レコード 記録特性

レコード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/17 08:48 UTC 版)

記録特性

(録音特性などについては、レコードプレーヤー#フォノイコライザーも参照)

音質の向上や盤面の有効利用(長い演奏時間の収録)を目的として、レコードの溝の振幅は(音の大きさが同じならば)周波数による変化があまりなくなるように録音されている[注 1]カートリッジとして一般的な電磁型[注 2]の出力電圧は針先の動く速さに比例するので、このまま増幅すると高音の勝った音になってしまう[注 3]。そこで、録音時の周波数特性(多くはRIAA型)とは逆の特性をもったフォノイコライザを通し、平坦な特性に戻す。

イコライザはアンプやミキサに内蔵されるのが通常だが、廉価な機器に使われた圧電型[注 4]のカートリッジでは、出力は針先の変位つまり移動距離にほぼ比例するので、特別な回路を組むことなく、高音と低音のバランスが取れた音が得られた[注 5]

運用上における他メディアとの音質の差

前述の通り記録・再生の特性が超高周波を含むか否かには疑問があるが、さらにカッティングの信号系統には(ON/OFF可能な)イコライザー、リミッターが含まれており、同じ音源のレコードとCDにさらなる音質の差を生じさせる原因となる。特に古い時代の音源がCD化(デジタルリマスタリング)される際、マスターの録音状態や劣化といった理由でノイズリダクションなどが施され、ここでも当時のレコードとの音質の差が生じている場合もある。

マーケティング上の理由で新メディアの周波数特性の変更や時代に即したマスタリングなどの加工がおこなわれる場合もあり、アナログレコードとの音質の差が表れる。尚美学園大学の論文の『デジタルオーディオにおける音量レベルの新しい表現方法と、『君は天然色』を題材にした年代ごとの音量レベルの変遷』ではCDとアナログレコードとの音圧に変更があると研究している[19]

アナログレコードはプチプチと言う雑音などに味があると言われているが、記録特性の問題ではなく静電気や埃の処理などが原因である。そのため、適切に再生されればその様な音は混入しない。


注釈

  1. ^ 「音楽では低音が大音量のため高音が雑音に埋もれないよう高いほうを強めている」といった説明がなされることもあるが、一般に低音楽器が大振幅であるのは事実としても、本質的な理由ではない。
  2. ^ 針先の位置変化でコイルを貫く磁界を変化させ、ファラデーの電磁誘導の法則により出力を得る方式。この法則では起電力(電圧)は磁界の変化の割合に比例するので、針先が早く動くほど出力電圧は大きい。
  3. ^ 高い音では振動するものが低い音より速く動いている。レコード溝の振幅が同一であっても、針先の振動は音が高いほど激しい。つまり針先の速度は音が高くなるほど大きくなる。
  4. ^ 物質に加えられた力を電圧に変換する圧電効果を利用している。得られる電圧は力の大きさに依存し、その周波数つまり変化の速さとは基本的に無関係である。
  5. ^ 変換に使用する物質(圧電素子)に加わる力は、針先の変位にほぼ比例する構造となっている。ゆえに出力電圧は溝の振幅の変位に比例し、録音された音の大きさが同じなら、周波数とは殆んど無関係である。なお素子のインピーダンスが容量性で、内部抵抗は周波数と共に小さくなることも与っている。

出典

  1. ^ レコードはどうやって音を出しているの?原理を簡単に解説! |”. www.science-kido.com (2018年1月25日). 2021年11月4日閲覧。
  2. ^ a b c d e 日本放送協会. “アナログレコード “世界的な人気” 生産現場はフル稼働”. NHKニュース. 2021年11月4日閲覧。
  3. ^ DJやレコード通がよく使う言葉「ヴァイナル」ってどんな意味?”. snaccmedia.com (2018年11月10日). 2021年6月14日閲覧。
  4. ^ その儀式性と触れる喜びを侮るなかれ。ヴァイナルはかくしてデジタル時代にも生き続ける”. wired.jp (2019年5月11日). 2021年6月14日閲覧。
  5. ^ 出品10万枚 音楽の宝探し 金沢駅で「秋の音盤祭」:北陸中日新聞Web”. 中日新聞Web. 2021年11月4日閲覧。
  6. ^ 会えなくても「推し活」、ホテルの部屋でライブ映像鑑賞…ミラーボールで盛り上げ : 経済 : ニュース”. 読売新聞オンライン (2021年10月27日). 2021年11月4日閲覧。
  7. ^ a b ピエール・ジロトー『レコードのできるまで』白水社、1970年9月10日。 
  8. ^ “瓦版”に引っ掛けた洒落。アナログレコードの音楽を手軽にデジタル録音できるプレーヤー - 日経BP セカンドステージ
  9. ^ 2億1800万ドル -なぜ今? アナログレコード大ブームの理由
  10. ^ アナログレコード人気再燃 ソニーが29年ぶり自社生産 2タイトルを21日発売 産経新聞 2018年3月17日
  11. ^ アナログレコード国内生産が16年ぶり100万枚越え。音楽ソフト全体は微減 - CNN
  12. ^ レコードの売り上げ、CDを抜く1980年代以降で初めて - AV Watch
  13. ^ 100% Pure LP ユニバーサルミュージックジャパン
  14. ^ 超高音質LP 「100% PureLP」 12月発売! ユニバーサルミュージック公式リリース 2012年10月2日
  15. ^ A Short History of Twentieth-Century Technology
  16. ^ オーディオ50年史 4章1節
  17. ^ “100kHzまで対応のレコード「HD Vinyl」'19年発売へ。開発社CEOに聞くその可能性”. PHILE WEB. https://www.phileweb.com/news/audio/201804/17/19668.html 2018年4月17日閲覧。 
  18. ^ 菅野沖彦「私のアナログ感覚」季刊analog、17号・18号
  19. ^ CiNii [1]
  20. ^ その15「食べるレコード」、金沢蓄音器館、2010年6月。
  21. ^ 9月20日(木)おもしろ神戸ひょうご楽、三上公也の“G”報アサイチ!、2012年9月20日。
  22. ^ Rake、チョコで作ったレコード“ChocoRake”製作大成功、BARKS音楽ニュース、2012年2月15日 12:19:49。
  23. ^ 「8盤レコード」シリーズを2004年2月中旬に発売、バンダイ、2003年9月1日。
  24. ^ 木村源知「戦時期における金属代用品の多様性と変遷―画鋲に着目した事例研究―」『生活学論叢』Vol. 28, 1 - 15, 2016.3.31
  25. ^ 木村源知「戦時期における代用材料としてのレコード盤―画鋲の実物資料を用いた実証的研究―」『道具学論集』Vol. 24, 14 - 26, 2019.3.31






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