三大始祖 アメリカンダミー

三大始祖

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/17 05:21 UTC 版)

アメリカンダミー

三大始祖以外の馬が現在も種牡馬として活動しているとする見解も一部にはある。日本の血統研究家の中島国治は、かつてのアメリカにおいてはクォーターホースをはじめとするサラブレッド以外の品種の馬の仔が、血統を偽ってサラブレッドとして登録されていたと主張し、三大始祖以外、それもサラブレッド以外の品種の父系子孫が現在も種牡馬として活動しているという説を唱えている[注釈 1]。そのような馬のことを中島はアメリカンダミーと呼び[注釈 2]、近親交配を解消するための有効な手段だと主張した。

なお、競走用クォーターホースはハーミットとヒムヤーの子孫が大半であり、残りも新興のファラリス系がほとんどである。基本的にエクリプス系に属していると考えてよい。

Y染色体ハプロタイプ

父系に付随して遺伝するY染色体の調査も行われている。これによると三大始祖は何れもHT2と呼ばれるハプロタイプを持っていたと考えられ、Y染色体で父系を区別することはできない。しかし、幸運なことにダーレーアラビアンから8代目のWhalebone以降はY染色体のYE3領域に突然変異(1塩基の欠失)が発生しておりHT3に分類され追跡が可能である。なお、牝系では系図の誤りが見つかっている一方、父系では非サラブレッドまで広げてDefence(1824)、Goldschaum(1891)の子孫などかなりマイナーな父系を含む116頭について調べられたが、HT2とHT3の出現は血統書に忠実で矛盾は見つからなかった。家畜馬全体で支配的なHT1と呼ばれるハプロタイプの混入もなかった。

HT2はサラブレッドの3.5%を占める。馬が家畜化されてからかなり経過してHT1から派生したタイプで、西アジアに多くアラブ種の50%がこれである。西ヨーロッパ在来馬にはほとんど存在せず、三大始祖の東方馬起源説を裏付ける。サラブレッドのヘロド系、マッチェム系、セントサイモン系がHT2に所属する他、ダーレーアラビアン系から早期に派生し、中間種に残るヤングマースク系、フライングチルダーズ系もHT2となっている。

HT3はHT2の派生タイプであり、サラブレッド及びその影響を受けた馬種に限られる。サラブレッドではおおよそ96.5%を占める。サラブレッドWhaleboneの父系子孫がこのタイプであって、PotooooooooまたはWaxyWhalebone何れかの世代でY染色体のYE3領域に突然変異が発生し、区別できるようになったと考えられている。なお、この領域に意味のある遺伝子は存在していない。また、家畜馬のY染色体は元々極端に多様性が低く、タンパク質コード領域は、X染色体組換えを起こしやすい擬似常染色体領域(PAR)を除いてほぼ全ての家畜馬で一致している。

その他

  • インドには三大始祖とオルコックアラビアンを記念したダーレーアラビアンステークス、ゴドルフィンバルブステークス、バイアリータークステークス、オルコックアラビアンステークス(すべてインド国内GIII)という競走がある。
  • 馬主法人であるゴドルフィンダーレー・ジャパン・レーシングの名も三大始祖がもとになっている。
  • メダルゲームの『STARHORSE』シリーズには、三大始祖が登場し架空の競馬場で競走するレース(ゲーム上で行われる架空のレース)がある。ただし三大始祖で現実に競走で使われたのはバイアリータークだけである。
  • ゲームアプリ『ウマ娘 プリティーダービー』で登場した「三女神」が三大始祖をモチーフとしている。なお、ゲームリリース当初には「三女神」のモチーフ元にあたるサラブレッドが明確にされていなかったが、上記の『STARHORSE』シリーズとのコラボシナリオにて三女神がキャラクターとして登場したのに伴い正式に設定された。

注釈

  1. ^ 類似の噂話には、アングロアラブ種における血統偽装(「テンプラ」と呼ばれる)がある。
  2. ^ 「アメリカンダミー」という呼び方は中島自身の造語である可能性が高い。彼は自著『血とコンプレックス』で「いわゆるアメリカンダミー」と(あたかも既存の用語であるかのように)言及しているが、中島以前の競馬関連書籍でこの言葉を用いた例は見受けられない。

出典

  1. ^ 楠瀬良 2010, p. 218.
  2. ^ 楠瀬良 2010, p. 219.





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