ポリプロピレン ポリプロピレンの概要

ポリプロピレン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/07/25 23:22 UTC 版)

ポリプロピレン
識別情報
CAS登録番号 9003-07-0
日化辞番号 J203.594D
ChEBI CHEBI:53550
RTECS番号 UD1842000
特性
化学式 (C3H6)x
外観 半透明 固体
密度 0.855 g/cm3, 非晶
0.946 g/cm3, 結晶
0.90 - 0.92 g/cm3, 成型品
融点

~ 165 °C

への溶解度 0
危険性
主な危険性 可燃性
NFPA 704
NFPA 704.svg
1
0
0
引火点 >300 °C
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
PPの識別表示マーク(米国プラスチック工業協会英語版による)

2011年の全世界の生産能力、生産実績、総需要は、おのおの62,052千トン、50,764千トン、49,366千トンであった[1]。一方、2012年の日本国内総需要は、2,297,562トンであった。同年の生産・輸入・輸出は、おのおの2,390,256トン(415,809百万円)、302,133トン(51,258百万円)、308,229トン(41,035百万円)であった[2]

構造と物性

立体規則性

アイソタクチック (上) とシンジオタクチック (下)

立体規則性は、ポリプロピレンの構造と物性を理解する上で非常に重要な概念である。隣り合うメチル基(右の図中のCH3)の相対的配置が最終ポリマーの結晶形成に強く影響を与える。なぜなら、各メチル基が空間配座を決めるからである。

立体規則性の違いにより、アイソタクチック(イソタクチック)、シンジオタクチックアタクチックの立体規則性(タクティシティー)の異なったポリプロピレンが合成される。

アイソタクチックとは、不斉炭素が同じ絶対配置を持つような構造である。具体的には、プロピレン側鎖のメチル基がすべて同じ方向を向いていてかつプロピレンが頭-尾結合している構造である。一方、シンジオタクチックとは、不斉炭素の絶対配置が交互に並ぶ構造である。絶対配置がランダムな構造をアタクチックという。アタクチックポリマーは通常結晶化しない。

大部分の工業的に入手可能なポリプロピレンは、結晶性のアイソタクチックポリマーを主成分とし、0.5から2%程度のアタクチックポリマーを含んでいる。アタクチックポリマーは、キシレン等の溶媒に可溶であるので、この性質を用いて市販のポリプロピンから分離することが可能である。

タクティシティーは、13C-MNR(Nuclear Magnetic Resonance: 核磁気共鳴分光法)を用いてメチル基メソ配置(隣り合うメチル基が同側)と ラセモイタリア語版配置(隣り合うメチル基が反対側)の分率を測定することにより得られる。

結晶構造

アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンは、結晶性の樹脂である。

アイソタクチックポリプロピレンの結晶構造は、3/1螺旋鎖を基礎とする、α晶、β晶、γ晶、スメクチック晶などの結晶構造をとることができる。支配的な結晶構造は、α晶(単斜晶)であり、これは、αI(空間群C2/c)とαII(空間群P21/c)に分けられる。α晶は、ラメラ構造が特異であり、親ラメラにほぼ直角方向に娘ラメラが成長したクロスハッチ構造を形成する。

β晶は、六方晶でありラメラ構造は通常のα晶のようなクロスハッチ構造はとらない。

γ晶は、三斜晶である。通常工業的に用いられる加工条件では、発現しない。

スメクチック晶は、工業的には、フィルム成形での急冷によって現れる。

シンジオタクチックポリプロピレンの結晶構造は、8/1螺旋鎖を基礎とする斜方晶である。

共重合

ポリプロピレンは、コモノマー(主としてエチレン)との共重合の形態において3種に分類される。すなわち、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーである。

ホモポリマー

ホモポリマーは、プロピレンの単独重合体である。プロピレン連鎖移動剤としての水素のみを用いて重合する。上述の立体規則性のほか、分子の一次構造の違いは、末端のメチル基の挿入による違いによりn-ブチル基あるいはi-プロピル基になる。メタロセン触媒により得られるポリマーでは、2,1挿入や1,3挿入により見かけ上エチレンが共重合された構造となる。

アイソタクチックポリプロピレンのDSC(Differential Scanning Calorimeter: 示差走査熱量計)によって測定される融点は、約165℃である。(一方、平衡融点は、187.5℃とされる。)融点は、タクティシティーが高いほど向上する。

ランダムコポリマー

ランダムコポリマーは、エチレンを通常4.5重量%以下を共重合体中に含有する。エチレンにさらにブテン-1を共重合した三元共重合体(ターポリマー)も工業的に入手可能である。 プロピレンブテン-1の二元共重合体(エチレンを含まない)も工業的に入手可能である。

「ランダム」とは、統計的にランダムであるということを必ずしも意味しない。エチレンのポリプロピレン主鎖中の分布(ランダムネス)は、触媒の種類によって異なる。

必ずしもすべての分子量分画において、エチレンの分率が等しいという訳ではなく、低分子量鎖と高分子量鎖では、エチレンの含有率が異なっている。すなわち、エチレン含有量に分布(共重合組成分布)が存在する。メタロセン触媒を用いて得られるポリマーは、固体触媒を用いた場合より共重合組成分布が狭く、均一である。

ランダムコポリマーは、ホモポリマーより結晶性が低く、透明で、靭性に優れ柔軟なポリマーである。ランダムコポリマーの透明性は、ポリスチレンアクリル樹脂などの非晶ポリマーほど透明ではない。

コモノマー(共重合されるモノマー)の含有率が多いほど融点が低くなる。

ブロックコポリマー

ブロックコポリマーは、インパクトコポリマー、異相共重合体(heterophasic copolymer)とも呼ばれる。これは、ホモポリマーの重合に続き、後続の反応槽でエチレン共重合されたエチレン-プロピレン重合体を含有する組成物を意味する。ブロックコポリマーは、ホモポリマーの「海」の中にエチレン-プロピレン重合体の「島」が浮かぶ構造(海島構造)をしている。この「海島構造」は、エチレン-プロピレン重合体のエチレン分率、分子量およびホモポリマーの分子量により制御可能である。

ポリプロピレンにおける「ブロック」の語は、特に断りのない限り通常の「ブロックコポリマー」を意味しない。すなわち、ホモポリプロピレン連鎖とエチレン-プロピレン共重合体連鎖が化学的に結合されていることを意味しない。

エチレン-プロピレン共重合体の含有率を40-50重量%あるいはそれ以上に高くしたブロックコポリマーをリアクターメイドTPO(ThermoPlastic Olefin)あるいは、リアクターTPOまたは、単にTPOと呼ぶことがある。

ブロックコポリマーはホモポリマーより耐衝撃性に優れる。ホモポリマーより透明性に劣る。

分子量

MFR(Melt Flow Rate: メルトフローレート)が、PPの分子量の指標となる。MFRが高いほど分子量が小さい。溶融した原材料が成型時にどの程度良く流れるかを表すのに役に立つ。MFRの高いPPは、金型への充填が容易なため射出成形に適しており、MFRの低いPPは、押出機のダイから出た溶融樹脂が垂れにくいため押出成形に適している。MFRが高くなると耐衝撃性などの物性が低下する。

単独重合体、共重合体ともにその分子量は、連鎖移動剤として作用する水素の濃度によって制御される。また、同じ水素濃度であっても触媒によって水素の応答が異なるため、同じ分子量を与えるとは限らない。

分子量のより基本的な指標は、固有粘度(IV: Intrinsic Viscosity)であり、ポリプロピレンの場合は、通常はデカリン(デカヒドロナフタレン)またはテトラリン(テトラヒドロナフタレン)溶媒中で測定される。

分子量分布

分子量分布も重要な指標である。分子量分布は、GPC(Gel Permeation Chromatography: ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定される。

分子量分布が広いと射出成型品の剛性は、分子鎖の配向により向上するが、「そり」は増大する傾向にある。

分子量分布を制御する方法は、主として3種類ある。一つは、2つ以上の重合槽または重合領域を用い異なった重合条件を適用することにより分量分布を広げる方法。もう一つは、広いまたは狭い分子量分布を与える特性を持った触媒を用いて重合する方法、さらには、有機過酸化物を用いてポリプロピレンの分子切断を行い分子量分布を狭くする方法である。いずれも、工業的に広く用いられている。

化学的性質

耐薬品性

アルカリ沸騰水鉱物油など多くの薬品に対して侵されないという優れた耐薬品性を有している。

劣化

重合されたままのなにも添加されていないポリプロピレンは、空気中の酸素により酸化されやすい。生成された三級炭素ラジカルは、さらに酸素と反応してヒドロペルオキシドを生成するなど連鎖的に劣化反応がおこる。高温下では酸化劣化を起こすため成型時には、特に問題となる。このため劣化を防ぐために抗酸化剤が添加される。すなわち、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、フォスファイト、チオ化合物を添加することで安定化される。 屋外の使用においては、太陽光紫外線(UV)照射による分子鎖の切断による劣化が避けられない。このような用途にはUV吸収剤(ベンゾフェノンやベンゾトリアゾールなど)が必ず添加される。カーボンブラックもUV吸収剤として作用する。

表面特性

表面自由エネルギーが低いため接着性、印刷性に劣る。印刷する場合には、表面処理(コロナ処理)などを行った後、印刷を行う。











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