元良勇次郎 功績の概要

元良勇次郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/08 23:18 UTC 版)

功績の概要

それまで日本において、心理学の知識は英語など外国語で書かれた書物だけであった。つまり心理学という学問は日本に入ってきてはいたが、実際の具体的な手法(実験法、調査法、観察法)は誰も体験しておらず、日本では心理学は存在しなかったと言える。 勇次郎はクリスチャンの人脈を活かし海外に学び、そこで心理学の実験手法などを体得し、心理学を日本に持ち帰り、それを根付かせた[11]

元良の提供した心理学の背景

元良が提供した心理学は、(ある意味当然のことであるが)当時の一流の学問を反映したものである。その学問的背景とも言えるものを簡潔にまとめると、例えば、

  1. フェヒナー精神物理学
  2. オストワルドのエネルギー一元論
  3. ヴント実験心理学
  4. デューイジェームズプラグマティズム
  5. ホールのジェネティック心理学

、と言うこともできる[11]

具体的な研究内容、テーマの例

元良による心理学上の研究を、初期・中期・後期と大分して説明する。

初期の段階でもすでに様々なテーマについて実験を行っているが、ひとつ挙げると、「注意」について研究したことが挙げられる。このテーマは一貫して持ち続け、1907年には、児童の注意力とその訓練についての実験へとつながった。そして、学習がうまくできない児童について、能力が無いというわけではなく、「集中」のしかたを知らないからなのだ、という説明および訓練方法を示し[注釈 1]、当時の教育関係者から評価され、それなりに問題解決に貢献することになった[11]

中期・後期のそれを挙げると次のようになる[11]

  • 円覚寺塔頭である帰源院でを体験した(1894年)。[注釈 2]
  • 横読み、縦読みの利害の実験(1895年)
  • 白内障者の視覚に関する実験(1896年)
  • 神経伝達の実験(1903年)
  • 片仮名・平仮名の読み書きの難易の実験(1904年)
  • 児童の注意力とその訓練についての実験(1907年)
  • 心元 (簡単に言うと精神化したエネルギーのこと) (1909年)
  • 顕心儀 (人の自我と、外界との関係の理解を助けるモデルの一種)(1909年)

著書


  1. ^ 現在の水準からすると、シンプルな説明ではある。が、成果はもたらした。
  2. ^ これは、自身を用いての実験と言え、これもまた、心理学におけるひとつの考え方・方法論である)。 なお同じ日に夏目漱石も参禅しており、当時の参拝簿には元良と「夏目金之助」の名が隣り合わせに書かれている。(放送大学「心理学史 '05」 2009.10.20放送。担当講師、佐藤達哉 他)漱石と参禅が同時だったことは、(元良勇次郎 1910)にて自身でも述べている。
  1. ^ a b c d e f 佐藤達哉 2001.
  2. ^ 朝日日本歴史人物事典の解説「生年:安政5.11.1(1858.12.5)」 元良勇次郎とは - コトバンク
  3. ^ 『日本心理学者事典』クレス出版、2003年。ISBN 4-87733-171-9 
  4. ^ a b c 高砂美樹 2001, p. 82.
  5. ^ 哲学館事件『東洋大学創立五十年史』東洋大学、1937年
  6. ^ 『官報』第2545号「叙任及辞令」1891年12月22日。
  7. ^ 『官報』第4081号「叙任及辞令」1897年2月12日。
  8. ^ 『官報』第5451号「叙任及辞令」1901年9月2日。
  9. ^ 『官報』第6995号「叙任及辞令」1906年10月22日。
  10. ^ 『官報』第8544号「叙任及辞令」1911年12月12日。
  11. ^ a b c d 放送大学「心理学史 '05」 2009.10.20放送。担当講師、佐藤達哉 他。(印刷教材(西川泰夫・高砂美樹・編著 2005))。


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