ビリヤード ポケット・ビリヤード

ビリヤード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/27 05:33 UTC 版)

ポケット・ビリヤード

ポケット・ビリヤードpocket billiards)は種目ごとに定められたルールに従ってボールをポケットへ落としていく競技。ポケット・テーブルには四隅と両長辺中央の計6つのポケットが設けられており、ここへボールを落としていく。それぞれのポケットにはネットが張られているものがある。ボールが落ちるとこのネット内に溜まる(pool)ことからプール・ビリヤードpool billiards)(俗にプール)とも呼ばれる。

アメリカでは「ビリヤード」と言えばキャロム・ビリヤードを指すことが多いため、ポケット・ビリヤードについてはプール[注 10]という呼び方がされることがある。日本においてはこのようなネットが張られたポケットはあまり見かけられず、ポケットへ落ちたボールがレール下に備え付けられたドレーンを伝って自動的に一箇所に集められるボール・リターン構造になっているものを見かけることができる。

ロシアン・ピラミッド用のポケット

ポケットの形状は種目や国によって異なることがあり、ロシアン・ピラミッドで利用されるテーブルのポケットは逆ハの字、中国のポケットテーブルはスヌーカーのようにカーブ状になっているものが存在[4]している。また、2008年現在においてプロトーナメントで利用されるテーブルは9フィートが公式サイズ[注 11]となっている。

公式競技にはナインボールエイトボール、ローテーション・ゲーム、ストレートプール(14-1、フォーティーン・ワン)、ワンポケット・ゲームなどがある。ほか、日本人が考案した種目に、ボウリングの採点方式を取り入れたボウラード、サッカーのコンセプトを融合させたFUJIYAMAがある。ボウラードは日本プロポケットビリヤード連盟のプロ認定試験において実技種目として採用されている。FUJIYAMAは1998年頃に開発され歴史が短いものの、世界のトッププレイヤーであるエフレン・レイズがオープン戦に参加した。

ブレイクショット

スヌーカーも含め、ポケットビリヤードではセットの開始時に、複数の的球が決まった形に固めてセットされる。そのままでは的球をポケットすることが困難なため最初のショットはこれを崩す(散らす)ために行われる。これをブレイクショットと呼ぶ。1つの手球で複数の的球を散らす必要があるため、通常のショットよりも非常に大きなエネルギーを手球に与える必要があり、そのためキューやキュー先(ティップ、フェラル)へ大きな力が加わる。そのためティップの劣化が進むためにタッチが変わることを嫌い、ブレイクショットには専用のキュー(ブレイク・キュー)を用いるプレイヤーが多い。ブレイク・キューを個人で所有していないプレイヤーのなかには、ハウスキューで代用する人も多い。また場合によってはティップやシャフトを破損することもある。

  • ボウラードなどはできる限り毎回同じような配置にすることがスコアを伸ばす際有利に働くため、さほど強いショットを行わないことが多い。またナインボールなどでも同様の理由から毎回一定の強さのブレイクを行うプレイヤーもいる。こういったゲームをプレイする場合、あえてブレイク・キューを使用しない人もいる。

ジャンプ・ショット

ジャンプ・ショットとは手球が的球を飛び越えるように放つショットのことである。14-1やワンポケット、スヌーカー競技においてはジャンプショットは禁止されている。

ジャンプ・ショットはキューをやや上方より突き下ろすことで手球をラシャに叩きつけるようにショットし、手球の反発力を利用してジャンプさせる。キューを上から突き下ろすという独特のフォームを取るため、通常よりも若干短いキュー(ジャンプキュー)を使用することが多い。

かつてはそのフォームから、キューのシャフトをバットから取り外し、シャフトだけでジャンプショットを放つプレイヤーが多かった。しかしBilliard Congress of Americaによってキューの長さは最低40インチ(約101センチ)以上と定められ、シャフト単体ではこの長さに足りないため、シャフトに通常のバットよりも短いバットを付け加えたものが、ジャンプキューの始まりと言われている。

各キュー・メーカーよりさまざまなタイプのジャンプキューが発売されており、バットよりもシャフトの方が短いもの、バットの方が短いもの、非分割タイプのもの(ワン・ピース・キュー)、ブレイクキューと兼用のもの(バット部分がさらに分割できる)などがある。

なお、ビギナーが手球の下端を強く突くことで故意にキューミスさせ、手球をジャンプさせるシーンを見かけるが、故意のキューミスによるジャンプはルール上ファウルであることに注意されたい。

  • ドローショットのミスによるミスジャンプはファウルではない(もちろん正しい的球に手球があたり、ノークッションファウルの適用外である必要がある)。

またジャンプさせた手球を狙った的球の上部に当て、その的球をさらにジャンプさせる高等テクニックもある(的球ジャンプ)。

ジャンプキューの使用はナインボールやエイトボールの一部のルールでしか認められていない。例として、WPA主催の世界ナインボール選手権および世界エイトボール選手権では使用可能だが、USオープンIPTAPA・JPA等ジャンプキューが使用できない大会もある。USオープンとAPAでは、レギュレーションを満たすキューによるジャンプショットをすることはルール上問題ない。 アール・ストリックランド等一部のプレーヤーは、高度な技術を必要とするためプレーの妙味であったセーフティの応酬が、誰でも簡単にジャンプショットを可能にするジャンプキューの出現によりつまらなくなってしまったとしてジャンプキューに批判的な立場をとっている。


注釈

  1. ^ 「POOLPLAYER ISABU」(著:山下東七郎)によると、ビリヤードの才能の一つとして「決して揺れない心」と表現されている。
  2. ^ ロバートバーンが自著で語ったところによれば「ビリヤードの要素の大半は精神力と集中力で占められる」としている。ロバートバーン(1999) p.33
  3. ^ 日本では緑や青地のラシャを見かけることがほとんどであるが、赤やベージュといった色も存在する。
  4. ^ ポケットビリヤード用の9フィートテーブルはスレート重量も併せて総重量が400kg程度になる。
  5. ^ 9フィートサイズのポケットテーブルは概ね3枚のスレートで構成される。
  6. ^ 英語ではshotと表現されるが、日本では「打つ」と表現されることは少ない。
  7. ^ キャロム競技では黄色のものを利用している場合もある。また、ロシアン・ピラミッドでは的球が全て白色となっているためバーガンディなどの色を使っている。
  8. ^ 人によっては状況次第で利き腕と逆のフォームを作ってプレイする人もいる
  9. ^ ショット毎にどちらの白球でも自由に選んで撞いて良い「エニーエニー」と呼ばれるルールも存在する
  10. ^ プールという言葉には長年悪いイメージがついていたが、それは競馬の「ノミ屋」を指す言葉 poolroom の意味合いが変化したため。観客がレースの合間に遊べるようにノミ屋達がビリヤード台を設置したことが始まりである。長い時間を経て poolroom は「ビリヤードをするための部屋」という印象が強くなり、ビリヤードは次第にギャンブル色が強いものへと認識されるようになった(以上はCUE'S(2006年5月号 p.114)の記述を参照)。また「pool」という単語自体にも「プール賭博」という意味がある。
  11. ^ 1950年代のアメリカでは10フィートサイズのものが公式テーブルとして採用されていた。(CUE'S(2007年7月号 p.25)を参照のこと)
  12. ^ 全日本ポケットビリヤード選手権大会は主なアマチュア全国大会の優勝者や、国内オープン戦のベストアマなどに限定される。
  13. ^ 作者死去のため未完という説が流れたが、実際は原稿を落とし続けたことで連載中止となった。1~4巻のみ刊行。

出典

  1. ^ 千葉国体資料:ビリヤード競技のご紹介
  2. ^ 赤垣 昭『図解コーチ ビリヤード』成美堂出版、1987年4月10日、165頁。ISBN 4-415-00249-8 
  3. ^ NBAルールブック(初版、キャロムビリヤード競技規定 第2章 第2条 第3項、および第4項)
  4. ^ Billiard Wave(2002/03/16放送)
  5. ^ [1]
  6. ^ 『キング・オブ・ザ・ハスラー』(谷津太郎)で詳しく描写されている。
  7. ^ 袴田p.93
  8. ^ 新村p.1674





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