モクズガニ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/09 23:40 UTC 版)
分布
小笠原諸島を除く日本全国、樺太、ロシア沿海州、朝鮮半島東岸、済州島、台湾、香港周辺まで分布する[1]。分布域はチュウゴクモクズガニの分布域である中国大陸東岸部から東北部、朝鮮半島西岸を取り囲むように、亜熱帯から亜寒帯までの広範囲にわたっている[1]。そのため外骨格の形態は共通でも、南方の個体群と北方の個体群では遺伝子のレベルである程度の隔たりがある可能性が強い[4]。
川やその周辺の水田、用水路、河口、海岸などに生息する。一般的に、同じ川にすむサワガニよりは下流域に棲み、また同じイワガニ科のアカテガニのように乾いた陸上にあがることは少ない。淡水域にいる間は基本的に夜行性で、昼間は水中の石の下や石垣の隙間などに潜み、夜になると動きだす。海に下ると潮の干満に合わせた行動も見られるようになり、昼の満潮時でも活動中の個体を観察することができる。未成体は河川の感潮域からかなり上流の淡水域にかけて分布するが、分布の中心は淡水域の下流部にある。雌雄とも上流に行くほど大きく成長するため、大型の個体が採集される。上流域で採集された例としては、1980年代に長野県を流れる千曲川水系の犀川[3]や、諏訪湖周辺(1986)[5]で採集されたという記録がある。ただし、犀川流域で捕獲された個体はダム建設以前に遡上し、生存していた個体ではないかと考える研究者もいる[3]。
四万十川などの清流や信濃川、北上川などの大河で漁獲され、川の豊かさを示すイメージもあるが、水路のようなごく小さな川でも、流量があり外海と繋がってさえいれば多数分布している。また多くの干潟のカニ類が特定の底質環境を好み棲み分けが見られるのに比べ、モクズガニは砂、泥、岩、転石、コンクリートなど様々な底質に出現し、底質に対する選好性は比較的弱い。そのため様々な環境に適応する能力があるのは確かである。
スナガニ類やベンケイガニ類、同属のチュウゴクモクズガニと異なり、底質が固い粘土質である場合を除いて細長い巣穴を掘ることはまれである[6]。特定のなわばりを持つこともないようで、移動性が高く、水中の岩の下に複数の個体が同居することも普通である。水流に対しては正の走性があるようで、淵に比べ瀬を好む傾向がある。しかし完全に瀬にのみ分布が集中するわけではなく、瀬頭から淵尻にかけての周辺に高密度の分布がみられる場合もある。堰がある場合も同様で、堰の直上の堪水域と直下の急流域にかけて分布が集中する場合がある。
- ^ a b c d e f g 小林 (2011)、p.44
- ^ a b 【食紀行】宮崎・日南のカニ巻き汁 すり身、フワフワに変身『日本経済新聞』夕刊2018年11月29日(くらしナビ面)2019年4月14日閲覧。
- ^ a b c 吉田利男:長野県内で見られる大型淡水性甲殻類 川の自然と文化 NEWS LETTER No.10 (PDF)
- ^ 小林 (2011)、pp.44-45.
- ^ 諏訪湖のカニ 長野県水産試験場
- ^ 小林 (2011)、p.51
- ^ 『日本経済新聞』 (食ナビ)秋田の川の幸モクズガニ みそ×味噌 吸い尽くす 2017年5月30日夕刊
- ^ 小林 (2011)、p.42
- ^ 小林 (2011)、pp.43-44.
- ^ 小林 (2011)、p.43
- ^ a b c d e f g 小林 (2011)、p.46
- ^ a b c d e f g 小林 (2011)、p.48
- ^ a b c d e f g h 小林 (2011)、p.47
- ^ a b c d e 小林 (2011)、p.52
- ^ 小林 (2012a)、p.104
固有名詞の分類
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