免疫系 特異的・適応的な獲得免疫

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免疫系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/09 18:45 UTC 版)

特異的・適応的な獲得免疫

獲得免疫系は初期の脊椎動物進化し、より強力な免疫反応を起こし、個々の病原体が特定の型であることを示す抗原によって判別し記憶(免疫記憶)する機構である[40]。応答は抗原特異的であり、抗原提示と呼ばれるプロセスの間に特異的な非自己の抗原であるという認識が行われる必要がある。抗原特異性の認識によって、特定の病原体あるいは特定の病原体感染細胞に対して調整された応答の発動を可能とする。このような調整された応答を開始する能力は体内の記憶細胞によって保持される。もし病原体が1回以上生体に感染するなら、このような特定の記憶細胞が使われて即座に病原体は排除される。

リンパ球

獲得免疫に関与する細胞は特定の種類の白血球で、リンパ球と呼ばれている。その主要なタイプはB細胞T細胞であり、骨髄の中の造血幹細胞に由来する[26]。B細胞は体液性免疫反応に関与し、T細胞は細胞性免疫応答に関与する。B細胞とT細胞は、特定の目標を認識する受容体分子をもっている。T細胞が病原体のような「異物」のターゲットを認識するには、抗原病原体)が小片まで分解されて自己の受容体である主要組織適合遺伝子複合体(MHC、Major Histocompatibility Complex)分子と組み合わさって提示されねばならない。T細胞には細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)とヘルパーT細胞の2種類の主要なサブタイプがある。細胞傷害性T細胞はMHCクラスI分子と結合した抗原のみを認識し、ヘルパーT細胞はMHCクラスII分子と結合した抗原のみを認識する。これらの2つの抗原提示の機構は、2タイプのT細胞の異なる役割を反映している。3番目のマイナーなサブタイプのT細胞としてγδT細胞があり、MHC受容体に結合しない、非加工の抗原を認識する[41]

対照的に、B細胞の抗原に特有の受容体は、B細胞表面上の抗体分子であり、抗原加工なしに、病原体全体を認識する。B細胞上の抗体は、将来そのB細胞が産生する抗体のサンプルであるが多少の違いが存在する。B細胞の各々の増殖系は異なった抗体を発現し、B細胞の抗原受容体の完全な1セットは体が作ることができる全ての抗体を表すものである[26]

細胞傷害性T細胞(CTL)

キラーT細胞が外来性ないし異常な抗原を表面にもった細胞に直接攻撃を加えている。[42]

細胞傷害性T細胞(CTL、キラーT細胞)はT細胞のサブグループで、ウイルス(および他の病原体)に感染した、損傷した、または機能不全の細胞を殺す[43]B細胞と同じく、各タイプのT細胞は異なる抗原を認識する。 細胞傷害性T細胞は、自身の持つT細胞受容体(TCR)が別の細胞のMHCクラスI受容体と複合体を作っている特定の抗原と結合するとき、活性化する。 このMHC-抗原複合体の認識は、T細胞上のCD8と呼ばれる共受容体によって助けられる。 それからこのT細胞は、このような抗原を保持したMHCクラスI受容体を発現させている細胞を捜して、体内をくまなく移動する。 活性化したT細胞がこのような細胞に接触すると、パーフォリン英語版のような細胞傷害物質を放出する。パーフォリンは標的の細胞の細胞膜に孔を開け、イオン、水と毒素を侵入させる。 グラニュライシン英語版タンパク質分解酵素)と呼ばれるほかの毒性物質の侵入は、標的の細胞にアポトーシスを誘導する[44]。 T細胞による宿主細胞の殺害は、特にウイルスの複製を防ぐのに重要である。 T細胞の活性化は厳しく制御されていて、一般にきわめて強いMHC-抗原複合体の活性化シグナルか、ヘルパーT細胞による付加的な活性化シグナルを必要とする[44]

ヘルパーT細胞 (Th)

ヘルパーT細胞の機能:抗原提示細胞(APC)はMHCクラスII分子(MHC2)上に抗原を提示する。ヘルパーT細胞はこれを認識し、これはCD4コレセプター(CD4+)の助けを得る。静止期ヘルパーT細胞の活性化によってサイトカインや他の刺激シグナル(緑の矢印)が放出され、膜、細胞傷害性T細胞、およびB細胞の活性を刺激する。B細胞への刺激は抗体産生につながる。B細胞とマクロファージへの刺激はヘルパーT細胞の増殖後に行われる。

ヘルパーT細胞(Th細胞)は自然免疫と獲得免疫の両方の免疫反応を調節していて、生体が特定の病原体に対して、どちらの免疫反応を行うか決定するのを助ける[45][46]。 ヘルパーT細胞には細胞を傷害する能力はなく、機能不全な細胞も殺さす、病原体も直接消さない。代わりに、他の免疫細胞への指示を司ることで免疫反応を統制している。

ヘルパーT細胞は、MHCクラスII分子と結合した抗原を認識するT細胞受容体(TCR)を発現している。そのMHCと抗原の複合体は、おなじくヘルパーT細胞のCD4共受容体によっても認識され、T細胞の活性化に作用するT細胞内の分子(例えばLck英語版)を動員する。 ヘルパーT細胞のMHC:抗原複合体との関係は、細胞傷害性T細胞より弱い。 それは、細胞傷害性T細胞が1個のMHC:抗原複合体分子の交わりによって活性化するのに対し、ヘルパーT細胞の活性化には、多数(200〜300くらい)の受容体に、MHC:抗原複合体が付着しなければならない、ということである。 また、ヘルパーT細胞の活性化には、抗原提示細胞とより長い交わり時間を必要とする[47]。 休んでいたヘルパーT細胞は、活性化により、他の多くの細胞種の活性に影響するサイトカインを遊離する。 ヘルパーT細胞によって放出されるサイトカインのシグナルは、マクロファージの微生物殺滅作用と細胞傷害性T細胞や抗体を産生するB細胞の活動を強化する[3]。 加えて、ヘルパーT細胞の活性化は、CD40リガンド(別名CD154英語版)のようなT細胞表面に発現している分子の調整量の上昇を引き起こす。 この分子は抗体産生B細胞を活性化するのに必要な代表的な付加的刺激シグナルとして働く[48]

γδT細胞

γδT細胞はCD4+およびCD8+(αβ)T細胞とは対照的に別のT細胞受容体(TCR)をもち、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、およびNK細胞と同じ性質を共有する。γδT細胞から応答を得る条件は完全には解明されていない。他のなじみのない変異型TCRをもったT細胞サブセット、例えばCD1d-拘束性ナチュラルキラーT細胞などと同様に、自然免疫と適応免疫の間を広くまたいでいる[49]。一方でγδT細胞は、この細胞はTCR遺伝子を再編成して受容体の多様性を生じること、そして記憶表現型も発達させることができることから、適応免疫の要素である。他方様々なサブセットは、制限されたTCRあるいはNK受容体が受容体のパターン認識に用いられることがあるため、自然免疫系の一部分をなす。例えばきわめて多数のヒトVγ9/Vδ2 T細胞は微生物によって産生される共通の分子に対して数時間以内に応答する。さらに高度に制限されたVδ1+ T細胞は上皮細胞が受けるストレスに応答するようだ[50]

B細胞と抗体

抗体は2本の重鎖と2本の軽鎖から構成される。ユニークな可変部(可変領域)は対応する抗原を認識することが出来る。また、マクロファージは定常部に対する受容体を持っている[42]

1個のB細胞は表面上の抗体が特定の外来抗原に結合すると病原体を認識することになる[51]。この抗原/抗体複合体はB細胞に取り込まれタンパク質分解プロセスによってペプチドにされる。B細胞は次にこれら抗原ペプチドを特異的なMHCクラスII分子上に提示する。MHCと抗原の複合体はその抗原と特異的に結合するヘルパーT細胞を引き寄せ、そのヘルパーT細胞がB細胞を活性化するリンフォカインを放出する[52]。B細胞が活性化されて増殖のための分裂を始めるとその子孫(形質細胞)はこの抗原を認識する特異的な抗体コピーを何百万分子も生産、分泌する。

これらの抗体は血管の血漿やリンパ管に入って循環する。抗体の実体は免疫グロブリンとよばれるタンパク質で、抗原を発現している細菌などの病原体に特異的に結合し、補体系の活性化あるいは食細胞による取り込みと破壊が起きるようマークを付ける。これをオプソニン化という。抗体は侵入病原体に対し、細菌の毒素に結合したりウイルスや細菌が細胞に感染する際に利用する受容体に妨害作用を及ぼして、直接中和することもできる[53]

代替的適応免疫系

適応免疫の古典的な分子(例えば抗体T細胞受容体)は顎をもった脊椎動物のみに存在するにも拘わらず、ヤツメウナギメクラウナギのような原始的な無顎脊椎動物には独特なリンパ球由来の分子が発見されている。これらの動物には変異性リンパ球受容体(VLRs)と呼ばれる大きな一群の分子が備わり、顎をもった脊椎動物の抗原受容体のようにごくわずかな数(1つか2つ)の遺伝子のみから産生される。これらの分子は抗体と同じやり方で病原体抗原に抗体と同じ程度の特異性をもって結合すると信じられている[54]

免疫記憶

B細胞T細胞が活性化されて複製を始めるとそれらの子孫細胞の中には長期間体内に残存する記憶細胞になるものがあるだろう。動物の生涯にわたってこれらの記憶細胞は各々の特異的な病原体に出合った記憶を保持し、病原体が再び感知されると強力な応答を発動できる。これは、個体の生涯にわたって病原体による感染に適応して起こり、免疫系が将来の接触に対して準備するものであるから、「適応」であると言える。免疫記憶は短期間の受動的な記憶の形か長期間にわたる能動的な記憶の形かのいずれかで成立しうる。

受動的な記憶

受動免疫 passive immunity は、抗体細胞傷害性T細胞(CTL)といった既存の作用物質を投与して起こす免疫反応。

新生児はあらかじめ微生物に接触することはなく特に感染を受けやすい。そこで母親からいくつかの階層からなる受動防御が提供される。妊娠中抗体の特別の型IgG胎盤を経由して直接母親から胎児に輸送される。したがってヒト新生児は誕生時すでに高レベルの母親と同じ抗原特異性の幅を持った抗体をもっている[55]母乳も抗体をもっており赤ん坊のに移動し、新生児が自分自身の抗体を合成できるまで、細菌感染を防御する[56]。これは受動免疫であって、胎児は実際記憶細胞あるいは抗体を作らずそれらを母親から借用するだけであるから、この受動免疫は普通短期間のもので、数日から数カ月しか続かない。医学では、防御的な受動免疫が、ある個人から他人へ抗体リッチな血清を人工的に移すことでも行いうる[57]

能動的な記憶と免疫処置

免疫応答が病原体感染(あるいはワクチン初回投与)から始まり能動的な免疫記憶を形成して維持される時間的経過。

能動免疫 active immunity は、ワクチンなどの抗原を投与して誘導する免疫反応。

長期的な能動的な記憶は感染後B細胞およびT細胞の活性化によって獲得される。能動免疫は人工的にもワクチン接種によって成立させ得る。ワクチン接種(あるいは免疫処置と呼ばれる)の原理は病原体の抗原を導入し免疫系を刺激してその特定の病原体に対する特異的免疫を発達させその病原体由来の病気を起こさないようにすることである[3]。この意図的な免疫応答の誘導は免疫系が自然に作り出している特異性を利用していること、そうして免疫を誘導できるということによって成功している。ヒト集団の主要な死因の一つに感染症があることからワクチン処置は人類が発展させた免疫系の操作の中で最も効果のあるものである[58][26]

大部分のウイルスワクチンは生きた弱毒化したウイルスをもとにしているが多くの細菌ワクチンは有害作用のない物質の成分など細菌の構成要素の非細胞成分をもとにしている[3]。多くの非細胞成分由来の抗原によるワクチンはあまり適応免疫応答を起こさないため、大部分の細菌ワクチンは、自然免疫の抗原提示細胞を活性化し免疫原性を最大にするアジュバントを添加して提供される[59]




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