位牌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/09 19:44 UTC 版)
中国の儒教に起源を持ち、周の武王の時代には「木主」と呼ばれたが、後漢時代には位板・神主(しんしゅ。死者の官位・姓名を書く霊牌。)とも呼ばれたため、「位」牌と呼ばれる。またその起源は、霊の依り代(よりしろ)という古来の習俗と仏教の卒塔婆が習合した物ともされる。日本には禅宗と共に鎌倉時代に伝来し、江戸時代に一般化した。沖縄にも位牌はあり、また、土地の言葉で祖先を意味するトートーメーも位牌である。
位牌の数え方の単位には、「柱」を用いるが上記「木主」との関連は明らかではない。なお神道の霊璽(死者の諡(おくりな)を記す)も同じ起源であるが「木主」「神主」の名を残し、柱の形をしている。
位牌の機能
位牌は機能面で多くの分類方法がある[1]。位牌文化は地域により、長子相続や血縁相続における操作機能を中心とする位牌文化(華人・南島型)と日本本土のように葬送儀礼や追善儀礼の用具としての機能を中心とする位牌文化(本土型)に分けられる[1]。
対象による分類
- 順修牌(じゅんしゅうはい)
- 死後に法名や戒名を受けてその名を刻んだ位牌である[1]。単に位牌といえば、通常「順修牌」を指す。
- 逆修牌(ぎゃくしゅうはい)
用途による分類
大別して野位牌(のいはい)、本位牌、寺位牌などがある。
- 野位牌(のいはい)
- 死者の枕元に置かれ、葬列に持参し、埋葬後に墓(埋葬地)に供えられる位牌[3][4]。通常は白木で納骨までや四十九日までなど使用する期間が限定されており、追善供養具というよりも葬具としての性格が強い[1]。
- 内位牌
- 日本では仮位牌として野位牌と内位牌の二つの仮位牌(白木位牌)が作られることが多く、内位牌は家で祀った後に四十九日、一周忌、三回忌などの機会に恒久的な位牌に切りかえることが多い[3][4]。内位牌は、中陰壇(四十九日の法要、納骨式まで遺骨を祀る臨時の屋内祭壇)を解いた後、焚き上げられる。このように内位牌は別の位牌に作り替えられることが多い[3]。しかし、対馬には二つの白木位牌を作り、一つは寺位牌(後述)、もう一つを内位牌として白木の位牌のまま仏壇に納め、7年目に薄い板状の位牌に名を書き込んで位牌箱に収める地域がある[5]。また、能登や奄美などの一部地域のように白木の位牌を長く祀る地域もある[5]。
- 本位牌
- 寺位牌
中国の位牌
位牌は故人の戒名や法号を記した板で中国の儒教にルーツを持っている[7]。『史記』周本紀及び伯夷列伝によると周の武王は殷を討つ前に亡父・西伯昌に「文王」と諡し、それを記した木主(ぼくしゅ・もくしゅ)を戦車に載せたと伝えられている。儒教では後漢のころから位板(いばん)・木主・神主(しんしゅ)・虞主(ぐしゅ)等の名称で40cm程度の栗の板に生前の位官や姓名を心霊に託す風習があった[7]。
- ^ a b c d e f g h i j 須藤寛人「仏壇・位牌信仰の史的考察」『駒澤大学佛教学部論集』第29巻、駒澤大学仏教学部、1998年10月、329-345頁、ISSN 0389990X、NAID 110007019405。
- ^ a b c 仏教質問箱, p. 124.
- ^ a b c d 谷川章雄「位牌・墓標と葬送」第109回歴博フォーラム死者と生者の共同性(p.9) 国立歴史民俗博物館
- ^ a b c d 上野和男 1985, p. 175-176.
- ^ a b c 上野和男 1985, p. 229.
- ^ a b 仏教質問箱, p. 123.
- ^ a b 仏教質問箱, p. 122.
- ^ 出典…『真宗小事典』p.197
- 1 位牌とは
- 2 位牌の概要
- 3 日本の位牌
- 4 台湾・沖縄の位牌
位牌と同じ種類の言葉
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