偐紫田舎源氏 偐紫田舎源氏の概要

偐紫田舎源氏

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/06 07:17 UTC 版)

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『偐紫田舎源氏』第12編より。各編とも上下冊の表紙を並べると1枚の絵となる

あらすじ

紫式部の『源氏物語』を下敷きにして、時代を平安時代から室町時代へ移している。語り手は、江戸日本橋・式部小路の女・お藤で、鉄砲洲の人丸神社に参詣し、石屋の二階に仮住まいして筆を取った、という設定で語りはじめる。

将軍足利義政の妾腹の子・光氏が、将軍位を狙う山名宗全を抑えるため、光源氏的な好色遍歴を装いながら、宗全が盗み隠していた足利氏の重宝類を次第に取り戻す一方、須磨明石に流寓して西国の山名勢を牽制し、宗全一味をはかりごとで滅ぼした後、京都に戻り、将軍後見役となって栄華を極める。

経緯

柳亭種彦は、合巻の『正本製』(しょうほんじたて)シリーズなどですでに流行作家になっていたが、年長の曲亭馬琴も『金毘羅船利生纜』『傾城水滸伝』などの長編合巻で人気を集めていた。それぞれ『西遊記』『水滸伝』の翻案である。馬琴が中国の小説に詳しいなら、種彦は日本の古典に通じている。『源氏物語』の翻案で対抗しよう、という動機であったろうと言われている。

『偐紫』の『紫』は、紫式部にも高級染料のにも通じる。

版元は通油町(現在の中央区日本橋大伝馬町)の、3代目仙鶴堂鶴屋喜右衛門。半裁した半紙の右左に1ページずつを刷り、2つに折って10枚重ねて綴じて、1冊20ページ、上下2冊を封筒に入れて1編とした。B6に近い中本であった。

著者と版元に、『源氏』の全54帖を翻案・出版するつもりは当初はなかったが、大好評を得てその気になり、毎年数編が刊行された。しかし水野忠邦天保の改革が始まると、「将軍家の大奥の内情を書いた」「光氏は徳川家斉がモデル」などの噂から本書の絶版と種彦の断筆が命ぜられ、38編までで終わった。遺された稿本から39編・40編が、1928年(昭和3年)版の『田舎源氏』中に翻刻された。

各列の右は、その編がピントを当てている『源氏物語』の帖の名である。

  • 初編:文政12年(1829年) - 桐壺
  • 2/3編:天保元年(1830年) - 桐壺・帚木/帚木・空蝉
  • 4/5編:天保2年(1831年) - 空蝉・夕顔/夕顔
  • 6/7編:天保3年(1832年) - 若紫/若紫・末摘花
  • 8/9/10編:天保4年(1833年) - 若紫・末摘花/若紫・紅葉賀/末摘花・紅葉賀
  • 11/12/13編:天保5年(1834年) - 紅葉賀・花宴/花宴・葵/葵
  • 14/15/16/17編:天保6年(1835年) - 葵・賢木/賢木・花散里/賢木・花散里・須磨/須磨
  • 18/19/20/21編:天保7年(1836年) - 須磨/須磨・明石/明石/明石
  • 22/23/24編:天保8年(1837年) - 明石・蓬生/蓬生・澪標/蓬生・澪標・関屋
  • 25/26/27編:天保9年(1838年) - 澪標・賢木・絵合/絵合・松風/松風・槿
  • 28/29/30/31編:天保10年(1839年) - 松風・薄雲/薄雲・朝顔/朝顔・少女/少女・玉鬘
  • 32/33/34編:天保11年(1840年) - 少女・玉鬘/少女・初音/玉鬘・初音・胡蝶
  • 35/36/37編:天保12年(1841年) - 胡蝶・蛍・常夏/常夏・篝火・野分/野分・行幸
  • 38編:天保13年(1842年) - 藤袴
  • 39/40編:昭和3年(1928年) - 真木柱(黒崎書店、日本名著全集江戸文芸之部21 偐紫田舎源氏下)

1882年(明治15年)に、木版本があらためて出たが、全編が刊行されたかは明らかでない。洋式製本による出版は、その頃から最近まで、繰り返されている。

『田舎源氏』を模倣した『其由縁鄙俤』(そのゆかりひなのおもかげ)が、種彦門弟の笠亭仙果(1 - 6編)と柳下亭種員(7 - 23編)により、弘化4年(1847年)から 元治元年(1864年)にわたって書き継がれた。

『田舎源氏』を脚色した歌舞伎には、天保9年(1838年)3月市村座上演の『内裡模様源氏染』(ごしょもようげんじのえどぞめ)、嘉永4年(1851年)9月市村座上演の『源氏模様娘雛形』(げんじもようふりそでひながた)、慶応3年(1867年)10月守田座上演の『忠暮時雨袖旧寺』があり、『源氏模様娘雛形』の一部が『田舎源氏露東雲』の名で、今日に残っている。

なお、似た題名の『似世紫浪華源氏』(1837年)は、種彦作の世をはばかる艶本である。

本文






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