マンション 居住

マンション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/16 04:36 UTC 版)

居住

マンション購入時は、人々は建物や環境、立地というハード面を重視する傾向がある[注 5]。一方、マンション管理士の立場からは、「人と人とが一緒に住む」(共同生活の場)というソフト面に重点を置くことも提唱され、手段として、人間関係の構築、子育て高齢者への福祉インターネット活用などが例示されている[19]。近年では人々のライフスタイルが多様化し、特定の特徴を備えたマンションを求める人々もいる。たとえば、ペットを飼う人々のために「ペット飼育可」という条件である物件、さらにはペット用に室内設計に工夫されている物件、音楽家や趣味で音楽を愛好する人々のための防音室が各戸に設置してある物件、オートバイ好きの人々のためにオートバイを各戸に持ち込むことができる物件などである。デベロパーはさまざまな提案を行い、需要に応えている。

マンションでは「人と人とが一緒に住む(共同生活)」状況であるため、利用方法などをめぐって、入居者、区分所有者間のトラブルも多く見られる。

トラブル

マンション内でもっとも多いトラブルに騒音がある[20]。隣室や上下階の生活騒音は、法令などの違反となるような大音量でなくとも、音質や頻度によっては不快に感じることがあり、またその程度が人によって大きく異なる。法令や管理規約に違反しないかぎり、当事者間の問題となる。上階からの騒音は床スラブが厚いほど、また直張りよりも二重床のほうが軽減される。ただし配管などを通して音が漏れてくる場合もある。1990年代初頭から急速に広まったフローリングを含め解決策といえるものとしては床や壁を厚くしたり、防音効果のある絨毯などを挟んだりすることが考えられる。既存マンションで改修工事としてこれらを行う場合、共用部分である躯体に手を加えることとなるため管理組合全体の問題となったり、工事にともなう騒音、振動が隣室や上下階に及んだりするため、困難な場合がある。マンションによっては、管理規約を定め(あるいは改定し)守るべきL値の設定が行われている事例もみられる。

1980年代には上階や隣家の騒音をめぐる住民間の殺傷事件などが発生した事例もあったが、その後、防音技術やそれの普及の向上に伴って問題としての深刻度は低下している。

近年では、ペット飼育に関するトラブルや、マンション内にゴミ置場がある場合にゴミ出しをめぐるトラブルなどのほかに、生活習慣が異なる外国人居住者とのトラブル(上記の騒音のほかにも、管理費を払わない、民泊のように不特定多数の他人に又貸し宿泊させるなど)といった新たな問題も発生している。また、グループホームの分譲マンションへの入居を巡り、管理組合とグループホーム運営主体との間で、訴訟沙汰となった例もある[21]

子育て

マンションは子育てを行っている世代の入居者も多いが、成長期の子どもは立体的なものに対する感覚が未発達であり、高いところに住むという意識が薄い。建築基準法上では、ベランダの手すりの安全上必要な高さは110cm以上とされているが(建築基準法施行令第126条)、これでは子どもの転落事故に発展することもある。

日本では近年、自治体によって「子育て支援マンション」に関する条例を制定する例が増えている。多くの場合実態はさまざまであるが、多くは一定の基準を満たすことで「子育てマンション」と認定し、結果としてマンションの資産価値が上がるというものである。基準としては、共用部分にキッズルームを設けるなどがある。

自動車

上述のごとく、概して駐車場が不足しているマンションは多く、周辺にも手頃な駐車場が存在しない場合、新たに車を所有しようと考える居住者は、駐車場の利用が空くのを待つ順番待ちに加わることになる。需給の差が大きかったり入れ替わりの速度が遅いと、空き待ちの状態で数年以上待たされることも生じうる。ただし基本的には、自治体などが開発業者に対してマンションの戸数の一定割合の駐車場を設置する義務を課している。最近では自動車の所有にこだわらない人も増えた。このためマンション管理組合がカーシェアリングを運営、マンション付設の駐車場にその車を置き、多くの住民が車を所有せずして手軽に車を利用できるということを特徴として打ち出すマンションも出てきた。


注釈

  1. ^ マンションには様々な階層のものがあるが、低層:2階以下、中層:3-5階、高層:6階以上、消防法で規定の31m超とすることが多いという。さらに高層には超高層マンションという概念もある(『マンション学事典』65頁)。
  2. ^ 江東区の「マンションラッシュ」事例は顕著な事例として代表的に取り上げた。日本では2000年から2005年頃にかけて各地で発生し、個別事例の詳細は本記事では割愛する。
  3. ^ 日本の場合、マンション標準管理規約では「建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない程度に復元するのであれば」総会の普通決議で可能としている(単棟型第47条コメント)。
  4. ^ 国土交通省作成のマンション標準管理規約では「マンションの住戸の数に比べて駐車場の収容台数が不足しており(中略)という一般的状況を前提」としている(単棟型第15条コメント)。
  5. ^ 不動産鑑定評価基準でも建物や環境、立地というハード面と建物・敷地に関する権利に関する事項が重視されている(『新・要説 不動産鑑定評価基準』293-296頁)。
  6. ^ 売れ残りにより中古扱いとなる場合もある。
  7. ^ 建替え決議の要件として様々な要件を規定するという立法例は韓国にもある(不動産適正取引推進機構『諸外国におけるマンション建替え法制』)。

出典

  1. ^ a b 不動産協会『日本の不動産業』2010年版 10頁[リンク切れ](※2020年版には当該記載なし)
  2. ^ 不動産公正取引協議会連合会『不動産の公正競争規約』[リンク切れ]不動産の表示に関する公正競争規約施行規則3条(物件の種別)
  3. ^ 国土交通省『建築動態統計調査』「用語の定義」9頁(2021年5月3日閲覧)
  4. ^ 国土交通省・分譲マンションストック数(平成21年末現在)2021年5月3日閲覧
  5. ^ 中高層共同住宅標準管理規約の改正について 国土交通省(2004年1月23日)2021年5月3日閲覧
  6. ^ "「全員賛成」要件緩和へ 集合住宅の再開発 3分の2で可能に"『中日新聞』朝刊2015年12月28日10版(総合面3ページ)
  7. ^ a b c 湯川利和『まもりやすい集合住宅』学芸出版社、2001年
  8. ^ 小玉徹・大場茂明・檜谷美恵子・平山洋介『欧米の住宅政策』ミネルヴァ書房、1999年
  9. ^ 原田純孝・広渡清吾・吉田克己・戒能通厚・渡辺俊一『現代の都市法』東京大学出版会、1993年
  10. ^ 『マンション学事典』17頁
  11. ^ 第52回“マイホームプア”からの脱却「200年住宅ビジョン」の中身を検証する:住宅情報[リンク切れ]日経住宅サーチ(2010年11月7日閲覧)
  12. ^ ホームページ判例集最高裁判所不動産トラブル事例データベース(制作:国土交通省/運営:不動産適正取引推進機構インターネット等でのマンション建設反対と名誉毀損
  13. ^ 江東区:いただいたご意見と回答-豊洲の課題山積[リンク切れ]マンション急増対策の現状と課題[リンク切れ]
  14. ^ 『新・要説不動産鑑定評価基準』251頁
  15. ^ 快適空間を創るコンクリート[リンク切れ]大成建設 (2010年6月5日閲覧)
  16. ^ 高強度・超高強度コンクリート[リンク切れ]日本建築構造技術者協会(2010年6月5日閲覧)
  17. ^ アメリカ「高層マンション崩壊」はなぜ起きたのか”. 東洋経済オンライン (2021年6月30日). 2022年8月11日閲覧。
  18. ^ 韓国光州マンション外壁崩落事故は任意設計の変更など「総体的な人災」”. 中央日報 (2022年3月14日). 2022年8月11日閲覧。
  19. ^ 『マンション学事典』388-406頁
  20. ^ マンションの騒音トラブルはどう対処する? スーモ(2021年5月3日閲覧)
  21. ^ グループホームのマンション利用「管理規約違反」 大阪地裁判決 毎日新聞 2022年1月20日
  22. ^ 町内会費等の支払いについての対応は - 財団法人マンション管理センター
  23. ^ 諸外国におけるマンション建替え法制 不動産適正取引推進機構(2021年5月3日閲覧)
  24. ^ 藻谷浩介『ニッポンの地域力』日本経済新聞出版 2007年9月
  25. ^ 【防災ニッポン】マンション『読売新聞』朝刊2021年4月18日(特別面)






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