元良勇次郎
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功績の概要
それまで日本において、心理学の知識は英語など外国語で書かれた書物だけであった。つまり心理学という学問は日本に入ってきてはいたが、実際の具体的な手法(実験法、調査法、観察法)は誰も体験しておらず、日本では心理学は存在しなかったと言える。 勇次郎はクリスチャンの人脈を活かし海外に学び、そこで心理学の実験手法などを体得し、心理学を日本に持ち帰り、それを根付かせた[11]。
元良の提供した心理学の背景
元良が提供した心理学は、(ある意味当然のことであるが)当時の一流の学問を反映したものである。その学問的背景とも言えるものを簡潔にまとめると、例えば、
、と言うこともできる[11]。
具体的な研究内容、テーマの例
元良による心理学上の研究を、初期・中期・後期と大分して説明する。
初期の段階でもすでに様々なテーマについて実験を行っているが、ひとつ挙げると、「注意」について研究したことが挙げられる。このテーマは一貫して持ち続け、1907年には、児童の注意力とその訓練についての実験へとつながった。そして、学習がうまくできない児童について、能力が無いというわけではなく、「集中」のしかたを知らないからなのだ、という説明および訓練方法を示し[注釈 1]、当時の教育関係者から評価され、それなりに問題解決に貢献することになった[11]。
中期・後期のそれを挙げると次のようになる[11]。
- 円覚寺の塔頭である帰源院で禅を体験した(1894年)。[注釈 2]
- 横読み、縦読みの利害の実験(1895年)
- 白内障者の視覚に関する実験(1896年)
- 神経伝達の実験(1903年)
- 片仮名・平仮名の読み書きの難易の実験(1904年)
- 児童の注意力とその訓練についての実験(1907年)
- 心元 (簡単に言うと精神化したエネルギーのこと) (1909年)
- 顕心儀 (人の自我と、外界との関係の理解を助けるモデルの一種)(1909年)
著書
- 『教育新論』中近堂、1884年。全国書誌番号:40038033。
- 『心理学』金港堂、1890年。全国書誌番号:40004778。(日本において、『心理学』という書名のものとしては最初のものである)
- 『児童学綱要』(高島平三郎らと共著)洛陽堂、1890年。
- 『万国史綱』(家永豊吉と共著)三省堂、1892年-1893年。全国書誌番号:40011654。
- 『倫理学』 小野英之助・共著、1893年。全国書誌番号:40003747。
- 『心理学十回講義』 冨山房、1897年。全国書誌番号:40004811。
- 『教育と宗教との関係』 光融館、1900年。全国書誌番号:40038073。
- 『倫理講話 中等教育』 右文館、1900年。全国書誌番号:40003810。
- 『倫理及宗教 現今将来』 勉強堂書店、1900年。全国書誌番号:40003736。
- 『元良氏倫理書 中等教育』 成美堂、1902年。全国書誌番号:440003623。
- 『心理学綱要』 弘道館、1907年。全国書誌番号:40004807。
- 『論文集』 弘道館、1909年。全国書誌番号:40000232。
- 『英独仏和哲学字彙』(井上哲次郎、中島力造と共編)丸善、1912年。全国書誌番号:40000144。
- 『教育病理及治療学』(榊保三郎らと共著)榊保三郎、1912年。全国書誌番号:40041019。
- ^ 現在の水準からすると、シンプルな説明ではある。が、成果はもたらした。
- ^ これは、自身を用いての実験と言え、これもまた、心理学におけるひとつの考え方・方法論である)。 なお同じ日に夏目漱石も参禅しており、当時の参拝簿には元良と「夏目金之助」の名が隣り合わせに書かれている。(放送大学「心理学史 '05」 2009.10.20放送。担当講師、佐藤達哉 他)漱石と参禅が同時だったことは、(元良勇次郎 1910)にて自身でも述べている。
- ^ a b c d e f 佐藤達哉 2001.
- ^ 朝日日本歴史人物事典の解説「生年:安政5.11.1(1858.12.5)」 元良勇次郎とは - コトバンク
- ^ 『日本心理学者事典』クレス出版、2003年。ISBN 4-87733-171-9。
- ^ a b c 高砂美樹 2001, p. 82.
- ^ 哲学館事件『東洋大学創立五十年史』東洋大学、1937年
- ^ 『官報』第2545号「叙任及辞令」1891年12月22日。
- ^ 『官報』第4081号「叙任及辞令」1897年2月12日。
- ^ 『官報』第5451号「叙任及辞令」1901年9月2日。
- ^ 『官報』第6995号「叙任及辞令」1906年10月22日。
- ^ 『官報』第8544号「叙任及辞令」1911年12月12日。
- ^ a b c d 放送大学「心理学史 '05」 2009.10.20放送。担当講師、佐藤達哉 他。(印刷教材(西川泰夫・高砂美樹・編著 2005))。
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