上田吉二郎 上田吉二郎の概要

上田吉二郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/02/27 18:54 UTC 版)

うえだ きちじろう
上田 吉二郎
本名 上田 貞夫
うえだ さだお
生年月日 1904年3月30日
没年月日 1972年11月3日(満68歳没)
出生地 日本の旗 日本兵庫県神戸市
民族 日本人
ジャンル 俳優
活動期間 1924年 - 1972年
活動内容 映画テレビドラマ
主な作品
羅生門

来歴

旧制第一神戸中学校(現兵庫県立神戸高等学校)卒。1917年(大正6年)、澤田正二郎を座長とする新国劇創設の一員となる。

1925年(大正14年)、新国劇の関わる『国定忠次』(東亜等持院)で映画デビュー。以後、映画やTVで、主に時代劇に出演し、名脇役として活躍。また「上吉プロダクション」を立てて短編映画を撮った。

黒澤明監督・三船敏郎主演の『羅生門』や『七人の侍』などにも出演。大げさなジェスチャー・独特の声色・言い回しでユーモラスな悪役としても人気を博した。またアニメスカイキッドブラック魔王』に登場する大臣の声を演じた。

1971年(昭和46年)に喉頭癌のため声帯を切除し、独特の声を失った。再起を目指していた矢先の翌1972年(昭和47年)に喉頭癌のため68歳で死去した。

人物・エピソード

娘は林成年の夫人である。稲垣浩によると、「個性的な、というよりもアクのつよい演技で特異な存在だったから、いろいろな映画に出演して、いろいろな役を演じて評判が良く」、「リアルなものからアチャラカまで、時代劇でも現代劇でも注文に応じてなんでもこいという芸達者だった」。亡くなる数年前ごろから唸るような喋りかたが人気を呼び、テレビの影響もあってその一色の演技に固まってしまい、喉頭癌を患って手術を受け、声が出なくなった。

亡くなる前にはポケットに発声器を忍ばせ、喉にマイクを当てて「コレカラハ、絵ヲカイテ、クラシマス」と話したといい、ポケットから聞こえる機械音声は哀れだったが、、稲垣は「それはいかにも上吉らしく、ほほえましかった」とこれを偲んでいる。

小さな機械が好きで、万年筆型の懐中電灯や、ピストル型ライター、電池式の手持ち扇風機を鞄から取り出して得意然としていた。8ミリカメラが一般的でないころに「上吉プロダクション」の作品を作っていた。

稲垣が上田を認めたのは、『荒木又右衛門 天下の伊賀越』(昭和9年、太秦発声)での「桜井甚佐衛門」という大役を演じたのを見たからだといい、「戦国武士をしのばせるような風格と演技と声とエロキューションに魅せられた」という稲垣は、将来日本映画に役立つ俳優として日活に上田を推薦した。ところが入社した上田は評判がひどく悪かった。その理由というのは、当時ピカ一の映画スタアだった大河内傳次郎を「大河内君」呼ばわりしたからだった。

というのも、上田は新国劇創立の一員で、座長の澤田正二郎から可愛がられていて、大正14年の『国定忠治』では「清水の頑鉄」という大役を19歳で演じたというのが自慢だった。このとき共演した大河内はまだ「室町二郎」との役名の駆け出しであり、先輩の上田としては思わず時と場所を忘れて、日活で「大河内君」と呼んでしまったという大失態だったのである。

稲垣は上田について、時代をとらえる敏感なところもあったが、一面にこうした間抜けなところもあったといい、稲垣の『宮本武蔵』(昭和15年)で演じた「秩父の熊五郎」が評判となると、「あの演技を考案するため岡崎の動物園に日参して熊の動作を研究した」などといたるところで自慢して歩いていたという。稲垣は「彼には奥ゆかしさとか、ひかえ目というものがない。そこがいいところでもあったし、また、人から嫌われるところでもあったのだ」とし、「だが彼の演技研究の熱心だったことは認めなければならない。それを彼自身が口に出して売り込むから安っぽくなるのだが、その安っぽさも実は彼らしいところでもあるわけである」と評している。黒澤明の『羅生門』がグランプリをとると、「グランプリ受賞の羅生門出演、上田吉二郎」と印刷した葉書半分ほどの大きな名刺をつくって話題となった。このように上田は「赤ちょうちん的な脇役」だった。

セリフ覚えがよいほうでなかったので、「貧乏」というセリフには一文銭の絵に「×」を描くなど、台本に漫画を描いて暗記していた。絵が好きで、いつも画帖と鉛筆を手放さなかった。暇があるとスケッチし、唾を指に着けて彩色した。あるとき黒澤監督が冗談で「セザンヌの画のようだ」と言うと、すっかり真に受けて百枚ほどのスケッチを黒澤の家に持ち込んできた。さすがに黒澤監督も困り果てて、「大した野郎だ」と十枚ほど見てシャッポを脱いだといい、これ以来画伯づいた上田は、ついにはアンデパンダン展に大作を出品したという。娘(林成年の妻)の若いころの写真を模写した「舞妓種子の像」は高値がついたが、稲垣があとで聞くと、買主はどうやら上田本人だったという。

昭和11年ごろ、高堂国典が結成した「日本映画人禁酒聯盟」の副会長になったが、会は三カ月を待たず解散となった。このころ、夫人は子宮ガンで長く患っていた。上田はまだ四十前でもあり、夫人は「辛抱できないでしょうから、内緒で浮気をしてもいいわ」と公認した。ところがうっかり外泊したその晩に夫人は息を引き取ってしまった。骨上げをした後、幼い娘から「お父ちゃんのバカ」と泣かれた上田は「お母ちゃんは死んだけど、お父ちゃんの腹の中にちゃんとおさめてやる」と言って、遺骨をボリボリ齧りながら酒を飲んで夜を明かしたという[1]

出演作品

映画

★印は黒澤明監督作品。

  • 国定忠治(1925年1月15日、東亜等持院) - 清水巌鉄
  • 月形半平太(1925年5月15日、聯合映画芸術家協会等持院)
  • 荒木又右衛門 天下の伊賀越(1934年6月28日、太秦発声) - 桜井甚佐衛門
  • 児来也小僧 二部作(1937年3月-4月、日活
  • 南国太平記(1937年8月11日、J・o)
  • ロッパの大久保彦左衛門(1939年1月11日、東宝) - 石川五右衛門
  • まぼろし城 三部作(1940年10月-11月、日活)
  • 宮本武蔵 三部作(1940年、日活) - 秩父の熊五郎
  • 織田信長(1940年11月14日、日活)
  • 天兵童子 四部作(1941年5月-8月、日活)
  • 独眼龍政宗(1942年7月2日、東映
  • マライの虎(1943年6月24日、大日本映画) - バテバウ刑事
  • 羅生門(1950年8月26日、大映
  • 愛と憎しみの彼方へ(1951年1月11日、東宝) - 真志保
  • 旗本退屈男 唐人街の鬼(1951年9月7日、東映)
  • 雨月物語(1953年3月26日、大映) - 衣服屋の主人
  • 七人の侍(1954年4月26日、東宝) - 斥候A
  • 潮騒(1954年10月20日、東宝)
  • 夫婦善哉(1955年9月13日、東宝)
  • 蜘蛛巣城(1957年1月15日、東宝)
  • 柳生武芸帳(1957年4月14日、東宝) - 望月庄左衛門
  • どん底(1957年9月17日、東宝) - 島造
  • 無法松の一生(1958年4月22日、東宝)
  • 隠し砦の三悪人(1958年12月28日、東宝) - 人買い
  • 裸の大将 (1958年10月28日、東宝) - 中佐
  • 日本誕生(1959年10月25日、東宝) - 久米八腹(クメのヤハラ)
  • 大いなる驀進(1960年11月8日、東映) - 政党幹部
  • 大阪城物語(1961年1月3日、東宝)
  • 七人の敵あり(1961年3月18日、東宝) - 岩野浩三
  • 女は二度生れる(1961年7月28日、大映) - 猪谷先生
  • ヒマラヤ無宿 心臓破りの野郎ども(1961年8月13日、東映) - 宣伝部長
  • 続悪名(1961年12月17日、大映) - 沖縄の源八
  • 黒の試走車(1962年7月1日、大映) - 的場捨松
  • 長脇差忠臣蔵(1962年8月12日、大映) - 二俣の藤兵衛
  • クレージー作戦 先手必勝(1963年3月24日、東宝)
  • 黒の報告書(1963年1月13日、大映) - 柿本源太郎
  • 三匹の侍(1964年5月13日、松竹) - 石垣
  • 黒の超特急(1964年10月31日、大映) - 旅館の主人
  • 座頭市関所破り(1964年12月30日、大映) - 島村の甚兵衛
  • 孤独の賭け(1965年3月10日、東映) - 赤松新平
  • 青春とはなんだ(1965年7月14日、日活) - 山吉老人(駅長)
  • 網走番外地 大雪原の対決(1966年12月30日、東映) - 権田(ニセ鬼寅)
  • 大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス(1967年3月15日、大映) - 金丸辰衛門(村長)
  • 悪名一代(1967年6月17日、大映) - 沖縄の源八
  • 徳川女刑罰史(1968年9月28日、東映)
  • コント55号 世紀の大弱点(1968年11月2日、東宝)
  • 愛のきずな(1969年2月15日、東宝) - 政治家
  • ドリフターズですよ! 全員突撃(1969年4月27日、東宝)
  • 日本侠客伝 花と龍(1969年5月31日、東映)
  • 広域暴力団 流血の縄張(1969年7月26日、日活)
  • ミヨちゃんのためなら全員集合!(1969年12月31日、松竹
  • 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969年10月31日、東映) - 医者
  • ハレンチ学園(1970年5月2日、日活) - 校長
  • 新網走番外地 大森林の決斗(1970年8月14日、東映)
  • 俺の空だぜ!若大将(1970年8月14日、東宝)

テレビドラマ

  • お気に召すまま(1962年、NETテレビ)第13話「零」
  • 近鉄金曜劇場 / 若き日の摂津守(1963年4月26日、TBS
  • テレビ指定席 / 孤独の空(1963年11月9日、NHK
  • 東芝日曜劇場 / カルテロ・カルロス日本へ飛ぶ(1963年11月24日、TBS)
  • 三匹の侍CX
    • 第1シリーズ 第9話「群狼乱舞」(1963年)
    • 第1シリーズ 第20話「真贋破邪」(1964年)
    • 第2シリーズ 第10話「愁刃有情」(1964年)
    • 第5シリーズ 第14話「空っ風野郎」(1968年)
  • 特別機動捜査隊 第154・155話「東京0米地帯(前・後編)」(1964年10月7日・14日、NET
  • 日産スター劇場 / 取り立て屋珍聞録(1965年1月16日、NTV
  • 大河ドラマ / 源義経(1966年、NHK) - 後藤新兵衛基清
  • 泣いてたまるか 第10話「さらば飛行服」(1966年8月14日、TBS)
  • 快獣ブースカ 第10話「あの広場を守れ! 」(1967年1月11日、NTV) - 凸凹不動産社長
  • 第10話「すっ飛び東海道」(1967年12月6日、TBS)
  • ザ・ガードマン(TBS)
    • 第177話「女猫宝石泥棒」(1968年8月23日)
    • 第236話「喜劇・いらっしゃいませ集団万引様」(1969年10月10日)
    • 第239話「金貸しばあさん殺人事件」(1969年10月31日)
    • 第264話「宝石と女の戦争」(1970年4月24日、TBS)
  • バンパイヤ 第2話、第3話、第5話、第6話、第9話、第10話(1968年10月 - 12月、CX) - 大西剛三
  • 進め!青春 第2話「ゴーゴー・レッツゴー」(1968年10月27日、NTV) - 親分
  • キイハンター(TBS)
    • 第33話「殺人行進曲」(1968年11月16日)
    • 第91話「サギと殺しの集団旅行」(1969年12月27日) - ニセ石油成金・花園
    • 第145話「ギャング対Gメン 自動車レース」(1971年1月9日) - マッカラ共和国・副大統領
  • ジャンケン ケンちゃん(1969年4月3日 - 1970年2月26日、TBS) - ケンちゃんの祖父
  • フラワーアクション009ノ1 第3話「裏切り寝返り大合戦」(1969年10月21日、CX) - アラジン国大統領
  • プレイガール12ch
    • 第31話「東京おんな番外地」(1969年11月3日)
    • 第62話「老人と女のポルカ」(1970年6月8日)
    • 第78話「暗黒街の美少年」(1970年9月28日)
  • 水戸黄門 第1部 第15話「わしは天下の風呂番だ -今治-」(1969年11月10日、TBS) - 虎之助
  • ゴールドアイ 第21話「大金塊密輸団」(1970年6月26日、NTV)
  • ハレンチ学園 第25話「ハレンチ新入生の巻」(1971年3月18日、12ch) - 理事長

  1. ^ ここまで『日本映画の若き日々』(稲垣浩、毎日新聞社刊)より


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