リス リスの概要

リス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/03 19:26 UTC 版)

リス科
生息年代: プリアボニアン現世
リス科のさまざまなリス
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 齧歯目 Rodentia
亜目 : リス形亜目 Sciuromorpha
下目 : リス下目 Sciurida
: リス科 Sciuridae
学名
Sciuridae
Fischer de Waldheim1817[1]
和名
リス科[2]
英名
Squirrel
亜科

リス科には、5亜科58285が含まれる。樹上で暮らすリスのほか、地上で暮らすマーモットプレーリードッグシマリスイワリスジリス、滑空能力のあるモモンガムササビもリスの仲間である。

分布

全世界に分布。ただし、オーストラリア南極大陸ポリネシアマダガスカル南アメリカ南部、一部の砂漠サハラエジプトアラビア)を除く[3]

オーストラリア大陸には元々生息していなかったが、19世紀に人為的に移入された[4]

形態

フロリダ州トウブハイイロリス
古典的な頬骨の形をしているオオリス(Ratufa)の頭蓋骨

リスは一般に小型の動物だが、体長7 - 10センチ、体重わずか10グラムのアフリカコビトリス(Myosciurus pumilio)から、体長53 - 73センチ、体重5 - 8キロのアルプスマーモットまで、大きさは多彩である。

樹上性リスは、毛のふさふさした大きな尾を持つ。地上性のリス(ジリス)は、樹上性リスに比べて尾は毛量が少なく、短いものが多い。多くのリスは、体毛がやわらかく絹のように滑らかだが、中には厚い毛皮を持つものもある。

体毛の色は種によって(しばしば同種内ですら)非常に変化に富む[5]東南アジアに生息するフィンレイソンリスはいくつもの毛色の違うものが野生下で存在しており、を食べるために長く伸びる舌をしている。

前脚は後脚よりも短く、足指は4または5本。しばしば前足の親指はあまり発達しておらず、足の裏にはやわらかい肉球がある[6]。手先は器用で、腰をおろして座り、前足で食物を保持しながら食べることができる。樹上性リスは木につかまって登るための、ジリスは地面に巣穴を掘るための頑丈な爪を持つ[7]。樹上性リスは頭を下にして樹を降りることができる。これは、脚を回転させることで後ろ足の爪が上向きになり、樹皮をつかむことができるためである[8]

大きな目をもち、視覚は優れている。多くは顔のひげや脚の触毛で、狭い場所を通る際に幅を認識する[9]など、優れた体性感覚を持つ[6]

歯は、典型的なネズミ目(齧歯目)の型をしている。一対の門歯は、絶えず伸び続ける。こすり合わせることですり減らし、正常な長さを維持する[9]。犬歯を持たないため、門歯の後ろは歯隙(しげき、歯のない部分)となっている[3]。その奥に食物を咀嚼するための臼歯がある。

シマリス属やジリスには、頬の内側に「頬袋」と呼ばれる袋状の構造がある。頬袋には柔軟性があり、たくさんの食物を頬張って運ぶことができる[3]

モモンガムササビは、木から木へと滑空して移動する際にパラシュートの様な働きをする飛膜を持つ[3]

生態

極高圧帯ともっとも乾燥した砂漠を除き、熱帯雨林から半乾燥の砂漠、北極圏まで、ほとんどすべての環境に生息する。

樹上性リスとジリス昼行性または薄明薄暮性であるのに対して[10]モモンガなどの滑空するリスは夜行性である。ただし、哺乳期の母モモンガとその子供は、夏の間は昼行性になる[11]

樹上性リスは、おもに樹上で生活する。木登りやジャンプを得意とし、枝の上や樹洞に巣を作る。基本的に単独生活を営み、明確な縄張りを持つ種は少ない。また、寒冷地に生息する種でも冬眠はしない。

ジリスは、草原や砂地などに巣穴を掘り、地上で生活している。森林限界を越えた高山に住む種もいる。縄張りを持つものが多い。社会性があり、家族を中心とした集団を形成し、よく発達したコロニーで生活するものが多い[6][12]。多くのジリスは冬眠をする。

シマリス類は、樹上性リスとジリスの中間的な存在であり、おもに地上で暮らすが、木登りも巧みである。樹洞だけではなく、地下にも巣を作る。

年に1回または2回出産する。妊娠期間は3 - 6週間で、種によって異なる。子供は毛も歯も生えておらず、目も見えない状態で生まれる。ほとんどの種でメスのみが子供の世話をする。生後6 - 10週で離乳し、生後1年で性成熟する。

捕食者には、ヘビクマカラスタカフクロウなどがいる。一部のカリフォルニアジリスは、天敵のガラガラヘビの毒の免疫を持つ。

食性

タンザニアのマンヤーラ国立公園で果実を食べるリス

おもに草食性で、木の実種子果実キノコなどの多様多種な植物を食べる。昆虫鳥類ヒナ爬虫類、小型の齧歯類を食べる種もある。いくつかの熱帯の種は、ほとんど完全に昆虫食に移行している[13]

樹上性リスは、草食性の強い雑食で、種子、果実、キノコ、小動物を食べる。種子を巣穴に貯めたり、土に埋めたりして貯蔵する(貯食行動[3]。ムササビは種子や果実が欠乏する季節には、木のを食す[3]

ジリスは、おもに草食性で、などの丈の低い植物を食べるが、昆虫や小型の脊椎動物を食べることもある。

捕食行動は、ジリスのさまざまな種、特にジュウサンセンジリスで見られる[14]。ジュウサンセンジリスの研究では、ヒヨコを捕食していることや [15]、死んだばかりのヘビを食べていることが報告されており[16]、 139体の標本の胃のうち、4体からは鳥の肉を、1体からはトガリネズミの残骸が発見されている[17]。また、オジロレイヨウジリスの調査では、609体の標本の胃のうち、少なくとも10パーセントが脊椎動物(大部分がトカゲ類と齧歯類)を食べていたことが発見され[18]、キヌポケットマウスを捕えて食べることも観察されている[19]


  1. ^ a b Richard W. Thorington, Jr. & Robert S. Hoffmann, “Family Sciuridae,” In: Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World (3rd ed.), Volume 3, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 754–818.
  2. ^ a b 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1–53頁。
  3. ^ a b c d e f g D.W.マクドナルド 編、今泉吉典 監修『小型草食獣 動物大百科 5』平凡社、1986年、154-157頁。 
  4. ^ Seebeck, J. H.. “Sciuridae”. Fauna of Australia. 2013年11月24日閲覧。
  5. ^ Tree Squirrels, Wildlife Online, 23 November 2010.
  6. ^ a b c Milton (1984)
  7. ^ "Squirrel" - HowStuffWorks
  8. ^ Jenkins, Farish (1974). Primate Locomotion. New York: Academic Press. p. 61. ISBN 0123840503 
  9. ^ a b c d e 大野瑞絵、曽我玲子 監修『ザ・リス―最新の飼育(エサ・住まい・接し方・医学)が全てわかる』誠文堂新光社、2005年。 
  10. ^ Red & Gray Squirrels in Massachusetts”. MassWildlife. Massachusetts Division of Fisheries and Wildlife. 2013年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年4月3日閲覧。
  11. ^ Törmälä, Timo; Vuorinen, Hannu; Hokkanen, Heikki (1980). “Timing of circadian activity in the flying squirrel in central Finland”. Acta Theriologica 25 (32–42): 461–474. http://acta.zbs.bialowieza.pl/contents/?art=1980-025-32-42-0461 2007年7月11日閲覧。. 
  12. ^ a b c d Steppan & Hamm (2006)
  13. ^ Richard W. Thorington, Katie Ferrell - Squirrels: the animal answer guide, JHU Press, 2006, ISBN 0-8018-8402-0, ISBN 978-0-8018-8402-3, p. 75.
  14. ^ Friggens, M. (2002). “Carnivory on Desert Cottontails by Texas Antelope Ground Squirrels”. The Southwestern Naturalist 47 (1): 132–133. doi:10.2307/3672818. JSTOR 3672818. 
  15. ^ Bailey, B. (1923). “Meat-eating propensities of some rodents of Minnesota”. Journal of Mammalogy 4: 129. 
  16. ^ Wistrand, E.H. (1972). “Predation on a Snake by Spermophilus tridecemlineatus”. American Midland Naturalist 88 (2): 511–512. doi:10.2307/2424389. JSTOR 2424389. 
  17. ^ Whitaker, J.O. (1972). “Food and external parasites of Spermophilus tridecemlineatus in Vigo County, Indiana”. Journal of Mammalogy 53 (3): 644–648. doi:10.2307/1379067. JSTOR 1379067. 
  18. ^ Bradley, W. G. (1968). “Food habits of the antelope ground squirrel in southern Nevada”. Journal of Mammalogy 49 (1): 14–21. doi:10.2307/1377723. JSTOR 1377723. 
  19. ^ Morgart, J. R. (May 1985). “Carnivorous behavior by a white-tailed antelope ground squirrel Ammospermophilus leucurus”. The Southwestern Naturalist 30 (2): 304–305. doi:10.2307/3670745. JSTOR 3670745. 
  20. ^ Steppan, Scott J. & Hamm, Shawn M. (2006年). “Sciuridae (Squirrels) Version of 13 May 2006.”. Tree of Life Web Project. 2014年3月4日閲覧。
  21. ^ a b c d e f Richard W. Thorington, Jr. (2012). Squirrels of the World. Johns Hopkins University Press. pp. 1-2 
  22. ^ Wilson, D.E.; Reeder, D.M. (2011). “Class Mammalia Linnaeus, 1758. In: Zhang, Z.-Q. (Ed.) Animal biodiversity: An outline of higher-level classification and survey of taxonomic richness”. Zootaxa 3148: 56–60. http://mapress.com/zootaxa/2011/f/zt03148p060.pdf. 
  23. ^ Emry, R. J.; Korth, W. W. (2007). "A new genus of squirrel (Rodentia, Sciuridae) from the mid-Cenozoic of North America". Journal of Vertebrate Paleontology 27 (3): 693.
  24. ^ その生物種あるいは分類群のみで獲得された識別可能な固有の解剖学的特徴。(Autapomorphy
  25. ^ Steppan et al. (2004), Steppan & Hamm (2006)
  26. ^ Hesperopetes Emry & Korth, 2007”. The Global Biodiversity Information Facility GBIF Backbone Taxonomy (2013年7月1日). 2014年3月10日閲覧。
  27. ^ Oligosciurus Wang & Qiu, 2004”. The Global Biodiversity Information Facility GBIF Backbone Taxonomy (2013年7月1日). 2014年3月10日閲覧。
  28. ^ Plesiosciurus Qiu Zhuding & Liu Yipu, 1986”. The Global Biodiversity Information Facility GBIF Backbone Taxonomy (2013年7月1日). 2014年3月10日閲覧。
  29. ^ Prospermophilus Qiu & Storch, 2000”. The Global Biodiversity Information Facility GBIF Backbone Taxonomy (2013年7月1日). 2014年3月10日閲覧。
  30. ^ Sciurion Skwara, 1986”. The Global Biodiversity Information Facility GBIF Backbone Taxonomy (2013年7月1日). 2014年3月10日閲覧。
  31. ^ Similisciurus Stevens, 1977”. The Global Biodiversity Information Facility GBIF Backbone Taxonomy (2013年7月1日). 2014年3月10日閲覧。
  32. ^ Sinotamias Qiu, 1991”. The Global Biodiversity Information Facility GBIF Backbone Taxonomy (2013年7月1日). 2014年3月10日閲覧。
  33. ^ Vulcanisciurus Lavocat, 1973”. The Global Biodiversity Information Facility GBIF Backbone Taxonomy (2013年7月1日). 2014年3月10日閲覧。
  34. ^ Cedromus Wilson, 1949”. The Global Biodiversity Information Facility GBIF Backbone Taxonomy (2013年7月1日). 2014年3月10日閲覧。
  35. ^ "squirrel, n.". The Oxford English Dictionary (2nd. ed.). Oxford University Press. 1989. 2010年11月8日閲覧 [リンク切れ]
  36. ^ Whitaker & Elman (1980): 370
  37. ^ 徳井淑子 著「中世」、深井晃子 編『カラー版 世界服飾史』(増補新装)美術出版社、2010年、37-39頁。ISBN 978-4-568-40077-9 
  38. ^ イギリスで、リス料理がじわじわ人気 All About 2008年12月17日
  39. ^ 厚生労働省動物の輸入届出制度について
  40. ^ 厚生労働省 『我が国の動物の輸入状況について(平成22年)
  41. ^ 大野瑞絵、三輪恭嗣 監修『ザ・プレーリードッグ&ジリス―食事・住まい・接し方・医学がわかる』誠文堂新光社、2010年。 
  42. ^ Spring has come!”. 戸栗美術館 (2004年3月). 2014年7月21日閲覧。
  43. ^ 葡萄栗鼠 松林桂月”. 豊橋市美術博物館. 2014年7月21日閲覧。[1]


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