ポリテトラフルオロエチレン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/28 08:07 UTC 版)
安全性
ポリテトラフルオロエチレン自体は化学的に不活性であり毒性はない。しかし、約260°Cに達すると劣化し始め、約350°C以上になると分解し、500℃以上に加熱すると有毒なポリマーガスが発生する可能性が報告されているので注意が必要である[4][5]。このポリマーガスは、人間に対してはインフルエンザのような症状(ポリマーガス熱)を引き起こす可能性が報告されている[6]。
これをコーティングした調理器具を考えた場合、調理用の油脂・油・バターは約200°Cで焦げ始め、煙を生じる。また、肉類は通常200 – 230°Cで揚げるため、通常そのような高温にしてしまうことはない。しかし、もし空のままで加熱しているのに気づかなかった場合、ポリテトラフルオロエチレンが劣化し始める温度以上に調理器具が加熱される可能性が生じる。いずれにせよ高温で調理する場合は、鉄もしくはステンレスの器具を用いるのが良い。
1959年当時の研究では、コーティングされたフライパンの空焚きによって発生する煙の毒性は、通常の調理用油から生じる煙に比べて低いことが示された[7]。
小動物・小鳥への影響
小鳥などを飼育している環境下では、煙が小動物に致死的な影響を与えるため使用してはならないと、同加工された調理器具などに注意書きがなされている。
PFOAの使用について
2005年、アメリカ合衆国環境保護庁の科学諮問委員会は、テフロンを製造する過程で使用するペルフルオロオクタン酸が「発癌性物質の可能性が高い」とした[8]。かつて調理器具などにPFTEをコーティングする際に、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)が使用されており、社会問題になった。PFOAを製造しているデュポン社は、様々な訴訟を受け、2015年以降この化合物を99.9%製造プラントから放出しないことに合意した[9]。この合意は、調理器具にPFTEをコーティングする際に使用されるPFOAだけではなく、食品パッケージ、衣類、カーペットなどの製品にも適用された。なお研究では、調理器具上に残存PFOAは検出限界以下であることがわかっている[10]。また、2015年以降には全世界的にPFOAの使用が禁止されたため、現在の調理器具には使用されていない[11]。
注釈
- ^ そのため、この分野の商品説明では「テフロン」の名称が一切使用されず、もっぱら物質の略称である「PTFE」などと表記される。
出典
- ^ 「テフロン™発見と技術革新」 三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社
- ^ フッ素樹脂ランド 『フッ素樹脂(テフロン)の低摩擦性』
- ^ 原子力百科事典ATOMICA 高分子材料の放射線劣化と改質II (08-04-02-13)
- ^ Higgins, Robert P. (1965). Robert P. Higgins Papers : field data, Tobago, USSR, South Pacific Ocean, 1965, 1968, 1986, 1989, 1991. [s.n.]
- ^ デュポン, Key Questions About TeflonR[1], 2007年12月3日閲覧。
- ^ デュポン, Key Questions About TeflonR[2], 2007年12月3日閲覧。
- ^ Dale Blumenthal. “Is That Newfangled Cookware Safe?”. アメリカ食品医薬品局. 2006年5月20日閲覧。
- ^ “Perfluorooctanoic acid human health risk assessment review panel”. アメリカ合衆国環境保護庁. 2005年5月20日閲覧。
- ^ Juliet Eilperin (2006年1月26日). “Harmful PTFE chemical to be eliminated by 2015”. ワシントン・ポスト 2006年9月10日閲覧。
- ^ Washburn, Stephen T.; Bingman, Timothy S.; Braithwaite, Scott K.; Buck, Robert C.; Buxton, L. William; Clewell, Harvey J.; Haroun, Lynne A.; Kester, Janet E. et al. (2005-06-01). “Exposure Assessment and Risk Characterization for Perfluorooctanoate in Selected Consumer Articles” (英語). Environmental Science & Technology 39 (11): 3904–3910. doi:10.1021/es048353b. ISSN 0013-936X .
- ^ “テフロン加工フライパンの有害性、危険性の誤解と正しい使い方を解説”. さきまる (2022年5月23日). 2023年7月21日閲覧。
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