道的な労働基準の決定とその基準を国際的に守ること(すなわち国際労働基準)が必要であるとしている。その根拠として二つ挙げられている。

まず、労働基準を定める理由としては、不正・劣悪な労働条件が社会不安や貧困を引き起こす原因となり、多くの人民に困難や苦しみを与えるばかりでなく、結果として紛争や戦争の原因となり世界の平和を脅かすこととなるからである。

また、国家単位でなく国際的に決定する理由として「いずれかの国が人道的な労働条件を採用しないことは、自国における労働条件の改善を希望する他の国の障害となるから」(ILO憲章より引用)である。障害となる根拠としては労働条件を守らないことで不当に製品の金額が安くなる(ソーシャルダンピング)などが挙げられる。

しかし、日本はILO常任理事国でありながら、2021年現在ILOが採択した189条約のうち49条約しか批准していない[14]。下記条約のうち批准しているものは最低賃金決定制度(第26号・第131号)のみであり、労働時間・休暇に関してはひとつも批准していない。日本の労働法制は大筋ではILO条約に倣ったものとなっているが、種々の例外規定を定めていることから政府は批准に消極的で、実際の企業実務ではこの例外規定をどう適用していくかが問題となる。

具体的な労働条件としては以下のようになっている。

労働時間(第1号・第30号・第47号)
労働時間は一日あたり8時間以内、かつ一週あたり48時間以内とされている。適用されない者としては「監督の立場にある者」や「秘密の事務に従事している者」などである。また、特定条件のもとでは特定日に8時間を越えたり、特定週に48時間を越えたりすることは許されるが、この場合でも3週間の労働時間の平均が1日8時間・1週48時間を超えてはいけない。業種により多少の違いがあるが、工業・商業・事業所など通常の労働者に対して同程度の労働時間となっている。
休暇(第14号・第18号・第132号)
週休は週に一日以上。有給休暇は1年勤務につき3労働週(5日制なら15日、6日制なら18日)以上となっている。また、休暇は原則として継続したものでなければならないが、事情により分割を認めることもできる。ただし、その場合でも分割された一部は連続2労働週を下回ってはならない。また、「休暇権の放棄等は国内事情において適当である場合は禁止または無効とすること」となっている(フランスでは休暇権の放棄は禁止されている)。
賃金(第26号(日本も批准)・第95号・第131号(日本も批准)
すべての賃金労働者に対して最低賃金を定め、かつ随時調整できる制度が必要である。最低賃金としては、労働者が家族を養える一般的賃金や生活費や社会的集団の生活水準を考慮したものでなければならず、また、経済的な要素(生産性や雇用の維持・発展性など企業側から見た要素)も考慮しなければならない。最低賃金制度の設置、運用及び修正に関しては、関係ある代表的な労使団体と十分協議する必要がある。

  1. ^ 広辞苑 第五版 p.2845
  2. ^ 大辞泉
  3. ^ a b c ブリタニカ百科事典
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『哲学思想事典』岩波書店、1998年、1736-1737頁。 
  5. ^ OECD (2019), Self-employment rate (indicator). doi: 10.1787/fb58715e-en (Accessed on 08 September 2019)
  6. ^ 宇城輝人「働くことと雇われることのあいだ : 賃労働の過去と現在」『フォーラム現代社会学』第11巻、2012年、81-89頁、doi:10.20791/ksr.11.0_81 
  7. ^ 基本的人権3 東京大学社会科学研究所 東京大学出版会 1968年 p201-202
  8. ^ 知識ゼロからの聖書 大島力 幻冬舎 2011年 ISBN 9784344902244 p28-29
  9. ^ a b 水墨創世記 司修・画、月本昭男・訳 岩波書店 2011年 ISBN 9784000237260 p26
  10. ^ 宗教と資本主義の興隆、上巻―歴史的研究― リチャード・ヘンリー・トーニー著 出口勇蔵・越智武臣訳 岩波書店 1956年 ISBN 9784003421116 p183
  11. ^ 精神障害のある人の人権 関東弁護士会連合会 明石書店 2002年 ISBN 9784750316215 p39-40
  12. ^ 読売新聞2020年12月20日付朝刊言論面
  13. ^ 「多様な正社員」について 厚生労働省
  14. ^ 国際労働基準(基準設定と監視機構) 国際労働機関
  15. ^ 筒井淳也、前田泰樹 『社会学入門:社会とのかかわり方』 有斐閣 <有斐閣ストゥディア> 2017年、ISBN 9784641150461 pp.84-87.
  16. ^ 無償労働”.知恵蔵.コトバンク. 2018年9月18日閲覧。






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