パーム油 パーム油の概要

パーム油

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/02 06:55 UTC 版)

左の赤いものがパーム油、右の黄色みがかったものがパーム核油
精製されたパーム油
パーム油
100 gあたりの栄養価
エネルギー 3,699 kJ (884 kcal)
0 g
糖類 0 g
食物繊維 0 g
100 g
飽和脂肪酸 49.3 g
一価不飽和 37 g
多価不飽和 9.3 g
0 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
0 µg
(0%)
0 µg
0 µg
チアミン (B1)
(0%)
0 mg
リボフラビン (B2)
(0%)
0 mg
ナイアシン (B3)
(0%)
0 mg
パントテン酸 (B5)
(0%)
0 mg
ビタミンB6
(0%)
0 mg
葉酸 (B9)
(0%)
0 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
コリン
(0%)
0.3 mg
ビタミンC
(0%)
0 mg
ビタミンE
(106%)
15.94 mg
ビタミンK
(8%)
8 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
0 mg
カリウム
(0%)
0 mg
カルシウム
(0%)
0 mg
マグネシウム
(0%)
0 mg
リン
(0%)
0 mg
鉄分
(0%)
0.01 mg
亜鉛
(0%)
0 mg
セレン
(0%)
0 µg
他の成分
水分 0 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

食用油とするほか、マーガリンショートニング石鹸の原料として利用される。近年では、バイオディーゼルエンジン火力発電バイオマス発電燃料としても利用されている[1]。2009年時点で、世界で最も生産されている植物油である[2]

性質

オレンジ色をした、常温では固体油脂で、独特の芳香と甘味を持つ。主な成分はパルミチン酸約50%、オレイン酸約45%、リノール酸約10%で、その他ステアリン酸約5%、ミリスチン酸約1%が含まれている[3]。常温で固体であるのは飽和脂肪酸であるパルミチン酸を多く含むためで、組成全体としては牛脂に近い性質を持つ。 パーム油のオレンジ色はβ-カロテンに由来し、未精製のパーム油にはαカロテン、βカロテンやビタミンEに富むが、精製段階で失われ、色が淡黄色になる。ただし、食用パーム油として製造されるものはβ-カロテンを残すようにすることが多い。これを特に「レッド・パーム油」と呼ぶことがある。[4]

パーム油(100g中)の主な脂肪酸の種類[5]
項目 分量(g)
脂肪 100
飽和脂肪酸 49.3
16:0(パルミチン酸 43.5
18:0(ステアリン酸 4.3
一価不飽和脂肪酸 37
18:1(オレイン酸 36.6
多価不飽和脂肪酸 9.3
18:2(リノール酸 9.1

歴史

アブラヤシ Elaeis guineensis

アブラヤシ E. guineensis は、東アフリカのジャングルに起源があると考えられており、パーム油はファラオの時代(5千年前)のエジプトで使われていたとされる[6]

西アフリカの アブラヤシ E. guineensis については、ポルトガル人が15世紀にブラジルなどの熱帯諸国に導入したが、栽培については1848年にオランダ人がインドネシアに種を持ち込んだことに起源があり、その後シンガポール、マレーシアへと持ち込まれた[4]

1965年には、ロンドン(イギリス)でパーム油に関する国際会議が開催され、イギリスが熱帯作物の研究成果を普及するもので、イギリス人を除くと当時の最大生産国ナイジェリアの参加者が多かった[7]。しかし、ナイジェリアの内戦により生産量は低下し、アフリカのパーム油が国際市場に登場することはなかった[7]

1960年代には、マレーシアのゴム農園がアブラヤシ農園に転換しはじめ、1966年にはナイジェリアを上回る最大生産国となり、1980年代にはアメリカの大豆油産業と相対することになる[7]。主にポテトチップスの揚げ油として、アメリカでの輸入量は1965年には約3000トンほどだったものが、1975年には約44万トンとなり、マクドナルドといったファストフード店でも使われ始める[7]。1980年代には、アメリカ心臓病予防協会も、動物性脂肪や、パーム油、パーム核油、ヤシ油をまとめる熱帯油の言葉によって、これらに含まれる飽和脂肪酸が心臓病のリスクを高めると呼びかけたが、1989年には、大豆油由来マーガリンは水素の添加によって同様にリスクを高めるトランス脂肪酸が多いことが明らかになっていくまで、1980年代にはアメリカでのパーム油の使用量は一時的に下落していた[7]

健康の面と風味や硬化の点から以下のいずれかの選択肢が生じ、動物性脂肪、トランス脂肪酸を含む植物油が由来のマーガリン(やショートニング)、パーム油、そして欧州の一部でトランス脂肪酸の使用禁止が法律化されると、パーム油の使用が増大してきた[8]

農業の持続可能性の考えが一般的になると、2004年に「持続可能なパーム油のための円卓会議」が開催され、森林保護と人権の問題が提起された[8]。2013年に欧州パーム油同盟 (EPOA) が組織され、また2020年に向けて欧州の食品チェーン全体に持続可能なパーム油が100%になるよう求める「アムステルダム宣言」が2015年になされ署名国にはイギリス、イタリア、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、オランダなどが含まれる[8]。2016年には欧州で使われていた持続可能なパーム油は、69%であった[8]


  1. ^ 【真相深層】バイオマス発電 黄信号/燃料調達難で大半稼働できない恐れ/パーム油使用、乱開発助長も『日本経済新聞』朝刊2018年4月17日(2面)
  2. ^ 植物油の生産から消費まで (1)世界の植物油生産(一般社団法人 日本植物油協会) データは2004 - 2011年のISTA Mielke社「Oil World」誌
  3. ^ 『15710の化学商品』 化学工業日報社、2010年、1380頁。
  4. ^ a b Kalyana Sundram, Ravigadevi Sambanthamurthi, Yew-Ai Tan (2003). “Palm fruit chemistry and nutrition”. Asia Pacific journal of clinical nutrition 12 (3): 355–362. PMID 14506001. 
  5. ^ USDA National Nutrient Database
  6. ^ Chiabi, Andreas; Kenmogne, Maguerite Hortence; Nguefack, Seraphin; et al (2011). “The empiric use of palm kernel oil in neonatal skin care: Justifiable or not?”. Chinese Journal of Integrative Medicine 17 (12): 950–954. doi:10.1007/s11655-011-0938-1. PMID 22139548. 
  7. ^ a b c d e 岡本正明「もう一つの油戦争:―不健康なパーム油という言説,その対抗言説の誕生と発展」『東南アジア研究』第55巻第2号、2018年、217-239頁、doi:10.20495/tak.55.2_217 
  8. ^ a b c d e f g Gesteiro, Eva; Guijarro, Luis; Sánchez-Muniz, Francisco J.; et al (2019). “Palm Oil on the Edge”. Nutrients 11 (9): 2008. doi:10.3390/nu11092008. PMID 31454938. https://www.mdpi.com/2072-6643/11/9/2008/htm. 
  9. ^ Khamdiah Khodari, S.N.; Noordin, Mohamed Ibrahim; Chan, Lucy; et al (2017). “In vitro and in vivo Evaluation of New Topical Anaesthetic Cream Formulated with Palm Oil Base”. Current Drug Delivery 14 (5). doi:10.2174/1567201813666160801113302. PMID 27480118. 
  10. ^ Didi Erwandi Mohamad Haron, Zamri Chik, Mohamed Ibrahm Noordin, Zahurin Mohamed (2015-12). “In vitro and in vivo evaluation of a novel testosterone transdermal delivery system (TTDS) using palm oil base”. Iranian journal of basic medical sciences 18 (12): 1167–1175. PMC 4744355. PMID 26877845. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4744355/. 
  11. ^ 開催報告:企業向け森林セミナー「パーム油と森林破壊」”. WWF (2013年10月7日). 2018年4月8日閲覧。
  12. ^ 【イチからオシえて】想定外のパーム油発電拡大/再生エネ買い取り対象 CO2削減に逆行も毎日新聞』朝刊2018年2月21日(くらしナビ面)2019年4月11日閲覧。


「パーム油」の続きの解説一覧




パーム油と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「パーム油」の関連用語

パーム油のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



パーム油のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのパーム油 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS