ライトノベル
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名称
井上伸一郎によれば1980年代後半には統一されたジャンル名はなく「ファンタジー小説」や「ヤングアダルト」に括られていたという[18]。水野良と安田均は「RPGの世界観やストーリー」を特徴とする小説として「ゲーム小説」を定義しています。その後、角川歴彦は「ゲーム小説」の概念をメディアミックスの可能性を持つ新しいジャンルに拡大しました[22]。
「ライトノベル」の命名は、1990年初めにパソコン通信ニフティサーブの「SFファンタジー・フォーラム」において、それまでのSFやファンタジーから独立した会議室を、会議室のシスオペであった“神北恵太”[注釈 1]が「ソノラマ・コバルト」などのレーベルからの出版物に「ライトノベル」と名付けたことが始まりであるとされる[23][24]。
従来、これらの分類に対して出版社がつけていた名称としては「ジュブナイル」「ヤングアダルト」または「ジュニア小説」などがある。しかし「ジュブナイル」は小学生向けの教育的かつ健全な物語というイメージがあり、欧米の図書館職員によるレイティングが由来の「ヤングアダルト」は日本では「ヤングのアダルト小説」とも解釈されて異なった印象を与えがちなことから、これらとは違う、気軽に扱うことの出来る名称として作られた。現在では、各種メディアでも「ジュブナイルノベル」や「ヤングアダルト小説」ではなく「ライトノベル」と呼ばれるようになり、定着している[25]。なお「ライトノベル」という呼称は、発祥してからすぐに定着したわけではなく、一般にも呼称されるようになったのはインターネットが広く普及しそれまで以上に読者同士が交流を行うようになった2000年頃だとされている[6]。例えば、東京BBSのファンタジーノベルボードでは、ボードで扱う話題の説明に "(富士見ファンタジア文庫・朝日ソノラマ文庫等)" とあり、今日ではライトノベルと認識される範疇を「ファンタジーノベル」と括っていた。
「ライトノベル」という呼称については、和製英語なので国際的には通用しないと誤解されていること(現在は「MANGA」「ANIME」などと同様に日本独自の分類分けとして知られている)、英語として直訳すると「軽い小説」と訳されることもあり、読者がどのように受け入れているのかを考慮することなく「ライトノベル」と呼ばれることを敬遠する出版社や作家などもいる[26]。また、文学事典などの学術的な事典においても「ライトノベル」を採用している例は少ない[注釈 2]。さらに図書館学の分野においては国際的な学術用語として「ヤングアダルト」が採用されている[27]。
注釈
- ^ テレビアニメ『無敵超人ザンボット3』の「神北恵子」を男性形に変えたハンドル。
- ^ 2004年に明治書院より刊行された『日本現代小説大事典』(ISBN 978-4-625-60303-7)では、コバルト文庫やスニーカー文庫を「ジュニア小説」もしくは「キャラクター小説」と分類する(P1439-1441)。
- ^ ライトノベルとは異なるジャンルの事例ではあるが、2007年に集英社が過去の名作の新装版を発行するにあたって、太宰治著『人間失格』の表紙イラストに漫画家の小畑健を起用したところ、その年の『人間失格』の売り上げが異例の9万部を記録したことがある(例年は1-2万部)「人間失格:「デスノート」の小畑健が表紙描く 異例の9万部突破」毎日jp、2007年8月23日。
- ^ 同一作品が『小説家になろう』だけでなく『アルファポリス』などの他サイトにも投稿される場合があることも誤認を受ける要因と考えられる。
- ^ 更に遡れば、2012年にNHN Japanが配信した小説アカウントにユーザーが話しかける形でストーリーが送られてくる『トークノベル』が似ている。
- ^ SNS『pixiv』の小説機能でも2020年4月16日から単語変換機能というのは導入されたがそれより以前から。
- ^ これらが一般人に「一般文芸」として認知されているかどうかは、正確なデータがなく不明である。
- ^ 例えば「ライトノベル進化論」『読売新聞』2006年11月7日・14日・21日や『クイック・ジャパン Vol.54』 太田出版、2004年など。
出典
- ^ "ライトノベル". 『知恵蔵』(朝日新聞出版、2008年). コトバンクより2022年3月13日閲覧。
- ^ "ライトノベル". 『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館). コトバンクより2022年3月13日閲覧。
- ^ “あらすじに基づくライトノベルの定義作成”. 東京都市大学. 2022年5月11日閲覧。
- ^ “ライトノベルの現状と将来”. 高崎経済大学. 2022年5月11日閲覧。
- ^ a b “ライトノベル完全読本”. 日経BP. 2006年6月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年6月27日閲覧。
- ^ a b c d e f 榎本秋『ライトノベル文学論』2008年10月、NTT出版、ISBN 978-4-7571-4199-5。
- ^ 一柳廣孝、久米依子編著「ライトノベル・スタディーズ」青弓社
- ^ 東浩紀著「ゲーム的リアリズムの誕生」p27
- ^ 日本経済新聞2020年5月17日朝刊文化時評
- ^ 大橋 2014, pp. 46, 49.
- ^ 大橋 2014, p. 18.
- ^ a b 大橋 2014, p. 103.
- ^ 新城 2006, p. 42.
- ^ 杉浦 2008, pp. 92–93.
- ^ SUGOI JAPAN AWARD2017 ライトノベル部門、2017年3月28日閲覧[リンク切れ]
- ^ S‐Fマガジン編集部『SFが読みたい! 2017年版』早川書房、2017年
- ^ 大橋崇行・山中智省『小説の生存戦略 ライトノベル・メディア・ジェンダー』青弓社 2020年 p.69 ISBN 978-4787292551
- ^ a b KADOKAWA 井上伸一郎に聞く -WEB発の新ジャンル 新文芸-
- ^ 愛咲優詩 (2018年3月3日). “意外と知らない「ライトノベル」ブームの現在”. 東洋経済オンライン. p. 2. 2021年3月13日閲覧。
- ^ a b 『このミステリーがすごい!』編集部 『このライトノベルがすごい! 2005』 宝島社、2004年、ISBN 4-7966-4388-5。
- ^ 日経キャラクターズ編集部 『ライトノベル完全読本 vol.2』 日経BP〈日経BPムック〉、2004年、ISBN 4-8222-1708-6。
- ^ 山中智省「ライトノベルという出版メディアの確立─一九九〇年代の電撃文庫の様相から─」『目白大学人文学研究』第19号、目白大学、2023年3月31日、1-19頁、ISSN 1349-5186。
- ^ 「ライトノベル進化論】(下)「良質な青春小説」のような…?」 読売新聞社、2006年11月21日、2007年9月29日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 新城 2006, p. 17.
- ^ 新城カズマ 『ライトノベル「超」入門』 ソフトバンク〈ソフトバンク新書〉、2006年、ISBN 4-7973-3338-3。
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- ^ ライトノベル研究序説, p. 187.
- ^ 飯田一史 (2013年8月8日). “第7回 エンターブレイン アクセス数より「勘と口コミ」”. 新文化 (新文化通信社) 2017年7月1日閲覧。
- ^ ライトノベル研究序説, pp. 27–30.
- ^ 新城 2006, p. 69.
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- ^ 大森望、三村美衣『ライトノベル☆めった斬り!』太田出版、2004年。ISBN 9784872339048。
- ^ 【第2回】角川歴彦とメディアミックスの時代 | 最前線 - フィクション・コミック・Webエンターテイメント
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- ^ 大橋 2014, p. 49.
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- ^ マンガのような主人公が活躍、「キャラノベ」が人気のワケ - 日本経済新聞
- ^ 「ライト文芸」現代の中間小説 漫画世代に向け創刊ラッシュ - 朝日新聞デジタル[リンク切れ]
- ^ 『ファウスト2006WINTER Vol.6』 2005, p. 362.
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- ^ Walkers Net・輕小?[リンク切れ]
- ^ CHiNGWiN Novel[リンク切れ]
- ^ 田泰昊 (2016). “韓国のライトノベル――その輸入と進化”. ライトノベル・フロントライン 2: 95-103.
- ^ gomanga.com「SEVEN SEAS ENTERTAINMENT LAUNCHES NEW "LIGHT NOVEL" IMPRINT」
- ^ TOKYOPOP - 「Romane」参照。
- ^ manga carlsen[リンク切れ]
- ^ Словарь Аниме-Терминологии(アニメ用語事典)の「ранобэ」を参照。[リンク切れ]
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