フランク・シナトラ マフィアとの関係

フランク・シナトラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/03 02:21 UTC 版)

マフィアとの関係

FBIの調査対象

カルロ・ガンビーノポール・カステラーノなどの「モブ」と呼ばれる側近たちと(1976年/写真提供:FBI)
ラッキー・ルチアーノ

常に表舞台を歩いてきたシナトラだが、その生涯にわたり、地元のニューヨークやシカゴ、ラスベガスのイタリア系を中心としたマフィアとの黒い噂が絶えなかった。

実際にマフィアの大物のサム・ジアンカーナカルロ・ガンビーノラッキー・ルチアーノなどのイタリア系マフィアの歴代の大ボスとの交流があったことが、FBIの資料で公になっており、その資料は合計で2,403ページにも及ぶことから、いかに深く広いつき合いがあったかわかる。特にニューヨークの最高級ホテルであるウォルドルフ=アストリアの住人同士だったルチアーノとは友人だった[17][18]

最初の結婚

1940年代、シナトラはジェノヴェーゼ・ファミリーの副ボスウィリー・モレッティと友人となった。シナトラの最初の妻だったナンシー・バルバートはモレッティと縁のある人物のいとこであった。

『ゴッドファーザー』

シナトラが『地上より永遠に』(1953年)の脇役に抜擢されるまでの有名なエピソードがある。つまり、スランプに陥りカムバックを狙ったものの、映画界における女性スキャンダルが元で役につけなくなったシナトラが「育ての親」であるサム・ジアンカーナに泣きつき、最終的にジアンカーナが裏で「マフィア的に」動いて役に抜擢されたというものである。

このエピソードは後に、イタリア系マフィアの血族を描いた映画、『ゴッドファーザー』で取り上げられ、世間に知られるようになる(映画上ではさすがに実名のシナトラではなく、「ジョニー・フォンテーン」と言う芸名になっている)。また『ゴッドファーザー』では、これ以外にも著名なシナトラにまつわるエピソードがいくつか取り上げられている。

ケネディ家との関係と暗殺事件

左からケネディとフーヴァー、ロバート
「3人の狙撃者」に出演するシナトラ(右端、1952年)

娘のナンシーによれば、ケネディが1960年の大統領選挙に立候補する際、ケネディの父親で、密造酒商売を通じてマフィアと繋がりが深く、禁酒法時代に密造酒製造・販売で財を成してのし上がった過去で有名なジョセフ・P・ケネディが、シナトラの歌手デビュー当時から密接なつき合いがあるイタリア系マフィアの大ボスで、ショービジネス界を裏で握っているジアンカーナに「選挙運動に協力するように頼んでほしい」とシナトラに頼んだと証言している。

シナトラはジアンカーナに協力を要請したほか、その後元ガールフレンドでジアンカーナの情婦でもあったジュディス・キャンベルを、大統領になる前のケネディ大統領に紹介し、実際にキャンベルと女好きで有名なケネディは短期間の間、不倫関係になった。実際にその後ジアンカーナはケネディの大統領選挙の支援を行った。

しかしケネディは上記の様に大統領当選後の1962年に、ケネディ家とジアンカーナをはじめとするマフィアとの関係を怪しんだFBI長官ジョン・エドガー・フーヴァーに忠告を受けたため、マフィアの協力で大統領に当選したこと(さらにキャンベルとケネディが愛人関係であったこと)が表ざたになることを恐れた、ケネディの実弟で司法長官となったロバートが、ジアンカーナをはじめとするマフィアとの繋がりがあるシナトラを露骨に避けた上、この様な事実のもみ消しのために「マフィアを徹底的に取り締まる」と発表し、実際にジアンカーナとシナトラとの関係を一方的に断った。

このような仕打ちに怒ったジアンカーナとシナトラは徐々に反ケネディに傾いて行き、ケネディの死の1年前にその関係は完全に途絶えた。さらにジアンカーナは「ケネディ大統領暗殺事件の黒幕の一人」と言われ、「ケネディ兄弟の暗殺はジアンカーナへの裏切りに対する報復であっただろう」と言われる陰謀論の根拠となっている。実際にジアンカーナがケネディ暗殺をほのめかしているのを、FBIが盗聴で確認している[19]

なおシナトラは、1963年11月22日ケネディ大統領暗殺事件の直後に、1952年にかつて自分が出演した映画「3人の狙撃者」のフィルムを回収して回ったと言われている。そこでのシナトラの役は大統領狙撃未遂の主犯の上官だった。

タブー

これらのことは「公然の秘密」であり、メディアのインタビュアーがマフィアとの関係を尋ねることはタブーとされていて、実際に尋ねてしまった場合はインタビューは即時中断し、そのインタビュアーは二度とシナトラに対するインタビューはできなかった。

なお、有名なニュースアンカーのウォルター・クロンカイトCBSテレビのインタビュー番組の収録の際、番組のプロデューサーにけしかけられてシナトラにマフィアとの関係を尋ねてしまった際には、怒ったシナトラが自らのマネージャーを呼びつけて中座し、インタビューは中止された。その後、シナトラとマネージャー、プロデューサーの話し合いの後に再開し、シナトラより「興行先で興行主がマフィアであると知らず同席することはあった」との説明があったに留まった[20]


注釈

  1. ^ 「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が大ヒットした
  2. ^ 「ハウンドドッグ」などの大ヒットと骨盤ダンスが、センセーショナルに報道された

出典

  1. ^ Rocklist.net...Q Magazine Lists..”. Q - 100 Greatest Singers (2007年4月). 2013年5月21日閲覧。
  2. ^ https://hollowverse.com/frank-sinatra
  3. ^ 「ヒズ・ウェイ」キティ・ケリー著、柴田京子訳 文藝春秋 P.48
  4. ^ Frank Sinatra with Harry James
  5. ^ 「ヒズ・ウェイ」キティ・ケリー著、柴田京子訳 文藝春秋 P.50
  6. ^ Ava Gardner - Actress, Classic Pin-Ups, Film Actress, Film Actor/Film Actress - Biography
  7. ^ 「ヒズ・ウェイ」キティ・ケリー著、柴田京子訳 文藝春秋 P.144
  8. ^ Frank Sinatra and Ava Gardner. AvaGardner.org .Retrieved 2007-01-04.
  9. ^ 「ヒズ・ウェイ」キティ・ケリー著、柴田京子訳 文藝春秋 P.280
  10. ^ 『ピーター・ローフォード―ケネディ兄弟とモンローの秘密を握っていた男』P.342 ジェイムズ スパダ著、広瀬順弘訳 読売新聞社刊、1992年
  11. ^ 『ピーター・ローフォード―ケネディ兄弟とモンローの秘密を握っていた男』P.346 ジェイムズ スパダ著、広瀬順弘訳 読売新聞社刊、1992年
  12. ^ 『ピーター・ローフォード―ケネディ兄弟とモンローの秘密を握っていた男』P.344 ジェイムズ スパダ著、広瀬順弘訳 読売新聞社刊、1992年
  13. ^ 「ヒズ・ウェイ」キティ・ケリー著、柴田京子訳 文藝春秋 P.218
  14. ^ a b フランク・シナトラJr.が急死”. 女性自身. 光文社 (2016年3月17日). 2016年3月17日閲覧。
  15. ^ 「ヒズ・ウェイ」キティ・ケリー著、柴田京子訳 文藝春秋 P.296
  16. ^ 「ヒズ・ウェイ」キティ・ケリー著、柴田京子訳 文藝春秋 P.480
  17. ^ Meet The Real-Life Godfather Of Organized Crime: Charles ‘Lucky’ Luciano” (2019年6月29日). 2019年10月19日閲覧。
  18. ^ LUCKY LUCIANO: Criminal Mastermind” (1998年12月7日). 2019年10月19日閲覧。
  19. ^ 「ヒズ・ウェイ」キティ・ケリー著、柴田京子訳 文藝春秋 P.348
  20. ^ a b 『クロンカイトの世界』ウォルター・クロンカイト著 浅野輔訳 阪急コミュニケーションズ、1999年
  21. ^ http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/frank-sinatra-jr/
  22. ^ Tom Vallance (1998年8月3日). “Obituary: Eva Bartok”. The Independent. 2020年2月12日閲覧。
  23. ^ Associated Press (1998年8月5日). “Eva Bartok, 72, Actress in Films of 50's and 60's”. The New York Times. 2017年5月31日閲覧。
  24. ^ “Eva Bartok”. Variety. (1998年8月17日). https://variety.com/1998/scene/people-news/eva-bartok-1117882434/ 2020年11月3日閲覧。 
  25. ^ “Frank Sinatra's secret love child Deana slams father for refusing to meet her”. Daily Mail Online. (2015年4月30日). https://www.dailymail.co.uk/news/article-3062087/I-don-t-think-man-high-morals-Frank-Sinatra-s-secret-Australian-love-child-slams-famous-father-refusing-meet-says-never-feel-result.html 2020年11月3日閲覧。 
  26. ^ 音楽の巨人たち〜TBSのライブラリーから、50年ぶりによみがえる〜 #1 フランク・シナトラ(1962年)“赤坂・ミカド””. TBSチャンネル. TBSテレビ. 2019年6月4日閲覧。
  27. ^ 音楽の巨人たち〜TBSのライブラリーから、50年ぶりによみがえる〜 #18 フランク・シナトラ(1962年)“日比谷野外音楽堂””. TBSチャンネル. TBSテレビ. 2021年1月31日閲覧。






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