会社
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/28 08:53 UTC 版)
フランス
フランス法においては、民法典により、組合(société;「会社」との訳もある。)は、「出資から生じることのある利益を分配し、又は節約の利益を得るために、共同事業に財産又は労務を出資することを契約により合意する2名又は数名の者によって、設立される。」として、民事組合(société civile;「民事会社」との訳も)と匿名組合(société en participation)が規定されている。さらに、商法(Code de commerce)により、組合のうち、形態または目的に照らして商事性を有するものは会社(société commerciale;「商事会社」との訳もある。)とされる(なお、会社法(la loi no 66-537 du 24 juillet 1966 sur les sociétés commerciales;「商事会社法」との訳もある。)施行前は原則として商行為を目的とするか否かにより商事性の有無が区別された。)。会社(商事会社)は、登記によって法人格を取得する。また、会社(商事会社)は、商人として扱われることとなる。
その形態によって、目的にかかわらず当然に会社(商事会社)とされるものは以下のとおり。
- 株式制会社(仏: société par actions:定訳はない。):これらの会社形態では法人課税が適用される。株式会社に相当。
- 株式会社(仏: société anonyme;SA)
- 簡易株式制会社(仏: société par actions simplifiée;SAS:定訳はない):株主総会と代表者は必置の機関であるが、取締役会等の機関について定款自治が認められている(設置義務がない)。1994年の法改正で新たに創設された会社形態。合弁会社や子会社としての利用を想定し、当初は設立時社員を2社以上の会社としていたが、1999年の法改正で社員資格を自然人に拡大し、一人簡易株式制会社(仏: SASU, SAS unipersonnelle)が許容されるようになった。
- 株式合資会社(仏: société en commandite par actions;SCA):株主 (commanditaires) と、株主から選任される無限責任社員 (commandités) とで構成される。無限責任社員は株主でもある。無限責任社員は商人資格(商行為を為し得る地位)を有する。無限責任社員の指名と株主の同意を得て選任される取締役 (gérant) が会社の業務執行を行い、取締役は株主で構成される監査役会 (conseil de surveillance) によって監督される。無限責任社員が本人自身を取締役に指名することもある。
- 有限会社(仏: société à responsabilité limitée;SARL):1925年にドイツ法における有限会社(GmbH)に倣ってフランスに導入された。1985年の法改正により一人有限会社(仏: SARL unipersonnelle、実務上は有限責任一人企業 EURL, Entreprise unipersonnelle à responsabilité limitée と呼ばれる)が許容されている。法人課税が適用される。
- (単純)合資会社(仏: société en commandite simple;SCS):フランスの税法では原則として無限責任社員に限り構成員課税である。法人課税を選択することもできる。
- 合名会社(仏: société en nom collectif;SNC):フランスの税法では原則として構成員課税である。法人課税を選択することもできる。
以上のほか、民事組合(民事会社)(仏: société civile;SC)や匿名組合(仏: société en participation;SEP)、事実上の会社(société de fait)については目的によって会社(商事会社)とされ得るが、いずれも法人格を付与されることはない。
注釈
- ^ 有限会社法は会社法の施行(2006年5月1日)に伴って廃止され、従来の有限会社(旧有限会社)は、株式会社として存続することとされた(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条1項)。この株式会社は、商号中に「有限会社」という文字を用いることとされ、特例有限会社と呼ばれる(同法3条)。また「株式会社」へと商号変更することにより通常の株式会社に移行することもできる(同法45条)。
- ^ 法学上、社員とは社団の構成員を指し、日常用語にいう社員が従業員を指すのとは異なる。神田 (2009: 6-7)。
- ^ 通常の法人課税では、企業の利益に対し所得課税がされた上で、株主が企業から受け取る配当についても、株主個人の所 得課税が行われる(二重課税)のに対し、パススルー課税 (pass through taxation) とは、企業に損益が生じた時点でこれを株主に帰属したものとみなし、企業に対する課税は行わず、株主に対する所得課税のみを行うものである。Hamilton (2000: 28-30)。
出典
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