ヒスタミン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/05 09:43 UTC 版)
受容体
ヒスタミンは特異的な受容体を介してその作用を発揮する。現在のところ4種のGタンパク質共役型受容体が発見されており、受容体によりヒスタミンが結合したときの作用が異なる。ヒスタミン受容体の作用を抑えるのが抗ヒスタミン薬であるが、成分によって抗アレルギー、胃酸抑制の作用を示す。
- H1型--平滑筋、血管内皮細胞や中枢神経などで発現し、炎症やアレルギー反応に関わる。
- H2型--消化管の細胞などで発現し胃酸分泌反応に関わる。
- H3型--中枢神経系などで発現し、ヒスタミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の放出を促進する。
- H4型--2000年にクローニングされた。胸腺、脾臓、小腸などで発現が確認されている。H1受容体拮抗薬で抑えられない痒みにH4受容体が関与しているのではないかといわれているが、詳細な働きはまだわかっていない。
食中毒
ヒスタミンが生成された食品を喫食することで起きる食中毒としてヒスタミン食中毒がある[19]。なお、Morganella morganiiによると考えられる、血小板輸血後の敗血性ショック症状も報告されている[20]。
原因
ヒスタミンは前述の細菌により合成され、食品中(発酵食品、熟成チーズ、ワイン[16]、魚醤、鮮度の落ちた魚)に蓄積される。食中毒の原因となりやすい魚種は一部の赤身魚と加工物[21]。
症状
食後30‐60分程度で、舌のしびれ、口の周囲や耳朶など顔面の熱感、じんま疹、頭痛、全身の紅潮等のアレルギー様反応を示すが通常は1日以内で回復する[19]。
予防
調理程度の加熱では分解せず[22]、蓄積により味や臭いを変えないため汚染の有無を判断することは困難である[19][22]。
予防策としては、保存時の温度管理や鮮度の確認などが重要となる[19]。
FAO/WHO合同専門家会議では、魚介類中のヒスタミンについて 50 mg/250 g ( 200 mg/kg ) を無毒性量(NOAEL)としている。[23] これ以上のヒスタミン量では何らかの症状が出る可能性が高くなると予測される。高濃度のヒスタミンを含む食材を口にした際には唇や舌先に刺激を感じることがあり、その場合は食べずに吐き出すことが望ましい。
脚注
- ^ a b Merck Index 13th ed., 4739.
- ^ The physiological action of β-iminazolylethylamine
- ^ histidine decarboxylase: HDC, EC 4.1.1.22
- ^ 反応
- ^ histamine-N-methyltransferase: HMT, EC 2.1.1.8
- ^ 反応
- ^ diamine oxidase EC 1.4.3.22
- ^ 反応
- ^ イミダゾール酢酸
- ^ Étude randomisée en double aveugle contre placebo de la tritoqualine hypostamine* dans la rhinite allergique perannuelle (フランス語) Revue Française d'Allergologie et d'Immunologie Clinique 2003年4月
- ^ 汗に含まれるアトピー性皮膚炎の悪化因子はカビの1種の産生物 - 広島大 マイナビ 2013年6月10日
- ^ Clinical effects of apple polyphenols on persistent allergic rhinitis: A randomized double-blind placebo-controlled parallel arm study. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2006年
- ^ Mechanisms of itch evoked by β-alanine The Journal of Neuroscience 2012年
- ^ 生食用鮮魚介類等におけるヒスタミン産生菌に関する調査(第2報) (PDF) 宮城県保健環境センター年報 第29号, 2011
- ^ 飯田宏美、海瀬好和、相磯和嘉、「ヒスタミンを産生する好塩性細菌について」 『日本衛生学雑誌』 1958年 13巻 3号 p.354-358, doi:10.1265/jjh.13.354
- ^ a b ヒスタミン産生菌 東京都福祉保健局
- ^ Levels of plasma ceruloplasmin protein are markedly lower following dietary copper deficiency in rodents Comp Biochem Physiol C Toxicol Pharmacol 2010年
- ^ ニジマスに対するヒスタミンの影響とステビア成分の解毒機構 塩崎一弘、中野俊樹、山口敏康、佐藤実 2005年
- ^ a b c d “第3章 調理室における衛生管理&調理技術マニュアル”. 文部科学省. 2020年6月5日閲覧。
- ^ 血小板輸血後に敗血症性ショックを呈し, Morganella morganii 菌による輸血後感染症が強く示唆された1例 (PDF) 日本輸血・細胞治療学会
- ^ “加熱しても防げない ヒスタミン食中毒”. www.city.tokyo-nakano.lg.jp. 2023年6月16日閲覧。
- ^ a b ヒスタミン食中毒防止マニュアル10.3.9 (PDF) 大日本水産会 国際・輸出促進部 品質管理課
- ^ Public Health Risks of Histamine and other Biogenic Amines from Fish and Fishery Products. Joint FAO/WHO Expert Meeting. (2012). p. 34-38. ISBN 978-92-5-107849-5 2019年3月7日閲覧。
ヒスタミンと同じ種類の言葉
- ヒスタミンのページへのリンク