光市母子殺害事件 光市母子殺害事件の概要

光市母子殺害事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/11/26 20:45 UTC 版)

光市母子殺害事件
場所 山口県光市
標的 妻・乳児
日付 1999年平成11年)4月14日
概要 主婦(当時23歳)が殺害屍姦され、その娘(生後11カ月)も殺害された上、財布を窃盗した。
攻撃人数 1人
死亡者 2人
損害 死亡
犯人 元少年(事件当時18歳1か月)
動機 強姦
謝罪 なし
賠償 死刑
最高裁判所判例
事件名 光市母子殺害事件
事件番号 平成14年(あ)730
2012年(平成24年)2月18日
判例集 集刑 第289号383頁
裁判要旨
  • 本件上告を棄却する。
  • 犯行当時、少年だったことは死刑回避の決定的事情とは言えない。
  • 少年法が死刑適用の可否について定めるのは18歳未満か以上かという形式的基準であり、精神的成熟度の要件を求めていない。
第三小法廷
裁判長 金築誠志
陪席裁判官 宮川光治
意見
多数意見 3人賛成
意見 あり
反対意見 宮川光治
参照法条
強姦致死罪殺人罪窃盗罪
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裁判中はその残虐な事件内容と、元少年を死刑にすべきでないと主張する弁護団の突飛とも言える弁護内容(後述)がマスコミで大きく取り上げられ、日本国内で論議を呼んだ。また被害者の夫が「犯罪被害者の権利確立」を訴えたことにより、この問題が大きく取りあげられるきっかけの一つとなった。

事件の概要

以下、検察側主張、及びこれまでの判決が認定してきた内容に基づく事件の概要である。

1999年平成11年)4月14日の午後2時半頃、少年A(当時18歳。以下、加害者、または時期により被告人若しくは死刑囚とする)が山口県光市の社宅アパートに強姦目的で押し入った。排水検査を装って居間に侵入した加害者は、女性を引き倒し馬乗りになって強姦しようとしたが、女性の激しい抵抗を受けたため、女性を殺害した上で強姦の目的を遂げようと決意。頸部を圧迫して窒息死させた。

その後加害者は女性を屍姦し、傍らで泣きやまない娘(生後11カ月)を殺意をもって床に叩きつけるなどした上、首に紐を巻きつけて窒息死させた。そして女性の遺体を押入れに、娘の遺体を天袋にそれぞれ放置し、居間にあった財布を盗んで逃走した。

加害者は盗んだ金品を使ってゲームセンターで遊んだり友達の家に寄るなどしていたが、事件から4日後の1999年(平成11年)4月18日逮捕され、同年6月に公訴が提起された。

弁護側主張

上告審より被告人の主任弁護人となった安田好弘は、接見内容をもとに被告人に母子を殺害する故意が無かったことを主張した。しかし、最高裁判所判決では「被告人は罪の深刻さと向き合って内省を深めていると認めるのは困難」として採用されなかった。

広島高等裁判所での差し戻し審では、「母恋しさ、寂しさからくる抱き付き行為が発展した傷害致死事件。凶悪性は強くない」として死刑の回避を求める方針を明らかにしている。

以下は、差し戻し審の弁護団によって引き出された被告人の主張の一部である。

  • 強姦目的ではなく、優しくしてもらいたいという甘えの気持ちで抱きついた
  • (乳児を殺そうとしたのではなく)泣き止ますために首に蝶々結びしただけ
  • 乳児を押し入れに入れたのは(漫画の登場人物である)ドラえもんに助けてもらおうと思ったから
  • 死後に姦淫をしたのは小説『魔界転生』に復活の儀式と書いてあったから[1]

被告人は第一審当初はこのような主張はしておらず、弁護人による被告人質問で主張が変わった理由を「生き返らせようとしたと話せば、馬鹿にされると思ったから」「ドラえもんの話は捜査段階でもしたのだが、馬鹿にされた。だから、(第一審の)裁判官の前では話をしかねた」と説明している[2]

被告人の書いた手紙

一審で無期懲役判決が出た後、被告人は知人に以下のような手紙を出している。検察はこれを被告人に反省が見られない証拠として裁判所に提出した。

  • 終始笑うは悪なのが今の世だ。ヤクザはツラで逃げ、馬鹿(ジャンキー)は精神病で逃げ、私は環境のせいにして逃げるのだよ、アケチ君
  • 無期はほぼキマリ、7年そこそこに地上に芽を出す
  • 犬がある日かわいい犬と出会った。・・・そのまま「やっちゃった」・・・これは罪でしょうか

被害者側の動き

被害女性の夫であり、被害女児の父である本村洋(もとむら・ひろし、1976年昭和51年〉3月19日 - )は犯罪被害者遺族として、日本では「犯罪被害者の権利が何一つ守られていないことを痛感し」、同様に妻を殺害された元日本弁護士連合会副会長岡村勲らと共に犯罪被害者の会(現、全国犯罪被害者の会)を設立し、幹事に就任した。さらに犯罪被害者等基本法の成立に尽力した。

また、裁判の経過中、死刑判決を望む旨、強く表明し続けてきた。たとえば2001年(平成13年)12月26日に行われた意見陳述の際に被告人に対し「被告人が犯した罪は万死に値します。いかなる裁判が下されようとも、このことだけは忘れないで欲しい」と述べている。また一審判決後には「司法に絶望した、加害者を社会に早く出してもらいたい、そうすれば私が殺す」と発言していたが、二審判決に際しては「裁判官も、私たち遺族の気持ちを分かった上で判決を出された。判決には不満だが裁判官には不満はない」と発言し、犯罪被害者の権利確立のために、執筆、講演を通じて活動をしている。


  1. ^ 実際にはそのような儀式は小説『魔界転生』には登場しない。
  2. ^ MSN産経ニュース、2007年9月18日配信の記事より
  3. ^ 本来、光市は山口地方裁判所徳山支部(当時、現・周南支部)(徳山市、現周南市)の管轄であるが、本事件のように少年事件は取り扱っていないため、山口地方裁判所本庁(山口市)が代行した。
  4. ^ a b c d e f g 光市母子殺害事件の経過”. 47NEWS. 共同通信 (2012年2月20日). 2014年1月21日閲覧。
  5. ^ 平成14年03月14日 広島高等裁判所
  6. ^ 平成18年06月20日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻し 広島高等裁判所
  7. ^ 平成20年04月22日 広島高等裁判所 破棄自判 山口地方裁判所
  8. ^ 弁護側、死刑回避求める 光市母子殺害事件、上告審結審”. MSN産経ニュース. 産経新聞 (2012年1月23日). 2012年1月23日閲覧。
  9. ^ 光市母子殺害事件、元少年の死刑確定へ 最高裁が上告棄却”. MSN産経ニュース. 産経新聞 (2012年2月20日). 2012年2月20日閲覧。
  10. ^ 光市母子殺害、死刑確定=元少年の訂正申し立て棄却-最高裁”. 時事ドットコム. 時事通信社 (2012年3月16日). 2012年3月16日閲覧。
  11. ^ “光母子殺害事件で再審請求”. 中国新聞. (2012年10月29日). オリジナル2012年11月2日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20121102103553/http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201210290115.html 2014年9月30日閲覧。 
  12. ^ 2006年6月29日新聞、白鴎大学法科大学院教授土本武司のコラム。
  13. ^ NHKニュース2012年2月20日
  14. ^ Sponichi Annex2012年2月20日
  15. ^ NHKニュース2012年2月20日
  16. ^ 日経電子版2012年2月20日
  17. ^ NHKニュース2012年2月20日
  18. ^ NHKニュース2012年2月20日
  19. ^ 元少年の被告は実名か匿名か 報道各社で分れた判断”. iza. 産経新聞 (2012年2月21日). 2012年3月17日閲覧。
  20. ^ 光市母子殺害の元少年、死刑確定へ 最高裁、上告棄却”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞 (2012年2月20日). 2012年2月20日閲覧。[リンク切れ]
  21. ^ 光母子殺害で死刑確定へ、元少年の上告棄却”. YOMIURI ONLINE. 読売新聞 (2012年2月20日). 2012年2月21日閲覧。
  22. ^ 最高裁が上告棄却 元少年の死刑確定へ”. msn産経ニュース. 産経新聞 (2012年2月20日). 2012年2月21日閲覧。
  23. ^ 光市母子殺害:元少年の死刑確定へ…当時「18歳30日」”. 毎日jp. 毎日新聞 (2012年2月20日). 2012年2月21日閲覧。[リンク切れ]
  24. ^ 光市母子殺害の元少年、死刑確定へ [リンク切れ],中日新聞,2012年2月20日
  25. ^ 東京新聞2012年2月21日朝刊1面
  26. ^ 少年の実名報道を受けての会長声明(日本弁護士連合会プレスリリース)
  27. ^ 東京弁護士会、光母子殺害の弁護士は懲戒せず - MSN産経ニュース
  28. ^ [1]
  29. ^ 橋下弁護士と週刊朝日編集長が「懲戒請求」で激論: スーパーモーニング :J-CAST テレビウォッチ
  30. ^ 江川の指摘した判決は最高裁第三小法廷平成19年4月24日判決と思われる。
  31. ^ Egawa Shoko Journal: 刑事弁護を考える〜光市母子殺害事件をめぐって
  32. ^ a b 「元少年の弁護士処分せず」、中国新聞 朝刊、2007年11月28日。
  33. ^ 「山口・光事件弁護団への懲戒請求が8095件/日弁連」、読売新聞 東京朝刊、2008年2月21日、34頁。
  34. ^ a b c 「広島弁護士会、元少年側弁護団を懲戒処分せず」、産経新聞 大阪朝刊、2008年4月3日、29頁。
  35. ^ 「大阪弁護士会が光市・母子殺害被告弁護士の懲戒請求で所属弁護士を処分せず」、スポーツ報知、2007年12月27日、15頁。
  36. ^ a b 光母子実名本、死刑囚の出版差し止め請求は棄却”. YOMIURI ONLINE. 読売新聞 (2012年5月23日). 2012年5月23日閲覧。[リンク切れ]
  37. ^ 光市事件死刑囚が敗訴 実名本に「違法なし」確定”. MSN産経ニュース. 産経新聞 (2014年9月29日). 2014年9月29日閲覧。
  38. ^ 「報道の現状 議論多岐に――マスコミ倫理懇談会」『朝日新聞』2008年9月30日付朝刊、第13版、第37面。
  39. ^ 放送倫理検証委員会 委員会決定 第04号 光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見」 放送倫理・番組向上機構、2008年4月15日。
  40. ^ 「ひと――ドキュメンタリーで賞を次々受けたテレビプロデューサー 阿武野勝彦さん(49)」『朝日新聞』2008年10月30日付朝刊、第13版、第2面。
  41. ^ 日本民間放送連盟賞/2008年(平成20年)入選・事績」 日本民間放送連盟、2009年12月20日閲覧。


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