メコン川 メコン川の概要

メコン川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/16 05:54 UTC 版)

メコン川

流域図
水系 媄涳
延長 4023 km
平均流量 16,000 m³/s
流域面積 795,000 km²
水源 中国青海 玉樹チベット族自治州 雑多県 江地毛長山 拉賽貢瑪水源
チベット高原
水源の標高 約 5200 m
河口・合流先 南シナ海
メコンデルタ
流域 中国
ミャンマー
ラオス
タイ
カンボジア
 ベトナム
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メコン川はチベット高原に源流を発し、中国雲南省を通り、ミャンマーラオス国境、タイ・ラオス国境、カンボジアベトナムをおよそ4200 kmにわたって流れ、南シナ海に注ぎ込む、東南アジアで最長の河川である[2]。雨期には流量が増し流れが速いため、船の運航は非常に難しい。乾期には流量は減るものの、浅瀬が増えるため船の運航が難しい。流域諸国が集まって協議するメコン川委員会で、メコン川の土砂を除去して貿易路に使おうとの案が出されたものの、土砂を除去しても、すぐに土砂が堆積するため、この計画は頓挫した。なお、タイ、ラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナムの本流・支流周辺では、日用品の取引などの小規模な貿易が行われている。なお、河口付近はメコンデルタと呼ばれ、ベトナムの生産量の半分以上を占める農漁業地帯である[1]

名称

メコンの名はタイ語に由来する。メー)はメーナーム(川)の短縮語、コンコーン)の意味には諸説ある。有力な説は、コーン(Khong)はサンスクリット語のガンガ(ganga=ガンジス川)の転訛とするもの。すなわち、メコンは(ガンジス川のように)偉大な川、大きな川と解釈する。タイ語ではโขง [kʰǒːŋ]ワニを意味するが、この場合はคด [kʰót] または โค้ง [kʰóːŋ]の転訛だと一部で考えられている。どちらも川や道の屈曲点を意味する。 いずれの説を採用するにしても、という語に、既に川の意味が含まれているので、さらに「川」をつけるのは不自然とする立場から、メコンとのみ称することもある。

なお、東南アジアと南アジアの地域協力「メコン-ガンガ協力英語版」は、メコンとガンジス川の両方にちなんで名付けられた。

国際河川のメコンは、地域や国ごとに異なった名前で呼ばれる。

生物相

メコンとその流域は、世界的に見ても生物の多様性が特に豊かな地域の1つである。世界自然保護基金(WWF)によると、発見された新種は2015年だけで163種、1997年以降の累計では2409種に達している[3]。生息が特定あるいは推定されている魚類の種は1200以上に上る。漁業はそれぞれの領域の経済活動の非常に重要な要素であり、約120種の魚が商業的に取り引きされていると推定され、食料として重要なタンパク源とされている。これによってカンボジアとラオスの人口1人当たりの淡水魚の漁獲量が世界で最大規模となっている[4]。研究者によると、メコンは世界で最も巨大な魚の種が生息する川であり、顕著な例はメコンオオナマズである。また、野生のイネオリザ・ルフィポゴンも流域一帯に生えている[5]

上流部では、流入する雪解け水により一定の流量があるため、比較的透明であり流れは速い。水質はpH6.9から8.2で、ほぼ中性の傾向を示し、栄養素レベルは低い。下流域では特に雨季は赤茶色に混濁する。インドシナ半島に広く分布する赤土であるラテライト土壌を侵食するのが理由である。水質はpH6.2から6.5。

メコンは上流と下流の、異なった2つの生物相に分けられる。流れの速い上流では、魚類はドジョウ、吸盤を持ったナマズコイが支配的な種である。コイは流れの遅い中流部、下流部でも見られるものの、コイを除くと、メコンオオナマズおよびハモが支配的な種であり、タイワンドジョウ属ウォーキングキャットフィッシュインドシナニシクイガメなども見られる[5][6]。一部の魚類や哺乳類爬虫類は重大な危機に直面しており、カイヤンパーカーホエロンガータリクガメマレーハコガメキングコブラタイドクフキコブラ英語版などの絶滅危惧種も多い[7][8]。淡水に生息するカワゴンドウイラワジイルカ)は、かつて下流部では一般的に見られたが、治水と乱獲のため、ほとんど見かけられなくなった。川の中や川の周りに生息している他の沼沢地の哺乳動物としては、カワウソスナドリネコが挙げられる。固有種のシャムワニも、目撃例は非常に少なくなった。また、鳥類のカタジロトキ英語版アカハジロベンガルショウノガンオオヅルオオハゲコウなども見られる[5][9][10][11]

沿岸一帯にラムサール条約登録地が多いが、本流の一部を含むのはカンボジアのストゥントレン州の北部だけである[9]


  1. ^ a b c d e f g 「メコン川流量激減/東南ア 農漁業被害/中国のダム建設影響か」「新たな米中攻防の舞台」読売新聞』朝刊2021年2月26日(国際面)※本文閲覧は要会員登録。
  2. ^ a b c メコン流域国 米中が綱引き/河川管理、中国主導に米反発」『日本経済新聞』朝刊2020年9月9日(国際面)2020年10月4日閲覧
  3. ^ メコン川流域で163種の新種を発見!最新報告を発表”. WWFジャパン. 2017年8月17日閲覧。
  4. ^ a b ダム建設に揺れるメコン川」『ナショナルジオグラフィック日本版』2015年5月号(2020年10月4日閲覧)
  5. ^ a b c Tram Chim National Park | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2012年2月2日). 2023年4月6日閲覧。
  6. ^ Beung Kiat Ngong Wetlands | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2010年6月16日). 2023年4月6日閲覧。
  7. ^ Lower Songkhram River | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2020年4月23日). 2023年4月6日閲覧。
  8. ^ Xe Champhone Wetlands | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2010年6月26日). 2023年4月6日閲覧。
  9. ^ a b Middle Stretches of Mekong River North of Stoeng Treng | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2012年1月1日). 2023年4月6日閲覧。
  10. ^ Nong Bong Kai Non-Hunting Area | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2001年7月5日). 2023年4月6日閲覧。
  11. ^ Lang Sen Wetland Reserve | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2015年5月22日). 2023年4月6日閲覧。
  12. ^ ベトナム・メコン河下流域における水位変動特性” (PDF). 上原克人. 2015年3月24日閲覧。
  13. ^ Probe International 30.06.2006 The Hydrolancang cascade Archived 2009年5月29日, at the Wayback Machine.
  14. ^ 【ASEAN50年】メコン川流域 中国主導の「水運開発」岩礁爆破に住民反発”. 『毎日新聞』朝刊2017年8月4日(国際面). 2017年8月18日閲覧。
  15. ^ メコン川に大異変、世紀の低水位を記録、深刻な食料危機の恐れも 水が澄む「ハングリーウォーター」現象も発生、6000万人が頼る大河が岐路に ナショナルジオグラフィック(2020年2月29日)2020年10月4日閲覧


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