メビウスの帯 化学の分野

メビウスの帯

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/05 04:14 UTC 版)

化学の分野

有機化合物では、1985年コロラド大学のデーヴィッド・ワルバ (David Walba) らが、メビウスの帯の構造を持つ分子の合成に成功した[15]

ねじれた環状のπ共役系は通常の芳香族とは逆に 4nπ系が安定となる。これはメビウス芳香族性と呼ばれ、計算化学による予想を経て21世紀初頭に実際に化合物が合成された。

無機化合物では、細長い帯のような結晶なら作れるが、メビウスの帯のようなねじれた結晶をつくるのは無理だと考えられてきた。2002年、北海道大学工学部の丹田聡らが三セレン化ニオブの結晶を変形させ、メビウスの帯状の結晶を作ることに成功した[16][17]

デザイン・芸術などへの応用

メビウスの帯はマウリッツ・エッシャー安野光雅タイガー立石などが自身の作品中でモチーフとして利用しており[18]、帯をかたどった彫刻作品も数多く制作されている[19]

また、循環や再生を想起させることから下図のようにリサイクルのシンボルマーク(ユニバーサルリサイクルシンボル)として採用されているほか[20]ブラジルオランダベルギーなどの国で切手に描かれるなど[21]、メビウスの帯をあしらったデザインは多い。

メビウスの輪をそのままダイスとした「1面ダイス」は「1」の目が出る確率が100%であり、実用性はなく、ジョークグッズとなっている。

ウェブサイトの8chanのロゴはメビウスの輪を表している。

文学において

文学作品においてメビウスの帯はしばしば無限の繰り返しを比喩的に表すものとして用いられる(ただし、数学史家のジョン・フォーベルはメビウスの帯の比喩的表現は不適切な文脈でもしばしば用いられていると指摘している[22])。前述のようにメビウスの帯は1周して戻ってくると向きが逆転しているという性質を有していることから、ループ構造を持つプロットループもの)や登場人物がなんらかの経験を経て考えをあらためて過去(あるいは元いた場所)に戻る際の比喩としてメビウスの帯が使われることもある[23]


注釈

  1. ^ ユークリッド半平面とは、ユークリッド平面の半分、つまりのこと。
  2. ^ 研磨用のものは米国特許番号2479929、運搬用のものは米国特許番号2784834

出典

  1. ^ 『メビウスの遺産―数学と天文学』13頁・134-136頁・138-140頁。
  2. ^ 『トポロジー―ループと折れ線の幾何学』82頁
  3. ^ 『トポロジー―ループと折れ線の幾何学』82頁・109-110頁。
  4. ^ 『曲面と結び目のトポロジー―基本群とホモロジー群』43頁。
  5. ^ 『トポロジー入門』87頁。
  6. ^ 『トポロジー入門』32頁。
  7. ^ 『3次元多様体入門』22-24頁。
  8. ^ 『トポロジー入門』29-30頁。
  9. ^ 『メビウスの帯』22-23頁。
  10. ^ a b マーティン・ガードナー著・金沢養訳『数学マジック』白揚社、1999年、107頁。ISBN 978-4826951036
  11. ^ 『メビウスの帯』32頁。
  12. ^ C・C・アダムス著、金信泰造訳 『結び目の数学』 培風館、1998年、276頁。ISBN 978-4563002541
  13. ^ a b 『メビウスの帯』74-80頁。
  14. ^ メビウス抵抗器は米国特許番号3267406、メビウスコンデンサは米国特許番号4599586
  15. ^ ワルバらの論文 Archived 2006年9月9日, at the Wayback Machine. - Walba, D. M.; Armstrong, J. D., III; Perry, A. E.; Richards, R. M.; Homan, T. C.; Haltiwanger, R. C. Tetrahedron 1986, 42, 1883-1894. DOI: 10.1016/S0040-4020(01)87608-0
  16. ^ Tanda, S.; Tsuneta, T.; Okajima, Y.; Inagaki, K.; Yamaya, K.; Hatakenaka, N. Nature 2002, 417, 397-398. DOI: 10.1038/417397a
  17. ^ 北海道大学大学院工学研究科・工学部広報平成15年7月号
  18. ^ 『トポロジー―ループと折れ線の幾何学』22頁。
  19. ^ 『メビウスの帯』216-217頁。
  20. ^ 『メビウスの帯』13頁。
  21. ^ 『メビウスの帯』215-216頁。
  22. ^ 『メビウスの遺産―数学と天文学』19頁。
  23. ^ 『メビウスの帯』15-16頁・245頁など。


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