マラウイ 経済

マラウイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/10 03:11 UTC 版)

経済

マラウイの経済の中心であるブランタイヤ
リロングウェの工芸品市場

通貨はマラウイ・クワチャ(クワチャ、クワッチャ、kwacha,Mkw,M.K)。補助通貨としてタンバラが存在し、1マラウイ・クワチャ=100タンバラである。また、中央銀行マラウイ準備銀行である。2006年には世界銀行の統計によれば8%台の経済成長を遂げたが、依然として世界最貧国の一つである。世界銀行によると、2014年の1人当たり国民所得は250米ドルで、世界最下位である(2022年には640米ドルまで上昇したが、この年のデータのある国では依然下から9番目である)。[26]

産業

主要産業は農業であり、人口の84.5%(1998年)が第一次産業に従事している[9]が、ほとんどが天水農業であるために生産性が低く、また気候変動に収穫が大きく左右される。主な作物としてはトウモロコシサツマイモ(世界生産量2位の6.4%、2019年)が全土で広く栽培されるが、自給作物としての性格が強い。商品作物として最も有力なものは葉タバコで、2013年には総輸出の46.6%を占める最大輸出品となっていた。このほか商品作物としては、砂糖(総輸出の9.5%、2013年)、(総輸出の7.1%、2013年)、落花生(総輸出の5.0%、2013年)などが生産されている[9]。主力作物のタバコに頼る率が高い上に禁煙運動などによって先行きに不安があるため、商品作物の多角化が進められ、マカダミアナッツなどいくつかの小規模な輸出作物が開発された[27]。マカダミアナッツは日本向け輸出の50.4%(2014年)を占めており、42.5%を占める葉たばことともに日本向けの主力商品となっている。ただし対日貿易はマラウイからの輸出が輸入の3分の1以下であり、マラウイの大幅な貿易赤字となっている[9]。可耕地の多くが農地とされているため牧畜はあまり行われていない[28]

一方でマラウイは鉱産資源に恵まれていない。わずかに石灰石と少量の石炭が採掘されているのみである[29]。2009年には北部カエレケラでウラン鉱山が開発され、2013年には総輸出の11.3%を占めるまでに成長した[9]ものの、2014年に価格低迷によって休山に追い込まれた[30]

マラウイは雨量が多いため豊かな森林も広がっていたが、農地の開墾や燃料(薪炭)用の伐採などによって速いテンポで森林減少が続いている[31]

上で述べるように降水量は少なくはないが年較差が激しく、灌漑設備も整っていないため旱魃に見舞われやすい。2005年には旱魃などのため収穫量が激減し、国際連合世界食糧計画などが援助を行った。2005年10月、ムタリカ大統領は食糧危機に対し緊急宣言を行った。2016年にも旱魃に襲われ、大きな被害を出した[32]

傍ら洪水に見舞われることも少なくなく、2019年には主に南部で100万人近くが被災する大規模な水害がおきた[33]

インフラ整備

90%の地域には未だ電気が通っていない。発電はシーレ川などマラウイ湖の流出・流入河川における水力発電に依存しており、2012年には発電量の89.1%が水力発電によって占められた[9]。このため、特に乾季は電力不足や停電が深刻である[34]

2001年にウィリアム・カムクワンバが独力で発電用の風車を完成させたことは、マラウイ中、さらには全世界から強い関心を集め、自伝である「風をつかまえた少年」は2018年には映画化され、2019年には日本でも公開された[35]


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