ユースホステル 宿泊施設としての側面

ユースホステル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/30 09:58 UTC 版)

宿泊施設としての側面

利用の規則

2018年現在では男女別の相部屋の原則(家族や夫婦の場合は相部屋ではない場合が多い)、他の利用者の迷惑になる行為をのぞいては一般的な宿泊施設と同様の施設が多く、食事の配膳、食器洗い等の後片付け、寝具の準備、清掃に至るまでセルフサービスといった施設は少ない。

かつては朝食後の清掃もホステラーの義務であったり、義務でなくても任意で行うのが望ましいとされた施設もあったが、現在日本国内で、ホステラーが朝の出発前に館内を清掃する施設はほとんど皆無と言ってもよい。

かつては日本国内の施設では、消灯時間が厳守され、午後10時にはホステラーの寝室も含めて館内の灯火をほとんど全て消し、ホステラーは寝室に引き上げる必要があった。現在でも消灯時間を設けている施設は多いが、規則は緩やかで、早めに就寝したいホステラーへの配慮から、寝室の電灯を午後10時から11時の間に消す必要があっても、食堂や談話室(談話スペース)をより遅い時間まで雑談などに利用できる施設が普通で、中には談話室を終夜利用できる施設もある。

かつて、日本国内では禁酒の施設が一般的であったが、近年では大半の施設で飲酒できるようになり、ホステラーに酒類の販売を行う施設や施設内にカウンターのあるバーを設けて、そこでホステラーにビールソフトドリンクを提供する施設が海外のみならず日本でも見られるようになっている。また、喫煙については、受動喫煙防止の観点から、全館禁煙の施設が増加してきている。

食事の提供

夕食・朝食とも提供する施設もあれば、どちらかのみの提供となっている施設もある。また、施設によっては通年もしくは閑散時に食事提供を行っていない場合や、ホステラーが自炊する場合もある。

海外では自炊室を備えた施設が多いが、現在日本では自炊室を備えた施設は少ない。自炊室のある施設では、食器はおおむね無料で貸してもらえる。

  • 朝食料金 - 日本では、大概宿泊料金と朝食料金が別立てある。ヨーロッパでは宿泊料金が朝食込みとなっている施設が多い。
  • 夕食料金 - 日本でも世界でも、夕食が宿泊料金に含まれている施設は見られない。
  • 夕食予約のタイミング - 日本では宿泊申込み(予約)と同時に食事の予約も行う。ヨーロッパの施設では夕食前に館内で食券を購入して施設内の食堂を利用するか、施設内の食堂に入ってその場で夕食メニューを注文すればよい。
  • 朝食予約のタイミング - 日本では宿泊申込み(予約)と同時に食事の予約する。ヨーロッパの施設では、その朝施設内の食堂に入って注文すればよい。

寝室と寝具

ヨーロッパのユースホステルの様式では、寝室内のベッドは二段ベッドであり、その様式は日本国内の施設でも一般的であるが、日本では寝室が布団を敷いて寝る敷きの和室となっている施設もある。

また、近年の日本では、寝室内に二段ベッドではなくシングルベッドを備える施設が増えている。1室の宿泊人員は、日本でも海外でも、一般的には4〜8人程度である。

中には、大部屋の寝室に二段ベッドを何台も据えて一部屋の宿泊人員を多くした「マスプロ」式・「詰め込み」式で、ホステラーにとって居住性が高いとは言えない施設もある。

料金が低廉とはいえ、日本でも海外でも、寝室廊下など館内が清潔で、相部屋ながら居住性の高い施設も多い。一方、中には衛生的とは言い難い施設もある。

窃盗などへの防犯対策では、日本国内でも近年では寝室のを内側から施錠できる施設が少なくない。日本ではまだ少ないが、ヨーロッパではチェックイン時にホステラーに寝室のを貸与する施設が一般的である。寝室の鍵はカードキーである場合もある。チェックイン時に鍵の保証金を徴収し、紛失・破損など問題がない限りチェックアウト時に鍵を返却の際、全額保証金を返還する施設もある。また、ロンドンパリなどヨーロッパの都市部では、寝室の扉がオートロックとなった施設もある。さらに、ヨーロッパでは寝室内に荷物用ロッカーを備える施設が多く、その場合ホステラーがロッカーの施錠を持参の南京錠で行うことが多い。

ベッドのシーツ(ユースホステルにおいては「スリーピングシーツ」と呼ばれることが多い)は、かつてホステラーが持参することが多かったが、現在ではほとんどの場合、施設が提供するものを使用する。以前は封筒状のものが一般的であったが、形状からくる束縛感が不評なこともあり、多くの場合一般的なシーツを二枚重ねにして使用する。もちろん現在の日本ではシーツは宿泊料金に含まれており、持参しても料金は割引にならない。海外では、現在でもシーツ持参で宿泊料金が割引になる国がある。

朝には毛布を畳み、かつての日本ではその方向や畳み方まで微に入り細をうがって点検するという、まるで刑務所か軍隊を思わせるような規律があったが、現在はそのような厳しい点検を行うことはない。借りたシーツは連泊でない限り、ベッドまたは布団から外して畳み、所定の場所に返却する。

水周り

ユースホステルでは基本的に風呂(シャワー)・トイレ・洗面所は寝室になく、寝室の外に設けられ共同である。

ユースホステルの共同浴場は、海外では当然シャワー室だが、日本では沖縄など南西諸島の一部の施設でシャワー室であるのを除けば、浴槽と洗い場からなる風呂である。日本の温泉地では、共同風呂が温泉風呂となっている施設がある他、館内の風呂が温泉でなくても希望者を自動車で近くの温泉浴場に送迎する施設がある。

近年では、洗面台が寝室内に設けられた施設が日本にも海外にもあり、中には洗面台だけでなくトイレも寝室に設けられた施設がある。後述の日本のユースゲストハウス・ドイツのユーゲントゲストハウスでは、寝室にトイレ・洗面台だけでなくシャワー(バス)までも備わった施設もある。

日本でも海外でも、コインランドリーなどホステラーが有料で使用できる洗濯機・乾燥機が多くの施設に設置されている。

「ミーティング」

ミーティング(ティータイム)は日本のユースホステルに特有の行事で、海外の施設では見られない。現在では行われていない施設が多い。

かつては、マネージャーやヘルパーが中心となって、夕食後に「ミーティング」が行われ、宿泊者同士の交流もその場を中心として行われていた。これらはユースホステル側スタッフ(ペアレントやヘルパー)とホステラーによる踊りが中心で、程度問題であるが、脱線状態となり、狂喜乱舞しているユースホステルもあった。しかし、歌と踊りのミーティングは、禁酒でもあり消灯時刻もある中での制限内での騒ぎであった。

その後、ミーティングの形態も変化し、かつて程度を超えたミーティングで不評を得たこともある「歌」や「踊り」を行う施設はまれになり、それを実施するユースホステルでは逆に「売り」になっている。

現在では要望に応じての観光案内や、ティータイムなどの座談が中心である。

ティータイムでは参加したホステラーに茶菓を出して、ホステラー同士が旅行情報を交換したり雑談する他、マネージャーやヘルパーが観光案内を行うことが一般的であり、日常生活では出会うことのありえない人達との出会いがあって、ユースホステルの魅力の1つとなっている。

最近はミーティングやティータイムの時間を設けていないユースホステルもある。その場合は談話室に自由に集まり、雑談や情報交換が自然発生することが多い。

ユースゲストハウス

近年では、通常のユースホステルより設備の水準が高い施設としてユースゲストハウス略称:YGH)もある。

通常のユースホステルより高い年齢層の利用を考慮して、一部屋の定員を2〜6人程度にし、寝室では二段ベッドでなくシングルベッドを備えて間取りが広いなど、設備が高級化しているため、宿泊料金も通常の施設より高めに設定され、JYHでは1泊2食付5000円〜6500円程度とされているが、実際には2004年現在、1泊2食付で約5400円〜約5800円(会員料金)が一般的と考えるとよく、家族部屋などがある。設備には以下の3タイプあり、日本ユースホステル協会が設定している上限価格が違っている。

  • 洗面付(上限価格 - 素泊3500円)
  • 洗面トイレ付(上限価格 - 素泊4000円)
  • 洗面トイレ・風呂付(上限価格 - 素泊4500円)

但し、あくまでも上限価格であり、実際には、どのユースゲストハウスも、価格差はほとんどない。1泊2食付で約5400円〜約5800円(会員料金)の範囲内と考えて良い。

ドイツでは一般のユースホステル(Jugendherberge)より設備の水準が高いユーゲントゲストハウス(Jugendgästehaus)があるのにならって、JYHが開設を勧めるようになった。

しかし、ユースゲストハウスと同等の高レベルの設備ながら、設置者またはマネージャーの意向で通常のユースホステルとして営業している施設もある。








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