レイキ 概要

レイキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/18 09:39 UTC 版)

概要

手をかざす、または直接相手の体に手を置いて、生命エネルギー「レイキ」を流し込むという考え方・実践である[6]。西洋で広まり、さまざまな流派が派生するうちに臼井が始めた原型とは異なる変化を遂げてきた。中には「天使の竪琴」という楽器を体の上で演奏することもあるようである[6]。「レイキ」の効果としては、生命力の活性化を図り[5]、生体内のエネルギー・バランスを調整し[5]、自然治癒力を高めるとされる[2]。毎日、臼井による「五戒」(招福の秘法・万病の霊薬であるとされる)を唱え、自分の心身を磨いて、自分も周りの人も幸福を増進することを目的とするという。西洋のニューエイジでかなり人気があった[6]。一般に心身を治療する技法(ヒーリング)と認識されている[7]。創始者の臼井甕男が設立した「臼井靈氣療法学会」という名前からも、臼井が療法と認識していたことが分かるが、単に「療法」と見なすか、「療法以上のもの」「単なる療法ではない」とするかは意見が分かれる[7]。レイキを療法とするか、そうではないとするかには、法律との兼ね合いも関係している[7]

レイキは、アチューンメント(伝授)[9]という儀式でエネルギーのより効率的な回路となり、誰でも取得できるようになる、儀式を受ける側の知識やトレーニングは不要としており、これがレイキの特異な点となっている[7][6]。アチューンメントはセミナーの形式で行われることが多く、有料であり、レベルが上がるほど高額になる。自分自身に施すこともでき、アチューンメントの段階を踏めば遠隔治療も可能とされている[6]。レイキ関係者は、レイキはあらゆる療法と併用可能であり、マイナス面はないと主張している[7]

現在、「レイキ」として知られる民間療法は、臼井甕男(1865年 - 1926年)が始めた臼井霊気療法(臼井靈氣療法)(霊気)が海外で独自に発展・簡略化したものである[5]。「霊気」は臼井甕男によって約100年前に日本で誕生し、臼井の弟子・林忠次郎(1879年 - 1940年)から日系アメリカ人ハワヨ・タカタ(1900年 - 1980年)に伝えられ、タカタによってアメリカに伝わり、彼女とその弟子によって「レイキ」として普及した[7]。西洋では臼井が弟子の系統を林に、林がタカタに与えたと信じられているが、証拠はない[6]。海外に後継者を得たことで、世界中に急速に広まった[7]。(一方日本での霊術は、戦後GHQに禁止されたことで、おおよそ終焉している[3])。

ただし、起源に関しては、バーバラ・レイのように、レイキは古代から存在するという意見もあり、古代チベットあるいは古代インドを起源とする意見も少なくない(バーバラ・レイは文化人類学者であったとされるが、この論の根拠は不明である)[7]。この場合、臼井は再発見者または中興の祖とされる[7]

海外では、レイキは宇宙のエネルギーであり、臼井より以前、古代から存在する(古代の方が現在より優れており、徐々に廃れていった)という説が主流である[7]。(キリスト教圏には、神が直接作った最古の人間アダムが最も優れており、人類は時間経過と共に徐々に弱体化している、つまり、古いものほど純粋であり優れているという考え方がある)。古代より普遍的に存在するとする立場では、レイキは釈迦イエスが行った癒しと関連付けられる[7]

チベット仏教の影響を受け、チャクラの概念を導入してレイキを改造した者もいる[6]。とはいえ、ニューエイジや一部のレイキにみられる虹色と7つのチャクラを関連付ける考えは、伝統的なものではなく、近代神智学チャールズ・ウェブスター・レッドビータ(1854年 - 1934年)が20世紀に新しく考案したものである[10]。現在では、様々な流派が誕生しており、新しい技術や色々な考え方が加えられつつあり、さらに多様化してきている[11]。海外に普及したレイキは日本では「西洋レイキ」とも呼ばれる[11]

早稲田大学の平野直子は、レイキの歩みを見ていくと、「霊気療法」「REIKI」「レイキ」はそれぞれの地域・時期に特有のディテールや強調点を持っており、また各々のなかですら多様なバリエーションが存在する、と指摘している[12]。レイキはどの時代・地域においても、普及や維持の中心になるような組織を早くに失ってしまっており、中心的存在の不在が、多様性を生んだと考えられるという。その一方、レイキは常に、近代科学による心身観を問題化する言説のなかにあり、ある程度の同一性も維持されている[12]


  1. ^ 靈氣霊氣などとも表される。
  2. ^ a b c d e f g h 「レイキ 海外の情報」、「統合医療」情報発信サイト、厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 井村宏次 著 『新・霊術家の饗宴』 心交社、1996年
  4. ^ a b c d e f g 平野直子「1920-40年代「精神療法」のなかの臼井式霊気療法」」『宗教研究』86(4)、日本宗教学会、2013年3月30日、1093-1094頁。 
  5. ^ a b c d e レイキ 占い用語集 コトバンク
  6. ^ a b c d e f g h i David Miller 『現代世界宗教事典—現代の新宗教、セクト、代替スピリチュアリティ』クリストファー・パートリッジ英語版 編、井上順孝 監訳、井上順孝・井上まどか・冨澤かな・宮坂清 訳、悠書館、2009年、325-326頁。 
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl 寺石悦章「現代日本におけるレイキ : レイキはどのように紹介されているか」『四日市大学総合政策学部論集』7(1/2)、2008年3月、1-21頁。 
  8. ^ 「『ラーメン』『弁当』英語です。」 『日本経済新聞』2001年12月4日付夕刊
  9. ^ 直伝霊気(直傳霊気)では類似の儀式は霊授とよばれる。直伝とは「林忠次郎直伝 」の意味で、「臼井甕男直伝」ではない。
  10. ^ a b 加藤有希子 『カラーセラピーと高度消費社会の信仰ーーニューエイジ、スピリチュアル、自己啓発とは何か?』サンガ、2015年。ISBN 978-4865640281 
  11. ^ a b c d e 土居裕 『実践レイキヒーリング入門』講談社、2009年。 
  12. ^ a b 平野直子「「近代」というカテゴリにおける「普遍」と「個別」」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』第56巻、2010年、47-61頁。 
  13. ^ a b c d e f g h i フランク・アジャバ・ペッター 『This is 靈氣 その謎と真実を解き明かす、聖なるレイキの旅』高丸悦子・訳、BABジャパン、2014年。 
  14. ^ P.B.シェリーの作品に見られるメスメリズムについて、望月健一、富山短期大学紀要、47、69-91、2012-03-08
  15. ^ アントワーヌ・フェーヴル 『エゾテリスム思想 西洋隠秘学の系譜』田中義廣・訳、白水社〈文庫クセジュ〉、1995年。 
  16. ^ このようなレイキの説明は日本の文献には見られない。
  17. ^ a b c d e 山口忠夫 『直傳靈氣 レイキの真実と歩み』BABジャパン、2013年 (原著2003年)。 
  18. ^ a b c d e 土居裕 『癒しの現代霊気法』元就出版社、1999年。 
  19. ^ 靈氣とレイキ 極東ブログ
  20. ^ 五戒 コトバンク
  21. ^ 萬は万の旧字体。萬病は万病。
  22. ^ 「丈けは」は旧表記で、現代表記では「だけは」と書く。
  23. ^ 「はけめ」は、「はげめ」と読む。励め。歴史的仮名遣いでは、濁音であっても清音と同様に表記されており、濁音かどうかは読者が判断する方式であった。
  24. ^ a b 肇は、音読みで「チョウ」、訓読みで「はじ(め)・はじめる」。意味は、始める、開始する。肇祖(ちょうそ)とは、始祖、開祖。
  25. ^ Sara McGrath Reiki Handbook for Kids and All Ages Lulu.com 2013
  26. ^ a b c d 仁科まさき 『日本と霊気、そしてレイキ』デザインエッグ社、2014年。 
  27. ^ 上野正春 『神伝レイキの秘密 日本が世界に誇るハンドヒーリングの最高峰』たま出版、1997年。 
  28. ^ Frank Arjava Petter, Tadao Yamaguchi, Chujiro Hayashi (2003). The Hayashi Reiki Manual: Traditional Japanese Healing Techniques from the Founder of the Western Reiki System. Lotus 
  29. ^ 三井甲之 『手のひら療治』ヴォルテックス(復刻版 2003年)、1930年。 
  30. ^ 松居松翁「隻手萬病を治する療法」『サンデー毎日』、毎日新聞出版、1928年。 
  31. ^ 不明「隻手療法実験のため自ら患者となるの記」『サンデー毎日』、毎日新聞出版、1928年。 
  32. ^ 青木文紀 『ヒーリング・ザ・レイキ 実践できる癒しのテクニック』元就出版社、1999年。 
  33. ^ 富田魁二 『霊気と仁術 富田流手あて療法』BABジャパン出版局(復刻版 1999年)、1933年。 
  34. ^ 望月俊孝 『癒しの手』ゴマブックス、2007年。 
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  37. ^ So PS, Jiang Y, Qin Y (November 2013). “WITHDRAWN: Touch therapies for pain relief in adults”. Cochrane Database Syst Rev (11): CD006535. doi:10.1002/14651858.CD006535.pub3. PMID 24271739. https://doi.org/10.1002/14651858.CD006535.pub3. 
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  39. ^ McManus DE (2017-10). “Reiki Is Better Than Placebo and Has Broad Potential as a Complementary Health Therapy”. J Evid Based Complementary Altern Med 22 (4): 1051–1057. doi:10.1177/2156587217728644. PMC 5871310. PMID 28874060. https://doi.org/10.1177%2F2156587217728644. 
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  41. ^ Moran, Jose M; Puerto-Parejo, Luis M; Leal-Hernández, Olga; Lopez-Espuela, Fidel; Roncero-Martín, Raul; Fernandez, Antonio Sanchez; Pedrera-Zamorano, Juan D (August 2018). “Misinterpretation of the results from meta-analysis about the effects of reiki on pain”. Complement Ther Clin Pract 32: 115. doi:10.1016/j.ctcp.2018.06.005. PMID 30057036. 
  42. ^ Ferraz GAR, Rodrigues MRK, Lima SAM, Lima MAF, Maia GL, Pilan CA, Omodei MS, Molina AC, El Dib R, Rudge MVC (2017). “Is reiki or prayer effective in relieving pain during hospitalization for cesarean? A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials”. Sao Paulo Med J 135 (2): 123–132. doi:10.1590/1516-3180.2016.0267031116. PMID 28443949. 
  43. ^ Reiki Does Not Improve Fibromyalgia Symptoms in Clinical Trial NIH アメリカ国立衛生研究所
  44. ^ Assefi N, Bogart A, Goldberg J, et al. Reiki for the treatment of fibromyalgia: a randomized controlled trial. Journal of Alternative and Complementary Medicine. 2008; 14(9):1115–1122.
  45. ^ Semple D, Smyth R (2013). Chaper 1: Psychomythology (3rd ed.). Oxford University Press. p. 20. https://books.google.co.jp/books?id=LiJKseis6OYC&pg=PA20&redir_esc=y&hl=ja 
  46. ^ 健康ビジネスの種 ヘルスケアマーケットレビュー 産創館
  47. ^ Reiki”. American Cancer Society. 2011年10月18日閲覧。
  48. ^ Reiki”. Cancer Research UK. 2013年8月閲覧。
  49. ^ Reiki: What You Need To Know”. National Center for Complementary and Integrative Health. 2015年3月20日閲覧。





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