位相空間 位相空間の導出

位相空間

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/10 08:48 UTC 版)

位相空間の導出

すでにある位相空間を加工して、別の位相空間を作る方法を述べる。

位相空間を加工する上で基本となるのは、「逆像位相」と「像位相」の概念、おそびそれらの拡張概念である「始位相」と「終位相」である。

逆像位相と像位相、始位相と終位相は互いに双対の関係にあり、写像の向きを逆にすることでもう片方の概念を定式化できる。なお始位相と終位相はそれぞれ圏論における始リフト英語版[訳語疑問点]終リフト英語版[訳語疑問点]の例のになっている。

始位相、逆像位相、部分位相、直積位相

まず始位相の概念を以下のように定義する:

定義 (始位相) ―  Xを集合とし、を位相空間の族とし、写像

の族を考える。

このとき、全てのを連続にする最弱の位相をX始位相英語版という。

始位相の特殊な場合として、以下のものが重要である。以下でXは集合である。

名称 定義
逆像位相 位相空間と写像Xに定める始位相の事
部分位相 位相空間の部分集合Xに対し、包含写像による逆像位相。X に部分位相を入れたものを部分空間という。
直積位相(チコノフ位相とも) を位相空間の族とするとき、射影の族によってYに定義される始位相の事。直積Yに直積位相を入れた位相空間を直積空間という。

これらはより具体的に書き表す事が可能である:

定理 ― 上の定義と同様に記号を定義するとき、

  • 逆像位相の開集合系はに一致する。
  • 部分位相の開集合系は、に一致する。
  • 直積位相は, 有限個のλを除いてを開基とする。

上述の定理の直積位相の箇所に関して、Λが有限集合のときは、「有限個のλを除いて…」という条件がいらなくなるので簡単であるが、Λが無限集合のときは注意が必要である。例えばの(可算)無限個のコピーとし、の無限個のコピーとするとき、直積

は直積位相に関して

の開集合ではない。実際、前述の「有限個を除いて…」という条件を満たしておらず、条件をみたすものの和集合としても書けないからである。これに対し直積空間にはをも開集合とする位相も定義可能である:

定義 ― 位相空間の族に対し、

を開基とするの位相を箱型積位相英語版という[18]

箱型積位相は直積位相より強い(弱くない)位相である。

終位相、像位相、商位相、直和位相

まず始位相と双対的に終位相を定義する:

定義 (終位相) ―  Xを集合とし、を位相空間の族とし、写像

の族を考える。

このとき、全てのを連続にする最強の位相をX終位相英語版という。

終位相の特殊な場合として下記のものを定義できる。これらは逆像位相、部分位相、始位相、直積位相と双対的に定義したものである。以下でXは集合である:

名称 定義
像位相 位相空間と写像Xに定める終位相の事。
商位相 を位相空間とし、「」をY上の同値関係とし、[x]でこの同値関係におけるxYの同値類を表すとき、商写像が商集合 に定義する像位相の事。
直和位相 を位相空間の族とするとき、 から集合族 直和への包含写像の族 によって直和 に定義される終位相の事。

これらはより具体的に書き表す事が可能である:

定理 ― 上の定義と同様に記号を定義するとき、

  • 像位相の開集合系はに一致する。
  • 商位相の開集合系は、に一致する。
  • 直和位相の開集合系は、に一致する。

注釈

  1. ^ a b ただしここで言う「収束性」は点列の収束性ではなくより一般的な有向点族の収束性である。
  2. ^ a b c pノルムLpノルム、に関連するノルムとして、pノルム Lノルム があり、これらはp→∞としたものに一致する。同様にソボレフノルムp→∞としたノルム も定義可能である。
  3. ^ 距離から定まる位相はハウスドルフ性正規性を満たすが、密着位相はハウスドルフ性を満たさない。また補有限位相や補可算位相においては空でない任意の開集合の閉包は全体集合であるため、任意x, yXの任意の閉近傍は全体集合になってしまう為正規性を満たさない。
  4. ^ ザリスキー位相はハウスドルフ性を満たさないから。
  5. ^ より厳密に言うと、有向集合(Λ,≤)と、ΛからXへの写像x : ΛXの組の事をΛを添字集合とする有向点族と呼ぶ

出典

  1. ^ 平場誠示. “解析学III 関数解析”. 東京理科大学. p. 6. 2021年2月5日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k #内田 pp.68-73.
  3. ^ a b #内田 p.71.
  4. ^ a b 位相空間#Kelly p.43.
  5. ^ a b c d #内田 pp.73-74.
  6. ^ a b c d e #内田 pp.79-83.
  7. ^ a b c #Kelly pp.65-66.
  8. ^ a b #Schechter 7.6
  9. ^ #Kelly p.70.
  10. ^ a b c net”. nLab. 2021年2月8日閲覧。
  11. ^ a b #Schechter 7.14
  12. ^ #Kelly p.67.
  13. ^ a b c Kelly p66
  14. ^ a b #Kelly p.69.
  15. ^ a b #Schechter 15.10.節 pp.413-414.
  16. ^ #Kelly pp.73-75.
  17. ^ a b c Kelly p86
  18. ^ #内田 p.95






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