ブート IBM PC互換機のブート手順

ブート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/17 10:25 UTC 版)

IBM PC互換機のブート手順

電源投入直後、ないしリセットにより、x86は、まずBIOSの存在する 0xFFFF0 番地のメモリにある命令を実行する(ここはx86を使用するどんなコンピュータでも同じである)。このメモリ位置は(リアルモードでの)システムメモリのほぼ最後尾にあたる。そこにはBIOSの初期プログラムの位置へのジャンプ命令が含まれていて、BIOSに制御が渡る。BIOS初期プログラムは Power On Self Test (POST) を実行して必要な機器が正常に動作するかをチェックする。また、同時にそれら周辺機器の初期化も行う。次にBIOSは事前に設定されたデバイスリストを順にあたって、ブート可能な周辺機器を探す。ブート可能デバイスとは、読み込みが可能で、第1セクタの最後尾に 0xAA55 というワード(ブートシグニチャ)があるデバイスである。

FreeBSDの boot0 MBR の十六進ダンプ

そのようなデバイスが見つからない場合、エラーが発生してブート処理は停止する。BIOSがブート可能デバイスを発見すると、そのブートセクタを 0x7C00 というアドレス(Segment:Offset形式では 0000:7C00 だが、一部のBIOSでは 07C0:0000 を使用)にロードして実行する。ハードディスクドライブの場合、ブートセクタはマスターブートレコード (MBR) と呼ばれ、その内容はオペレーティングシステムには依存しない。MBRのコードはパーティションテーブルを調べてアクティブなパーティションを探す[NB 4]。それが見つかったら、MBRのコードはパーティションのブートセクタをロードして実行する。ブートセクタはオペレーティングシステムに依存することが多いが、その機能はカーネルをロードして実行することである。カーネルはさらに初期化処理を続行する。アクティブなパーティションがなかったり、アクティブなパーティションのブートセクタが不正だった場合、MBRは第二ブートローダをロードして制御を渡す。第二ブートローダは(多くの場合ユーザーに入力してもらって)パーティションを選択して、そのブートセクタをロードする。パーティションのブートセクタは一般にオペレーティングシステムのカーネルをロードする。

一部システム(特に最近のMacintoshMicrosoft Windows)はインテルEFIを採用している。EFI準拠のファームウェアを持つ比較的新しいシステムでは、MBR か GPT のあるドライブからブートでき、標準のMBRブートローダを使わない。また、corebootシステムマネジメントモードを使った過剰に複雑なファームウェア/BIOSを使わずにブート可能である。古い16ビットBIOSインタフェースは一部のx86用OS(Windows 3.1/95/98など)で必要とされていただけだが、そういった古いBIOSシステムをサポートするためブートローダーは16ビットサポートを続けていることが多い[20][NB 5][21]

BIOSとは異なり、UEFI(CSM経由のレガシー ブートではない)はブートセクタに依存せず、UEFIはブートローダー(USBフラッシュドライブまたはEFIシステムパーティション内のEFIファイル)を直接読み込み、OSカーネルはブートローダーによってロードされる。

多くのPCはBIOSチップを搭載していれば、BIOSチップメーカー名、著作権、そのチップのIDなどを起動時に表示する。同時に利用可能なメモリ容量など、そのコンピュータに関する情報も表示する。


注釈

  1. ^ EDSACの場合はロータリースイッチなどによるハードウェアから成る仕掛けからロードされた。
  2. ^ ハインラインは軍時代に無線を扱っているので、そちらからこの語を採った可能性がある。なお、邦題「時の門」は、The Time Gate と改題されて収録された作品集があり、そちらから採ったものと思われる。
  3. ^ : Nicolet Instrument Corporation
  4. ^ MBRに仕様にもよるが、アクティブなパーティションはプライマリパーティションである必要はない。しかし、いずれにしてもブートセクタに適切なコードがあることは必須である。
  5. ^ インテル版Macintoshでは、古いBIOSとの互換モードをファームウェアでサポートしている。
  6. ^ 一部制御ユニットには8台のデバイスしか接続しないが、16台以上を接続するものもある。実際、3830 DASD コントローラはオプションで32台のドライブをアドレッシングする。

出典

  1. ^ pull oneself up by one's bootstraps Wiktionary
  2. ^ Phrase Finder”. phrases.org.uk. 2012年4月7日閲覧。
  3. ^ パラメトロン計算機: Illiacのブートストラップ
  4. ^ Buchholz, Werner (1953). “The System Design of the IBM Type 701 Computer”. Proceedings of the I.R.E. 41 (10): 1273. 
  5. ^ Bootstrap”. Dictionary.com. 2012年4月7日閲覧。
  6. ^ Bootstrap”. TheFreeDictionary.com. 2012年4月7日閲覧。
  7. ^ Oxford English Dictionary. Oxford University 
  8. ^ PDP-11 Peripherals Handbook, DEC, 1975, p.4-25
  9. ^ M792-YB bootstrap diode matrix ROMカードの写真
  10. ^ From Gutenberg to the Internet, Jeremy M. Norman, 2005, page 436, ISBN 0-930405-87-0
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  13. ^ Dunten, S. D.; T. H. Van Vleck (1968-05-03). “BV.1.01 BOS Bootload: boot”. Multics System Programmer's Manual. http://www.multicians.org/mspmtoc.html 
  14. ^ Thompson, Ken; Dennis Ritchie (1971-11-03). The Unix Programmer's Manual (1st edition ed.). オリジナルの2015年2月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150203070922/http://www.cs.bell-labs.com/who/dmr/1stEdman.html 2008年1月7日閲覧。 
  15. ^ Ciaramella, Alberto. "Device for automatically loading the central memory of electronic processors." U.S. Patent No. 4,117,974. 3 Oct. 1978.
  16. ^ File:Apple_1_Advertisement_Oct_1976.jpg Apple Ad, Interface Age, October 1976
  17. ^ Tint”. coreboot. 2010年11月20日閲覧。
  18. ^ FAQ - Why do we need coreboot?”. coreboot. 2010年11月20日閲覧。
  19. ^ Google tech talks - coreboot (aka LinuxBIOS): The Free/Open-Source x86 Firmware”. YouTube. 2012年4月7日閲覧。
  20. ^ Intel Platform Innovation Framework for EFI”. Intel. 2008年1月7日閲覧。
  21. ^ OpenBIOS”. 2012年4月7日閲覧。
  22. ^ a b z/Architecture Principles of Operation. IBM. pp. Chapter 17. http://publibz.boulder.ibm.com/epubs/pdf/a2278324.pdf 2007年4月14日閲覧。 
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  25. ^ Voodoo Envy's Instant-On IOS (powered by Splashtop)”. YouTube. 2010年11月20日閲覧。
  26. ^ Voodoo Envy 133 Laptop vs MacBook Air”. gadgets-reviews.com (2008年7月29日). 2010年11月20日閲覧。
  27. ^ Voodoopc homepage”. 2010年11月20日閲覧。
  28. ^ Brown, Eric (2008年10月3日). “5-second Linux boots on low-powered hardware”. 2013年1月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年11月20日閲覧。
  29. ^ Latitude ON”. YouTube. 2010年11月20日閲覧。
  30. ^ Brown, Eric (2008年11月7日). “Linux boots in 2.97 seconds”. linuxdevices.com. 2012年9月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年11月20日閲覧。






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