元首 元首の概要

元首

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 07:32 UTC 版)

元首(げんしゅ、国家元首ラテン語: dux civitatisフランス語: chef d’État英語Head of state[1])は、国家を外に向って一般的に代表する資格をもつ機関[2]のこと。

歴史的には、三権を統合する国家の統治者としての絶対君主(皇帝、国王など)を指したが、三権分立が広がるに従い国家元首の権限は(行政権を除き)空洞化し、三権を統合する国家を憲法に従って統治する立憲君主(イギリスなど)、三権を統合する国家の儀礼的な長である名誉職型大統領(ドイツ、イタリアなど)、三権を統合する国家の長と行政府の長を兼任するアメリカ型大統領、三権を統合する国家の長と行政府の一部の長を兼任する半大統領制の大統領(フランスなど)などがある。三権分立の国家では、行政府の長ではない国家元首の権限は儀礼的なものが多く、行政府に対し首相の任命、立法府に対し議会の招集、法律の公布、司法府に対し最高裁判所長官の任命などの権限が残るのみである。


注釈

  1. ^ 委任契約の命令的性格については議論があり、全権委任と解する立場も可能である(独裁政)。現代では憲法に基づく命令委任と解することが多い。国会議員についてはむしろ純粋代表と解釈し、命令的委任と解することを否定するものが見られる。第五共和制フランス憲法27条1項「命令的委任はすべて無効である」ドイツ連邦共和国基本法38条「……議員は、国民全体の代表者であって、委任及び指示に拘束されず、かつ自己の良心にのみ従う」[4]
  2. ^ リヒテンシュタイン家は、ハプスブルク家の重臣として家産を蓄積した。つまり、公国とは無関係なので、「国民の財産を取り返す」というようなことができない。また、第二次世界大戦時、大権によって選挙を停止し、ナチズムの台頭を阻止した。そのため、今でも大権の行使が正当化されている。このような経緯で、象徴・儀礼的存在にとどまらず、強大な政治的権限を有している。そのため、ヨーロッパ最後の絶対君主制と言われる。
  3. ^ 米国では教書、韓国では議案提出権の形で立法素案が提示される。大統領は拒否権を持つため教書、議案に極端に反する立法はすべて拒否される。
  4. ^ いわゆる「社会主義国」の場合も一人の人物に権力が集中していることがあるが、その場合、その人物が国家元首だからではなく一党独裁制を敷く共産主義政党の党首だからという場合が大半であり、国家元首自体には権限が殆どない場合が多い。例えば、中華人民共和国では、国家主席の地位にある人物が、外交・内政での強大な権力を行使している場合があるが、これはその人物が中国共産党の最高職である総書記をも兼任しているためである。国家主席は党中央委員会の決定を追認しているに過ぎず、実質的な権限を有さない。主席と総書記が別の人物である場合も当然にあり得る。
  5. ^ 書記長と国家主席が兼任になった例としてホー・チ・ミン(1956年11月1日 ‐ 1960年9月10日)、チュオン・チン(1986年7月10日 ‐ 1986年12月18日)、グエン・フー・チョン(2018年10月23日 ‐ 2021年4月5日)がある。
  6. ^ 六四天安門事件の際に戒厳令を発令した軍事委員会副主席楊尚昆
  7. ^ ソビエト連邦の最高会議幹部会議長、東ドイツ国家評議会議長ハンガリー人民共和国国民議会幹部会議長、国家主席廃止時における中華人民共和国の全国人民代表大会常務委員会委員長やベトナムの国家評議会議長など。
  8. ^ このうち、国家の代表(事実上の国家元首)としての肩書きは「朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長」となっていた。2000年6月の南北首脳会談や2002年9月の日朝首脳会談ではこの肩書きを使用している。
  9. ^ フィデル・カストロ2008年2月24日に人民権力全国会議で国家評議会議長を退任したが、閣僚評議会議長の辞表や退任表明などは一切行っていない。これは憲法の規定により国家評議会議長が閣僚評議会議長を兼ねることになっているため、国家評議会議長を退任すれば閣僚評議会議長も自動的に退任となるからである。
  10. ^ 2013年に退位したベネディクト16世のように、本人の意思で退位することは出来る。

出典

  1. ^ 国家元首の英訳”. eow.alc.co.jp. アルク. 2023年12月19日閲覧。
  2. ^ 第2版, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. “元首(げんしゅ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. DIGITALIO. 2023年12月19日閲覧。
  3. ^ 「元首は元来、統治権を総攬し、行政権の首長であると同時に、対外的代表権をも君主を、国家有機体説を背景に、国家の頭になぞらえるところに成立したといわれるが、やがて国家有機体説とは無関係に、行政権の首長として対外的代表権をもつ存在を元首と称するようになり、さらにはもっぱら対外的代表権に着眼して元首がいわれるようになった」佐藤幸治『憲法(第三版)』青林書院1995年、P24。
  4. ^ [1]
  5. ^ 字通, 精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,改訂新版 世界大百科事典,日本大百科全書(ニッポニカ),百科事典マイペディア,普及版. “元首(げんしゅ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年12月30日閲覧。 “ある国においてどの地位にある者が元首の資格をもつかは通常憲法で定められている。”
  6. ^ リヒテンシュタイン公国”. 外務省. 2023年12月5日閲覧。
  7. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ). “リヒテンシュタイン(国)(りひてんしゅたいん)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年12月5日閲覧。
  8. ^ 連邦予算の8割を拠出、連邦最高評議会もアブダビとドバイの同意なしに決定をくだすことはできない仕組みになっている
  9. ^ 各国憲法集(11) スウェーデン憲法【第2版】”. 国立国会図書館. p. 4. 2023年12月2日閲覧。 “1974 年の統治法の特色としては、国王の権限が大幅に制限されたことを挙げることができる。王制をとる他の北欧諸国では、憲法の条文上、国王に対し、国政に関する権限をある程度付与している。例えば、大臣の任命、法律の裁可、条約の締結などである。しかし、それらの国では、実際においてはその権限の行使を形式的なものとして運用している。一方、スウェーデン憲法の場合には、こうした形式的権限も廃し、条文上においても国王の権限は限定的なものとなっている。国王に首相の任命権はなく、首相選出手続において重要な役割を担うのは国会議長である(統治法第 6 章第 4 条及び第 6 条)。また、国王は、法律を裁可する権限も持たない。国王は、元首としての地位を有するが(統治法第 1 章第 5 条)、条約の締結権は政府に帰属する(統治法第 10 章第 1 条)。統治法上、国王に認められた権限は、首相から国の状況について報告を受けること、外交諮問委員会(後述第Ⅱ章第 2 節(1)参照)又は統治法が規定する特定の場合(第 10 章第 12 条、第 5 章第 3 条及び第 6 章第 6 条)に大臣会議(konselj)を主宰することである。”
  10. ^ 『象徴君主制憲法の現代的展開--象徴的国家元首論の観点から見た日本とスウェーデンとの比較考察』下條芳明 憲法研究(38)2006 pp,29 - 58
  11. ^ 『イギリスにおける象徴君主制の成立』浜林正夫 社会思想史研究1991 北樹出版pp,p6 - 17
  12. ^ デジタル大辞泉. “半大統領制(ハンダイトウリョウセイ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年12月5日閲覧。
  13. ^ デジタル大辞泉. “半大統領制(ハンダイトウリョウセイ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年11月30日閲覧。
  14. ^ 外務省 各国元首一覧
  15. ^ Inc, NetAdvance Inc NetAdvance. “満州国|日本大百科全書・世界大百科事典|ジャパンナレッジ”. JapanKnowledge. 2023年11月7日閲覧。
  16. ^ 増田, 知子、Masuda, Tomoko「日本と「満州国」の立憲制 - 一九三四~一九三七年」『名古屋大学法政論集』2007年4月25日、207頁。 
  17. ^ 1988年(昭和63年)10月11日の参議院内閣委員会における内閣法制局第一部長答弁
  18. ^ 1990年(平成2年)5月14日の参議院予算委員会における内閣法制局長官答弁。もっとも、「天皇は国の象徴であり、さらにはごく一部では…外交関係において国を代表する面」もあるという限定された意味における「元首」であるとする。「第118回国会参議院予算委員会会議録第6号” (PDF). 2022年7月17日閲覧。」4頁。
  19. ^ 2001年6月6日第151回国会参議院憲法調査会阪田雅裕内閣法制局第一部長答弁
  20. ^ a b 天皇陛下がバッハ会長と競技場に入場、行進する選手団に拍手送る : 東京オリンピック2020速報 : オリンピック・パラリンピック”. 読売新聞オンライン (2021年7月23日). 2021年7月23日閲覧。
  21. ^ 昭和29年6月30日総理府令第40号
  22. ^ 自衛隊法施行規則第39条 隊員となった者は、次の宣誓文を記載した宣誓書署名押印して服務の宣誓を行わなければならない。学生、予備自衛官等又は非常勤の隊員が隊員となったときも同様とする。宣誓 私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法 及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。
  23. ^ 宣誓内容の詳細については「職員の服務の宣誓に関する政令」で規定されている。
  24. ^ 宣誓内容の詳細については各自治体条例により制定されている。
  25. ^ オリンピック憲章第5章56






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