プロジェクタ プロジェクタの種類

プロジェクタ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/08 02:19 UTC 版)

プロジェクタの種類

CRTプロジェクタ

図1:CRT方式のプロジェクタ
図2:前面投射型と背面投射型

CRTプロジェクタは、CRTに表示された画像を、光学系を使って拡大し、投影するプロジェクタである。大まかな構造は図1のようになる。3つの、3原色のモノクロCRT上に画像を表示し、それを拡大レンズで拡大し、スクリーン上に投影する。

CRTプロジェクタは、スクリーンの前面から投影する方式と、スクリーンの背面から投影する方式がある。図2に両者の大まかな概要図を示す。前面投射型は大きな場所での投影に使われるが、この方式は、液晶プロジェクタの進歩にともない、あまり使われなくなってきている。一方、背面投射型のプロジェクタは、家庭用の大型テレビの1つとして利用されている。リアプロとも略される。ただし、リアプロも、CRTから液晶への移行が進んでいるため、全体として、CRTプロジェクタは衰退の方向にある

CRT方式は、他の方式にくらべ、以下の利点がある。

  1. 動きが滑らかで残像も少ない
  2. 画面が発光しているため、明るい部分の輝きがよい
  3. 解像度を変更しても画面にギザギザがでることがない

しかし、以下のような欠点もある。

  1. CRTの焼き付きが発生する
  2. 蛍光体や電子銃の寿命がある
  3. 構造上大きくなり、重い
  4. 消費電力が大きい

また、大型のプロジェクタは、ブラウン管が地磁気の影響を受けることから、設置する場所や方角が変わるたびに各発光管の映像調整をする必要がある上に、数十万円~数百万円(当然、明るい映像を投射できるものほど高価である)という価格のため、一般家庭にはほとんど普及せず、行楽施設や企業向けといった限られた用途に利用される程度である。特に三原色に分解された映像を、スクリーン上で一つの映像に合成するため、任意の位置にスクリーンを設置するタイプでは、三色別々に存在するレンズのズームとピントとをそれぞれ調整した上で、ブラウン管上に磁気の影響によって現れる映像の歪みを調整しなければ、きれいな映像を楽しむことはできない。

この形式のものは長時間投射しても耐えうるため、2010年程度まではゲームセンターの50インチ前後の大画面ゲーム機に多く採用された。走査線を利用した安価な光線銃・ライトペンが利用できるメリットもあり、ガンシューティングゲームに多く採用された。また飛行機内などにも多く採用されている。CRTプロジェクタでは、映像のメンテナンスを怠るケースも多く、画面の隅などの映像がひどくぼやけたり色ズレを起こしているものもしばしば見受けられる。

液晶プロジェクタ

液晶パネルを内蔵し、放電光を利用した非常に明るい光源ランプからの光を透過させ、これをレンズを使ってスクリーン上に拡大投射する。特に三管式プロジェクタのように複雑な調整を必要とせず、大抵はスライド映写機のようにズームとピントさえ調整すればすぐさま利用できるように設計されている。

これらは当初、液晶パネルの光の透過率の低さや、温度変化によって液晶の反応が変化するほか、パネルや光源ランプ、偏光板の寿命が短いことから、映画等の長時間視聴には向かず、短時間の使用に限定されていたが、この問題は最近の機種では解消している。

その一方、液晶パネルのマトリクス表示(方眼紙のマス目を想像してもらいたい)によって画像を表現しているため、解像度が固定であることから、パソコンからの映像信号や一般のテレビ放送やビデオ・DVD等に利用されるNTSC、さらには外国のテレビ受像機に利用されているSECAM/PAL、またハイビジョン等といった広範囲にわたる画面解像度の変更によって生じる差は苦手とするところで、近年では特殊な画像処理チップを内蔵することでだいぶ改善されたとはいえ、異なる解像度の映像信号を入力した場合にシャギーが目立つなどの問題が発生することがある。(なお、これらは一般家庭ではそれらの解像度変更を求める機会がまずないため、あまり気にする必要がないともいえる)

光源に高圧水銀灯などの放電光を利用するため、光源が厳密には固定されておらず、微妙に位置が揺らぐ(アークジャンプ)。一般にはリフレクタ、フライアイレンズ、インテグレータレンズなどの工夫で目立たなくしているが、揺らぎが大きくなると映像の明暗となって現れ、画質劣化の原因となる。ランプの寿命は比較的短く、寿命内であっても色調が変化する。LCDパネルは、ランプよりも長寿命であるものの、(主に偏光板の)劣化により色調が変化し、寿命を迎える。

液晶を利用していることから、液晶プロジェクタにはまれにドット欠けが見られることがある。 通常の液晶ディスプレイと同様に、一部の画素が一定の色に常時点灯しているのが画素欠けしたプロジェクタでは映し出される。

DLPプロジェクタ

DLP」とは「デジタル・ライト・プロセッシング」の頭文字をとった略語で、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いて映画やテレビなどの映像を表示するためのシステムを指す(米国 Texas Instruments 社の登録商標)。1987年、同社のラリー・ホーンベック博士が開発したDMDは、半導体上に独立して動く極小のミラーが約48万~200万個敷き詰められており、このアリの足の大きさにも満たない超極小ミラーにランプ光をあて、鏡に反射した光をレンズを通してプロジェクタのスクリーン、リアプロジェクションテレビの画面に投影する仕組みになっている。

DLPの特徴として、「画像の信頼性・高精細性」「焼きつきや色あせがない」「深みのある濃厚な色彩」「非常に高いコントラスト比」などが挙げられ、スポーツやライブ・アトラクションなど動きの速い動画を高画質再生できる。

各画素が1ビットのデジタルであるため、中間階調を表示するためにはフレーム階調処理を行う必要がある。そのため特に初期のものはチップの動作周波数の限界から、動きの速い動画の場合にカラーブレイキング等の現象を引き起こすことがあった。現在では機器の設計/制御(6倍速駆動のカラーホイールなど)によって目立たなくなっている。

DMDはシリコンチップ上のマイクロミラーを動かすことで成り立っているが、劣化(主に温度条件)により徐々に動作角が浅くなり、結果としてドット欠けが発生する(一般には、LCDパネルよりは長寿命である)。

このほか、固定画素である点や放電系の光源の問題は液晶方式と同様である。

LCOSプロジェクタ

LCOSとはLiquid Crystal On Siliconの略であり、反射型液晶素子のことを言う。透過型LCDが配線の間に画素電極を持つという構造上開口率が低いのに対して、光を反射させる側に配線と電極を持つということで高い開口率を実現する理想的な液晶素子として、半導体や電気機器メーカー各社が古くから開発を行っていた。しかし、量産において歩留まりが悪くコストが非常に高いため、ビジネスとしては成り立たないという理由等で大半のメーカーはLCOS事業から撤退した。量産に成功したのは日本ビクターソニーの2社だけであり、この2社から高級プロジェクタとして販売されている。なお、日本ビクターのLCOSをD-ILA(Directdrive Image Light Amplifier)といい、ソニーのLCOSをSXRD(Silicon X-tal Reflective Display)という。日本ビクターはD-ILA素子の外販も行っており、キヤノンからもD-ILAプロジェクタが販売されている。2008年にキヤノンはLCOSの自社開発を発表している。

液晶の配向膜に無機配向膜を使う(反射型の必然というわけではない)ことにより、透過型液晶にくらべ寿命が長いという特徴がある。ソニーは、印加された電圧によって液晶の反射率を制御するアナログ駆動方式を全製品に採用している。ビクターは、ソニーと同様のアナログ方式に加えて、時分割のオン/オフの回数によって反射率を制御するパルス駆動方式とを製品によって使い分けている。一般的にはアナログ駆動のほうが階調性も豊かで高画質だが、製品化に手間とコストがかかるといわれている。

GLVプロジェクタ

GLVとはGrating Light Valveの略であり、回折現象を利用した反射型表示素子である。アメリカのSilicon Light Machinesが開発したもので、同社からのライセンスを受けたソニー愛地球博にて出展した[1]

レーザープロジェクタ

光源として従来のハロゲンランプやLEDに代わりレーザーを利用する。単色光を光源として使用するため、演色性に優れる。1985年に開催されたつくば博や2005年に開催された愛・地球博で出展された。RGB各色の高出力の半導体レーザーが開発されたことにより、2000年代に入り普及の兆しを見せる。MEMSガルバノメータで走査するため、従来の液晶パネルやDMD方式と比較して光学系を簡略化、小型化することが可能で携帯型のプロジェクタ等の応用が期待される[2][3]


  1. ^ 菊池啓記. "レーザープロジェクター用光変調素子." (2006): 301-306.
  2. ^ 安藤英由樹, 雨宮智浩, 前田太郎、「ARにおける注釈表示のためのウェアラブル・スキャニング・レーザー・プロジェクター(「投影型インタフェース」特集)」『日本バーチャルリアリティ学会論文誌』 2005年 10巻 2号 p.191-199, doi:10.18974/tvrsj.10.2_191, 日本バーチャルリアリティ学会
  3. ^ MP-CD1 SONY


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