パーソナルコンピュータ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 08:50 UTC 版)
ハードウェア
典型的なパーソナルコンピュータは、以下のハードウェアから構成される。(かつて一般的だった)デスクトップパソコンと、現在主流のノートパソコンでは、基本要素はおおむね同じであるが、ノートパソコンのほうはより小さな部品やユニットが使用されて細やかに一体化がなされている傾向がある。
メインボード
パーソナルコンピュータのメインボードの典型的なマザーボードの構成は、システムの中央となるチップセット、UEFIなどのファームウェアが書き込まれたROMあるいはフラッシュメモリ、CPUやメインメモリなどの専用のソケットやスロット類(固定の場合もある)、PCIeなど汎用のバスのスロット(ビデオカードには2019年現在はこれが使われることが多い)、その他SATAやUSBなどのためのソケット、オンボードグラフィック機能[注釈 8]、などから成る。
歴史的に見ると、集積回路によって多数の素子が集積されるより以前のコンピュータは、中央のプロセッサであるCPUをはじめとする各装置それぞれが筐体などのモジュールになっていて、相互に大量の配線で接続されていた。それが集積回路によって1つの筐体に高密度に実装されるようになると、大量の配線に代わってメインボードと呼ばれる大型の1枚あるいは少ない枚数のプリント基板が使われるようになった。
メインボードの形態としては、バックプレーンなどと呼ばれる相互接続機能のみに特化したものと、マザーボードと呼ばれる各種の機能をまとめてあるものに、おおざっぱには分けることができる。
パーソナルコンピュータのメインボードは、ほぼ必要な機能が決まっていることからバックプレーンに各種の機能ボードを乗せるよりも、マザーボードに集積してしまったほうが効率的などといった理由で、たいていはマザーボードが使われる。
デスクトップPCのメインボードは、ATX仕様、Mini-ITX仕様などがある。
CPU
コンピュータの頭脳に当たる部品。中央処理装置。汎用のマイクロプロセッサ(MPU)が使われる。プロセッサは、世代、メーカーごとにソケット規格が異なる。
- Windows機向け。x86互換
- Mac向け - Apple M1およびApple M1 Pro(en:Apple M1 Pro and M1 Max)。ARMアーキテクチャベースのSoCであり、独自開発のGPU及びニューラルコアと緊密に統合されている。M1 Proは、インテルのハイエンドCPUであるCore i7よりも性能が高く、なおかつ省電力である[31]。2022年3月にはさらに高性能化したApple M1 Ultraが登場した(2022年5月時点でワークステーションに採用されている)
- タブレット(スマートフォン)向け - タブレット(スマホ)のCPU(MPU)は省電力であることが重要で、基本的にARMアーキテクチャである。AppleシリコンやクアルコムのSnapdragonなど。設計を多数のメーカーにライセンスする方式をとり、おびただしい種類のASICが生産されている。
メインメモリ
RAMとも呼ばれる[32]。漢字表記では主記憶装置。CPUと基板上の回路を通じて直に接続されているメモリである[32]。次に説明する補助記憶装置(ストレージ)に比べ読み書きが桁違いに高速という特徴があるが、単価が高いため、搭載される容量は補助記憶装置に比べて何桁(けた)か少ないのが一般的である[32]。メインメモリはCPUの作業場所に当たり、実行中のプログラムや、CPUが操作中のデータが格納される。揮発性の記憶装置であり、電源を切ると記憶内容は消えるため、電源を切った後も使うデータや設定などは、電源を切っても記憶が消えない補助記憶装置(HDDやSSDなど)に保管することになる。
搭載可能なメモリモジュールの規格や容量はマザーボードに左右される。また、認識・使用可能なメモリの上限はOSに左右される。
なお、搭載するメインメモリの量が足りないと、OSのデフォルトの設定ではやむを得ずメインメモリの代わりに補助記憶装置を作業場所として使うようになっていることは多く、そうなるとPCの処理速度が一気に落ちてしまい、いわゆる「もっさり」とした動きになってしまうので、メインメモリをたっぷりと搭載しておくことが快適な処理速度を保つ上で鍵となる。
補助記憶装置
ストレージとも、外部記憶装置ともいう[33]。不揮発性の記憶であり、通電しなくても記憶が保たれ[33]、容量当たりの単価が安く大容量のものが使えるが、書き込み速度がメインメモリのそれと比べて非常に遅い。したがってプログラムプログラム、データなどの格納場所(ストレージ)として使われたり、他のPCへプログラムやデータを移すために用いられる[33]。
PCに内蔵するもの、外付けのもの、着脱可能なリムーバブルなものがある。内蔵型は固定ディスクとも呼ばれる。
1990年代から2010年ころまではPCのOS起動ディスクとしてはハードディスクドライブ(HDD)が主に使われてきたが、その後、2010年代後半ころから、高速に読み書きができるソリッドステートドライブ(SSD)も次第に安価になり、オペレーティングシステムの立ち上げ時の時間が半分〜数分の1ほどにも短縮され、PCの使い心地に大きく影響するので、SSDのほうが人々に選ばれることが一般化してきた。(OSの使い勝手にも大きく影響するので)マイクロソフト社も2022年の半ばごろにはPCのハードウェアのメーカーに対してSSDを標準で搭載することを強く要求するようになった[34][注釈 9]。
オペレーティングシステムやアプリケーションソフトウェアやよく使われるファイルを読み書きしたりする場所としては高速なSSDを、バックアップや大容量データの長期保存にはHDDを利用するなどの使い分けもされる。HDDはSSDよりも容量あたりの価格が安く、大容量化しやすいことが特徴で、2019年には14TBの製品が、2021年には20TBの製品が発売された[35][36]。
リムーバブルディスク
着脱可能なメディアを使用できる外部とのデータ交換用のディスクドライブ。時代とともにメディアが変遷してきて、フロッピーディスクドライブ、光磁気ディスク(MO)ドライブ、CD、DVD、BDと変遷してきて、DVDスーパーマルチドライブやBDドライブなど、複数規格のメディアが読み書きできるものが増えたが、インターネット経由でオペレーティング・システムやソフトウェアやコンテンツがダウンロードできることが一般化するにつれ、リムーバブルディスクの需要がめっきり減り、2020年代以降は、リムーバブルディスクドライブを搭載しないモデルが一般的になっている。
拡張カード
拡張カードは用途に応じてコンピュータを拡張するためのカード(ボード)。ただし、拡張スロット自体がないモデルも多い。
ビデオ(映像)信号をディスプレイに表示するビデオカード、ネットワーク接続用のネットワークカード、音声出力用のサウンドカードなどがある。
特にリアルタイムの3DCGといった用途でPCを使う場合は、高性能なGPUを利用することが多い。DirectX 10世代以降はGPUを汎用計算に利用すること(GPGPU)も行われるようになり、リアルタイム3DCG以外にも、大量の物理演算、汎用画像処理、動画エンコーディング、ディープラーニングなどの用途でPCを使う場合も高性能のGPUを搭載するようになった。拡張カードを使いたい場合はデスクトップPCやタワー型PCから望みの拡張スロットを備えているものを選択することになる。
電源
パソコンでいう「電源」というのは、コンセントに来ている交流を直流に変換しマザーボードやドライブ装置などに電力を供給するもの。
ノートPCの電源は本体内部に一体化されたリチウムイオン電池などを内蔵しており出先などではこれを使うが、長時間使う場合はコンセントにACアダプタを挿しACアダプタのDCコネクタをノートPCに挿して使用することが一般的である。
なお最近販売数が伸びてきている、机上で使うmini-PC(ミニPC)などと呼ばれる一辺が10センチ強や数センチ角程度の弁当箱のようなコンピュータも電源にACアダプタを使う傾向がある。
デスクトップPCやタワー型PCの電源は本体内部に収められる比較的大きなユニットである。ATX電源など。
ディスプレイ
モニターとも呼ばれる。GUIやCUIでコンピュータを操作するために必要な表示装置。アスペクト比(縦横の比)が時代とともに変化し、最近は横長になってきた。
販売量が多いノートPCのディスプレイは本体と一体化しており、ヒンジ機構で開くことができる。ディスプレイの上部にwebカメラを内蔵しているモデルも多い。
デスクトップPC用のディスプレイの多くは外付けで、PC本体とケーブルで接続する。スピーカーやWebカメラを内蔵していたり、TVチューナーを内蔵しているモデルもある。デスクトップPCのディスプレイは2000年頃まではブラウン管が一般的であったが、2002年以降は液晶ディスプレイが主流となり、2006年までに完全にブラウン管と置き換わった。
キーボード
コンピュータにコマンドや文字を入力するための機器。キー配列は、英語圏では101キーボード(104キーボード)、日本では106キーボード(109キーボード)が主流である。大手メーカー製などは、ショートカットとして特定の機能(電子メール機能、スピーカーの音量調整など)に一発でアクセスできる専用のボタンを追加した物もある。接続は有線の場合はUSB、無線の場合はBluetooth接続が多い。
ポインティングデバイス
ポインティングデバイスは、位置や座標を指し示すための装置。画面上の1点を指し示したり、操作対象を指定することができる(販売量がすでに9割を越えている)。ノートPCではタッチパッドがキーボードの手前に組み込まれていて一体化していることが一般的。デスクトップPCではマウスを使うことが一般的であるが、各人の好みで外付け別売りのタッチパッドを使ったり、トラックボールを使う人もいる。
音源とスピーカ類
黎明期のPCは、内蔵音源としてビープ音やFM音源といった貧弱な音源しか持たなかったが、PCMデータの再生に対応したPCM音源を搭載したサウンドチップが標準的となり、また各種OSにおいてアプリケーションソフトウェアからオーディオデバイスを利用するためのアプリケーションプログラミングインターフェイス(API)の標準化が進んだことにより、音声や動画の再生が標準的にできるようになっている[注釈 10]。
ノートPCではキーボードとディスプレイの間あたりに内蔵されていることが多く、スピーカーの直径が小さいため音響的には貧弱な音しか出ないことが一般的であるが、ノートPC本体横に音響出力用のミニプラグのジャック(メス側)が用意されていることも一般的なので、そのジャックに高性能のヘッドフォン(イヤフォン)類を挿せば、良質な音響を聞くことができる。
デスクトップPCでは、HDMI接続したディスプレイがスピーカーを備えていればそのスピーカーから音が出る。PCをサウンドカードを搭載する場合で音声出力端子があればそこにスピーカーを接続する。
インターフェイス
周辺機器を接続するための差し込み口(ポート、端子)。以前はそれぞれの周辺機器に対応する専用のインターフェイス(レガシーデバイスともいう)が備わっており、PS/2コネクタ、DVI、イーサネット、Thunderbolt、IEEE 1394、USBなど複数の種類に分かれていたが、2010年代以降USB+HDMI(モデルによってはイーサネット用RJ-45)だけしか備えないという機種が増えた。
ケース
デスクトップPCやタワー型PCではケース、つまり箱状の入れ物が使われる。縦置きのミニタワー型、ミドルタワー型、フルタワー型などがある。
その他の周辺機器
- Webカメラ
- PCのモニター等に取り付ける小型カメラ。内蔵されるものと外付けのものがある。主にビデオ会議や動画配信などのネットワークストリーミング用途で使用される。
- プリンター
- 紙に印刷するための装置。カラーのインクジェットプリンターやレーザープリンターが主流である。イメージスキャナとの複合機もある。[注釈 11]
- スキャナ(イメージスキャナ)
- 外部から画像(平面的な写真や印刷物)をPC用のデータに変換して取り込むための装置。ポジやネガなどのフィルムをスキャンできる機種もある。プリンターに統合された複合機が主流となっており、単独の製品は少ない。
- ビデオキャプチャ装置
- ビデオ信号を動画データに変換して取り込むために使う。内蔵カード型のもの(ビデオキャプチャカード)も、外付けの箱型でUSB接続のものもある。
- チューナー
- 古くはAM/FMラジオチューナー搭載モデル、次いでアナログTVチューナー搭載モデルが発売されたことがあったが普及をみなかった。日本ではデジタル放送(TV)チューナーが2008年ごろから普及しはじめ、薄型テレビやHDD/DVD/BDレコーダー等の家電製品と同様に、パソコンで放送を録画、再生できるようになっている。
- モデム、TAなど
- モデムはダイヤルアップ接続でインターネットへ接続する場合に必要な装置で2000年代までは標準的に搭載されていた。ISDNを利用する場合はTA、ADSLの場合はADSLモデムを使った。
- その他 デジタルカメラ 等
- 写真データを取り込む場合にUSB接続やワイヤレス接続する。
注釈
- ^ 日本独自の略語である。(著書『インターネットの秘密』より)[要文献特定詳細情報]
- ^ MacとPC/AT互換機を対比する場合など[2][3][4][5]。
- ^ "Personal computer"は、Merriam-Websterオンライン辞典では「個人が汎用目的で使うための、マイクロプロセッサを備え、一般的なソフトウェア(ワープロソフトやブラウザなど)を動かすために設計されたコンピュータ[8]」と定義されている。
- ^ アラン・ケイは、GUIを搭載しA4サイズ程度の片手で持てる小型のコンピュータをも構想し、それを「ダイナミックメディア(メタメディア)機能を備えた本(ブック)」という意味を込めて「ダイナブック」と呼んだ。このダイナブック構想は今日のノートパソコンやタブレット型PCに多大な影響を与えている。
- ^ 1977年10月の出荷は100台のみで、主に雑誌社向けの出荷であり、一般ユーザ向けの出荷ではなかった。一般向けの出荷は1977年12月から。だが12月以降も受注した数を生産することができず、バックオーダーが積み上がる事態となり、主メモリが4KBのバージョンの受注をキャンセルする事態となった[12]。
- ^ 具体的には、ヒンジ機構を備え、開けたり閉めたりできる形状・構造のこと。
- ^ ノートPCを底面側から見た向きになっているメインボードの写真。通常のユーザの視点でいえば、左右を入れ替えるようにして裏返しにしてある写真ということになる。通常、ノートPCのRAM(この写真では青色の板)の増設はPC底面の蓋を開けて行えるようになっている。
- ^ かつてはマザーボード上に、カジュアルな用途では必要十分な性能を持つグラフィックスプロセッサ(GPU)を搭載していることが多かったが、Intel Core iシリーズやAMD APUなどのGPUを内蔵したCPUが主流となってからは、マザーボードがGPUを搭載することは少なくなり、以後の世代ではそれらのCPUが内蔵しているGPUのための周辺回路などが「オンボードグラフィック機能」となっている。
- ^ 2022年秋時点で、Dell、HP、ASUS、Acerなど世界のメジャーなPCメーカーが通販で提供している量販モデルのPCのほとんどがデフォルトの選択でSSDを搭載している状態になっている(HDDはあくまで2番目以降の選択肢として選ぶような、例外的な位置づけになっている)。
- ^ もともとPC内部はノイズの宝庫であり、かつては音質の悪さから敬遠されることもあったが、S/PDIFおよびHDMIのようなデジタル伝送規格やHigh Definition Audio規格の普及など、技術の向上により、一般的な視聴用途であればオーディオ専用機器と比べてもさほど遜色はない機種もある。
(出典:【藤本健のDigital Audio Laboratory】「パソコンの音が悪い」は当たり前? オーディオ出力性能を数値で比較 AV Watch) - ^ なおパソコンなしでメモリーカードを直接挿入したり、デジタルカメラとUSBケーブルで直接接続したりすることで、メモリカードやカメラ内に保存されている画像や文書を印刷できるものもあるが、そういう使い方は「PCの周辺機器」としての使用法ではない。
- ^ シャープにとってはMebius以来の再参入となった[40]。
- ^ 2017年ブランド復活。
- ^ 例えば、高木産業(現:パーパス)はかつて「PURPOSE」ブランドでパソコンを販売していたが、2003年頃に撤退している。
PURPOSEパソコンの廃棄について [リンク切れ] - ^ 旧:コンパック製品については、合併したヒューレット・パッカードで回収を行っている。2001年に一度日本から撤退したゲートウェイ製品については、再進出後の現日本法人で回収を行っている。
出典
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- ^ Gigazine「MicrosoftがPCにHDDではなくSSDを搭載するようメーカーに要求か、切り替え期限は2023年」
- ^ Western Digitalの14TB HDDが発売、データセンター向けの「Ultrastar DC HC530」 - AKIBA PC Hotline!
- ^ 過去最大の20TB HDDが12月17日に発売、SeagateのNAS向け「IronWolf Pro」 - AKIBA PC Hotline!
- ^ ファームウェアとは?ファームウェアアップデート(更新)方法や注意点をご紹介|ドスパラ通販【公式】
- ^ ChromebookでLinuxをセットアップする - Chromebook ヘルプ
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- ^ シャープ、パソコン事業再参入へ 東芝から買収する方針:朝日新聞デジタル
- ^ a b PC事業の譲渡に関する正式契約の締結について - ソニー ニュースリリース
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