再使用ロケット実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/29 16:48 UTC 版)
再使用観測ロケット
再使用観測ロケットは、RVTの実用化事例として計画された観測ロケットである。2008年8月に実証計画が宇宙工学委員会の審査を通り、プリプロジェクト化された。
再使用観測ロケットでは、従来のRVT#1-#4が基本設計を継承した改良であったのに対し全面的な拡大発展を予定しており、100kg程度のペイロードを搭載し、高度100kmまで上昇することを目標としていた。エンジンや姿勢制御等の機器類もRVTのものを流用もしくは発展させて使用するが、エンジンは4基搭載し、全体に大幅に大型化している。開発は、設計開始から試験飛行完了までの期間が5年、費用は50億円と見積もられた。
本機は、1日1回の飛行を5回連続して行った後、分解整備を受ける。この際の飛行費用は1回あたり2500万円を予定している。現行の実験観測用ロケットは、使い捨てで1機2-6億円であることから、本機の実用化により一桁以上のコストダウンとなる。また、搭載する実験機器も容易に回収できる(従来はパラシュートで海上に着水するなど、過酷な環境で、回収にも手間を要した)ことから、この点でもコストダウンが図れるほか、より高価な機器や衝撃に弱い機器の搭載も可能になる。さらに、本機は任意の高度で空中停止することも可能であり、高層大気観測などで従来不可能だったことが可能になると考えられた。
また本機の実用化により、「航空機のように、簡素な整備で繰り返し飛行するロケット」の運用経験を蓄積することができる。JAXAでは、小型再使用ロケットと大型使い捨てロケットを並行して開発することで、将来の大型再使用ロケット開発につながる技術の蓄積ができると考えていた。
2014年、三菱重工業は「三菱重工技報 Vol.51 No.4 (2014) 航空宇宙特集」において、JAXAと協力して研究している再使用観測ロケット技術実証の成果を報告した。 この中で公開された再使用観測ロケットの主要諸元は、機体全長13.5m 全備重量11.6t エンジン推力40kN×4基というものであった。
2015年6月15日、JAXAは再使用ロケット・エンジンの技術実証試験が完了したことを受け、報道関係者向けに説明会を実施。 試験では今年2月までに、エンジンの起動と停止の累積回数は142回を記録、累積燃焼時間は3785秒にも達している。これにより、100回の打ち上げに相当する負荷に耐えられることが実証された。
しかし、再使用観測ロケット自体は実用化されないまま、2016年に再使用・観測ロケット技術実証プロジェクトは終わりを迎えた。一方で、同年には新たに再使用実験機RV-Xの開発が始まっており、その後は独仏日共同のCALLISTO実験機を経て、ロケット1段目の再使用を検討するとなっている。[1]
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