ヘルメット 乗車用ヘルメット

ヘルメット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/28 11:37 UTC 版)

乗車用ヘルメット

乗り物に乗る時に用いられるヘルメットである。乗員が障害物や地面にぶつかる時の運動エネルギーを吸収、また、対貫通防護により頭部の傷害を防ぐためのものである。フォークリフトなどの場合は作業用のものが用いられている。

オートバイ用ヘルメット

オートバイ用ヘルメット。左:ジェット型、中央:フルフェイス型、右:フリップアップ型

オートバイの乗車中は法令でヘルメットを着用することを義務づけている国や地域が多く、オートバイ用の製品には強度や保護性能に規格が定められている。

世界的に(ヨーロッパでも)、ライダーたちの間では、SHOEIARAIのヘルメットが高い評価を得ていて、レースでも大半を占める。ARAIのヘルメットは転倒時に道路表面などにひっかかったりして首を痛めたりしないように突起物を極力減らし卵型であることをポリシーとしている(そのかわり、外見がとても保守的)が、SHOEIは新たな機能や斬新な外見、表面のパーツ(小さな突起物)を積極的に採用する傾向がある。

自動車用ヘルメット

自動車用フルフェイス形ヘルメット(フォーミュラニッポン

自動車モータースポーツにおいても、事故や火災から頭部を守るためにヘルメットの着用が義務づけられており、公式競技やそれに準ずる競技、その他主催者が指定するイベントでサーキットなどを走行するには、国際的には国際自動車連盟(FIA)、日本では日本自動車連盟 (JAF) が定める競技規格ヘルメットの装着が必要になる。これ以外の目的でサーキットなどを走行する場合でも、低速の体験走行やパレードのような危険が予想されない場合を除き、オートバイ用を含めた何らかの規格に適合するヘルメットの装着が必要である。

F1など乗員の頭部が外部に出ている場合はオートバイ用のフルフェイスヘルメットに似た形状である(二輪用に比べ上下方向の視界の広さが必要ないため、眼の開口部が細長くなっている)。通常の車両の場合は顔が直接外気に曝されることがないため、ジェット形が使用される場合もあるが、この場合、火災から顔面を守るために、耐火繊維製のフェイスマスクを併用することが多い。ラリーなど、コドライバーとの会話が必要な競技では、インカム(ヘッドセット)が組み込まれているヘルメットが使われる。

オートバイ用のヘルメットと異なり、自動車競技用ヘルメットは耐火性能も重視されるため、材質が工夫されるほか、開口部は小さく、火炎の侵入を防止するための鼻当てが備えられる(逆にオートバイ用では、自動車競技用ほど耐火性能は重視されない)。また、オートバイ用は歩行者などへの衝突を考慮して外面に金属部品を用いないが、自動車競技用ではこの問題は無いため金属部品が使用される。そもそも規格自体が異なるため、自動車用ヘルメットをオートバイに用いた場合は法的な保護を受けられない可能性もある。2010年代以降は、頚椎部の保護を目的とするHANSとの接続のための端子(HANSアンカー)を備えることも求められるようになった。

警察官の所属部署(交通機動隊高速道路交通警察隊、警察署の事故処理車など、自動車警ら隊では被らない)によってはパトカー乗車中にもヘルメットをかぶっている。

自転車用ヘルメット

ロードレース
競輪

オーストラリア、カナダ、フィンランド、アイスランド、イスラエル、スウェーデン、ニュージーランドと、アメリカの37の州で自転車乗車時のヘルメット着用が義務化されている。アメリカの場合、オートバイよりも自転車の方が着用義務が厳しい。

日本では2008年6月の道路交通法改正で13歳未満の児童幼児のヘルメット着用が保護者の努力義務となった[3]。また、同年4月から京都府では、自転車に同乗する幼児のヘルメット着用が条例で義務付けられている[4]。法的にそれ以上の着用義務はないが、主にサイクルスポーツでヘルメットが使われている。安全性の規格としてSG規格がある他、ロードレースに出場するにはJCF(日本自転車競技連盟)認定のヘルメットを着用する必要がある。

一般的なものは発泡スチロール成形のインナーシェルに薄いプラスチックのアウターシェルを被せており、転倒の際にはこれらを破損させる事で頭部への衝撃を緩和する。全体に通気用の穴が開けられているが、この構造は耐貫通性の基準を満たしていないためオートバイ用ヘルメットとしては認められない。

2007年に献体による自転車用ヘルメットの側面衝撃実験を行ったところ、側頭部を覆っていない八品目中七品で側頭部への接触(うち一つで骨折)が確認された[5]

マウンテンバイクでも同様のヘルメットを使う事は多いが、マウンテンバイク向けとして保護面積を増やしたものも使われている。また、ダートジャンプ等の危険度が高い種目ではABS樹脂のシェルを持つスケートボード用と同様のものが使われ、本格的なダウンヒルではFRPのシェルで頭部を完全に保護するフルフェイス形が使われる。

通学用ヘルメット

自転車通学を認めている日本の小学校中学校高等学校では、自転車での登下校時にヘルメット着用を定めている場合が多い。特に中学校では自転車通学する人も多くヘルメットを付けている人も多い。東海地震に係る地震防災対策強化地域などでは徒歩通学の小学生にも登下校時にヘルメットを着用させている。構造的には保安帽と大差ないものと、自転車用・乗車用ヘルメットの基準を満たしているものもある。多くは前面に校章のシールなどを付けている。

乗車用ヘルメットの使用限度

ヘルメットは製造後時間が経つにつれ、シェルや衝撃吸収ライナーが劣化してくる。見た目での劣化状況は分かり辛いが、新品購入時よりも緩くなれば寿命の目安とされる[6]。日本のヘルメットメーカー二社は北米市場で購入後五年、製造後七年の品質保証を付けて販売しているが[7]、日本市場ではSGマークの表示有効期間[8]が乗車用ヘルメットでは使用開始後(購入後)三年となるため、期限内での交換を推奨している[9]

また、ヘルメットは衝撃に対して潰れることで頭部を保護しているため、一度でも強く衝撃を受けたものは外見上大きな損傷が見られなくても保護能力を失っており、交換が必要になる。

製造業者

日本

日本国外

  • アンサーレーシング
  • ヴェマーヘルメット
  • AGV
  • APCシステムズ
  • AXO
  • MSR
  • KBC
  • シンプソン・パフォーマンス・プロダクツ
  • ジビ
  • シャーク
  • シューベルトヘルメット
  • ジロ
  • Airoh
  • Suomy
  • ニューマックス
  • カバーグヘルメット
  • FMヘルメット
  • クラフトヘルメット
  • ウベックス
  • スコーピオン・スポーツ
  • スパークス
  • スパルコ
  • S.el.ev
  • パーツ・アンリミテッド
  • ダムトラックス
  • トロイ・リーデザイン
  • ノーラン
  • ライズアウトフィッターズ
  • BMW
  • ベルヘルメット
  • VCAN
  • フォックスレーシング
  • フライレーシング
  • ホンジンHJC
  • XPEED
  • モモ
  • ワン・インダストリーズ
  • レーザー
  • ロックハードヘルメット
  • ダビダ
  • レヴィオール
  • アクマヘルメット
  • バンディット
  • シロヘルメット
  • ルーフインターナショナル
  • NZI
  • CMS
  • IXS
  • ビエッフェ
  • モモ
  • AFX
  • ダイネーゼ
  • P.H.I.
  • 東和興実業
  • 金泰公司
  • オズベ
  • S.Y.K.オートパートインポート・エクスポート
  • エアロカンパニー
  • ハンミグローバル
  • 高靖工業
  • グリフィン
  • クロムウェルヘルメット
  • スティーロ
かつて製造していたメーカー

注釈

  1. ^ 小説家のフランツ・カフカは、労働保険関係の職場にいた際、工場視察などでは安全のため軍用のヘルメットを着用した。これが作業用ヘルメット普及のきっかけになったとする説がある。フランツ・カフカ#保険局での仕事
  2. ^ “フリッツ”とはドイツ人一般への呼び方にちなむ。アメリカ人を“ジャック”、ロシア人を“イワン”と呼ぶのと同様。
  3. ^ 近年各国の消防吏員用のヘルメットもつばがやや広く突き出し耳を覆うデザインが主流となり、旧ドイツ軍様式のヘルメットとデザインが酷似する傾向が強い。

出典

  1. ^ 日本法令外国語訳データベースシステム  労働安全衛生法Industrial Safety and Health Act 別表第二参照。
  2. ^ PC-5 | 安全を創造し 未来を守る タニザワ - タニザワ
  3. ^ 道路交通法第63条の11
  4. ^ 京都府自転車の安全な利用の促進に関する条例-京都府ホームページ
  5. ^ Depreitere B, Van Lierde C, Vander Sloten J, Van der Perre G, Van Audekercke R, Plets C, Goffin J. "Lateral head impacts and protection of the temporal area by bicycle safety helmets." J Trauma. 2007 Jun;62 (6):1440-5. PMID 17563663
  6. ^ SHOEI HELMET SIZING, HANDLING, AND CARE(英語)
  7. ^ Shoei F.A.Q.(英語)HELMET WARRANTY(英語)
  8. ^ SGマーク Q&Aコーナー
  9. ^ ヘルメットのご使用にあたって (SHOEI) FAQ (ARAI)
  10. ^ 本会所定の服色及び帽について”. JRA. 2010年10月19日閲覧。
  11. ^ 美浦トレセンでの調教”. JRA. 2010年10月19日閲覧。
  12. ^ 安全な騎手用のヘルメットとは?”. JRA競走馬総合研究所. 2010年10月19日閲覧。
  13. ^ ケンタッキー州、騎手のヘルメット規制を撤廃”. 競馬国際交流協会. 2010年10月19日閲覧。
  14. ^ ケンタッキー州、騎手のヘルメットをルール化”. 競馬国際交流協会. 2010年10月19日閲覧。
  15. ^ 植木通彦のボートレースの秘密 ヘルメット - ボートレース公式YouTube・2019年12月6日
  16. ^ 衝撃的シーンで再び高まる“投手用ヘルメット”着用機運 2年前はダサくて広まらず
  17. ^ アーカイブされたコピー”. 2013年5月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年8月23日閲覧。
  18. ^ アーカイブされたコピー”. 2014年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年3月27日閲覧。
  19. ^ File:ROK_marines_with_K2_rifles_DM-SD-03-14422.jpg
  20. ^ マルチメディア共産趣味者連合






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