ハイフン ハイフンの概要

ハイフン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/03 09:01 UTC 版)

用法

  1. 一つの単語を複数の行に分けて書くとき、前の行の最後に置かれる。
  2. 複数の単語から構成された熟語にあって、それらの語を1単語として扱うにはまだ構成する語の独立性が残っているというほどの結合のときに、構成する単語の間に置かれる。
  3. 英語にあっては、複数の語から成る形容詞の、構成する語の間に置かれる。例:ten-year-old girl
  4. ドイツ語にあっては、その後半が等しい複数の熟語をundでつなぐとき、前の熟語の後半を省略する場合に、省略部分にハイフンが置かれる。例:Nieder- und Oberösterreich (Niederösterreich und Oberösterreich)
  5. 日本では、電話番号住所の数字部分等の、階層の区切りによく用いられる(他の国ではこの用途にスペースを使うことが多い)。
  6. 番地表記では、国によっては、複数の番地にまたがることを示す。たとえば12-14は12番地から14番地まで(の広大な土地)を示す。
  7. 製品の形式名にも使われる。“AAA-BB0000”などの様式で表記される。
  8. 漢文訓読において、一二点の二点を熟語につける場合に使う。この場合、竪点とも呼ばれる。

英語における用法

ハイフンは、主にひとつの単語を分割したり、別々の単語をつないでひとつの単語にするのに使用される。中断ハイフン(例:nineteenth- and twentieth-century writers)の場合を除き、ハイフンとそれがついている単語の間にスペースを入れるべきではない。

唯一絶対のハイフネーション規則集があるわけではなく、むしろ、スタイルガイドごとに異なるガイドラインが規定されていると言ってよい。ダッシュとハイフンに対するスタイルの規則は、複雑な仕組みを使って読みやすくなるように考え出されてきた。編集者はその規則からの逸脱を許容することも多いが、このことによって読みにくくなるわけではなくかえって読みやすくなる。

英語の複合名詞と動詞の中のハイフンの使用は、全体的に着実に減っている。かつてならハイフンでつながれたであろう複合語は、スペースを間に入れるか1語に統合される傾向にある。2007年、Shorter Oxford English Dictionaryの第6版は、fig-leaf(現fig leaf)、pot-belly(現pot belly)、pigeon-hole(現pigeonhole)などのように16,000個の項目からハイフンを取り除いた。インターネットが出現し、コンピュータ技術が普及したことで、新しい普通名詞(“toolbar”hyperlinkpastebinなど)が生まれたが、これもかつてならハイフンで区切られていたであろう。

用法の減少にもかかわらず、ある種の複合修飾語の構文において、著者によっては接頭辞を使うときに、ハイフネーションは用い続けられている(下記参照)。ハイフネーションはまた、両端揃えされた文章で(例えば新聞の段組)語間の取り方が見苦しくなるのを避けるために、日常的に使用されている。

分離

両端揃えと行の折り返し

紙面を効率的に使ったり語間の取り方を調整せずに右側マージンを均一に見せたりするために、あるいは行末近くにあるけれども行に収まらない手書きの長い単語を消す必要がないようにするために、最も近くにある音節の境目で単語を分割して、その文字列がひとつの単語を分割したものだとわかるようにハイフンを挿入することがある。例を挙げると:

We, therefore, the representatives of the United States of America...
ハイフネーションなし
We, therefore, the represen-tatives of the United States of America...
ハイフネーションあり

これを適切に行う、詳細な方法は複雑で言語ごとに異なる。例えば、The Elements of Typographic Style (Bringhurst, R., 1992) では、文末や文頭に残す文字数や、最終行がハイフネーションで次行に送られた文字だけにならないようにせよ、などと示している[1]。また、他の正書法組版の習慣とも互いに影響する。特に正式な文章以外の分野では、ハイフネーションアルゴリズムを辞書とともに使うことで満足できる結果が得られる。

辞書などにおいては、別な文法規則によりハイフネーションされた単語を分割する際に、元からハイフネーションされている単語であることを明示するために、ダブルハイフンを使うことがある。例えば、Webster’s Third New International Dictionaryがその例である[2]

接頭辞と接尾辞

接頭辞の中にはハイフンでつながったりつながらなかったりするものがある(co-pre-mid-de-non-anti-など)。preambledegradeのような古くからある言葉の多くは、接頭辞が完全に一体化しているとみなされているのでハイフンを入れる必要はない。それ以外の場合、用法は個々人または地域の好みによって変わる。イギリス英語ではハイフネーションをし (pre-school)、アメリカ英語ではハイフンを省略する(preschool)傾向にある。接頭辞が(大文字で始まる)固有形容詞につく場合、ハイフンは必須である(例: un-Americande-Stalinisation)。

イギリス英語では、読者の誤読を防ぐためにハイフンを使うことがある。例えばco-workerという単語はcowという語が無意識に読者の目に入ってくるのを防ぐために、そのように区切られている。APスタイルブックには接頭辞としての“co-”の使用法の詳細が書かれている。

連続する母音や子音が黙音や二重母音に変化するのではなく個別に発音されるときに、接頭辞や接尾辞などといっしょにハイフンを使うことがある。例えばshell-likeanti-intellectualのように使う。母音+母音と連続するときにトレマを用いる(例えばco-operationcooperationではなくcoöperationを使う)英語の権威もいるが、このスタイルは現在まれである。

接頭辞のついた語のなかには、同綴異義語になって他の語と区別できなくならないように、ハイフンでつながれるものもある。例えばrecreation(娯楽・休養)とre-creation(改造)である。

分節法とつづり

syl-la-bi-fi-ca-tionのように、ハイフンを分節法を示すために使用することがある。ほとんどのイギリスと北アメリカの辞書はsyl·la·bi·fi·ca·tionのように、この目的のために“middle dot”“hyphenation point”と呼ばれることもある中黒を使用する。同様に、ハイフンは、W-O-R-D spells word”のように、単語のつづりを示すことに用いられることがある。

結合

複合修飾語

別の単語の意味を同時に修飾する複数の単語のかたまりを複合修飾語という。副詞+形容詞の組み合わせ以外の複合修飾語が語句の前にあるときには、誤解を防ぐために、American-football playerlittle-celebrated paintingsのように複合修飾語がハイフンでつながれることがある。ハイフンがないと、「アメフトの選手」か「アメリカ人フットボール選手」のどちらの意味なのか、また「有名な絵画」が小さいという意味かどうか、混同する可能性がある。ice-cream-flavored candyのように、3つ以上の単語から複合修飾語を作ることもでき、形容詞句だけでなく副詞句も作れる (spine-tinglingly frightening)。しかし、複合語がよく知られている場合は、通常ハイフンはつかない。例えばhigh school studentshigh-school studentsより好ましいと少なくともひとつのスタイルガイドに書かれている。この文は形の上では曖昧だが(「高校生」と「麻薬を常用している生徒」)、別の意味を伝えたいときには通常違う形の文になる。名詞+名詞の複合修飾語の場合も混同する恐れがないときは、grade point averagedepartment store managerのようにハイフンなしで書く。

修飾される語句のうしろに複合形容詞があるとき、通常ハイフンは使用されない。例えば“that gentleman is well-respectedでなく“that gentleman is well respected”と書く。これとは逆に、be動詞やその変化形のうしろに複合形容詞がある場合に、ハイフンを推奨する権威もいる。

ほとんどのスタイルガイドには、副詞+形容詞の修飾語で副詞が-lyで終わるときはハイフンを使うべきではない、と書いてある。例えばwholly owned subsidiaryquickly moving vehicleのように書くのは、副詞が形容詞を修飾しているのが明確で、“quickly”“vehicle”を修飾できないからである。しかし、副詞が形容詞としても働くときは、意味を明確にするためにハイフンを使用してもよい、あるいは使用すべきとするスタイルガイドもある。例えば、more-important reasons(「より重要な理由」)という用語は、moreが形容詞であるmore important reasons(「追加の重要な理由」)と区別される。(ただし、“a more-important reason”のハイフンは“a more important reason”と区別するのに必要ではない。両者の意味は同じため。)質量名詞の例は以下のとおりである: more-beautiful scenerymore beautiful sceneryと区別される。

28-year-old womantwenty-eight-year-old woman320-foot wingspanのように、数の表現に数字を使うか単語を使うかにかかわらず、(特に度量衡の)形容詞句は、数や言葉をハイフンでつないで作る。省略された時間単位にも通常同じことが言える。two-thirds majorityone-eighth portionなどのように形容詞として使われている分数を数字に略さずに書くときにもハイフンを使う(名詞として使われる場合はこの限りではない)。しかし、国際単位系の単位の(名称ではなく)記号を使うときは、国際度量衡局アメリカ国立標準技術研究所の両方がハイフンなしを推奨する(例: a 25 kg sphere)。ただし単位が名称で書かれるときは当てはまらず、a 25-kilogram spherea roll of 35-millimeter filmのように書く。

構成要素のどちらかがすでにハイフンでつながれているか、スペースを含んでいる場合に、high-priority–high-pressure tasks(優先度とプレッシャーが高い仕事)のように、ハイフンをつないで複合語を作る代わりにenダッシュ( – )を使うことがある。範囲 (pp.312–14)、関係 (blood–brain barrier) および“to”の感覚 (Boston–Washington race) を伝えるときは、enダッシュはハイフンより適している。

他の複合語

修飾語以外にも様々な複合語の中で接続ハイフンが使用されている。例えばlily-of-the-valleycock-a-hoopclever-clevertittle-tattleorang-utanである。用法は一定の規則というより慣習に基づいていることが多く、ハイフネーションのスタイルは作者ごとに違う。例えばorang-utanorangutanまたはorang utanと書かれることもあるし、lily-of-the-valleyはハイフンでつなぐこともつながないこともある。

2語からなる100未満の数の名前はハイフンでつながれる。例えば23twenty-threeと書き、123one hundred and twenty-threeと書く(andはアメリカ英語では省略される)。

それぞれのをハイフンで結合することによって、自分たちの新しい家族用に新しい姓を作る夫婦もいる。これは二重姓と呼ばれる。例えばJane DoeおよびJohn SmithJane and John Smith-DoeまたはDoe-Smithになる。また、女性だけが出生時の姓をハイフンでつないで夫の姓を付け足す国もある。

中断ハイフン

“and”“or”“to”によって並べられた、空白区切り、空白なし、またはハイフン接続の複合語のなかに、共通の基底単語が使われている場合、中断ハイフンが使用されることがある(英語ではsuspended hyphenとかhanging hyphenとかdangling hyphenと呼ばれる)。例えば、nineteenth-century and twentieth-centurynineteenth- and twentieth-centuryと書くことがある。この用法は現在英語で一般的で、スタイルガイドのなかにはこの方法を明確に推奨しているものもある。あまり一般的ではないが、英語で基底単語が先頭にあるときにも、investor-owned and -operated”のように中断ハイフンが使用されることもある。ドイツ語において一般的な、“applied linguistics and sociolinguistics”の代わりに“applied and sociolinguistics”を使うようなことは英語では好まれない。インディアナ大学のスタイルガイドはこの例を挙げて、先頭の語句が通常空白で区切られる場合、『近道をとる』ことはしないでくださいとしている。

その他の使用法

ハイフンは、日付(下記参照)、電話番号、スポーツの点数で、数字をつないで書くために使用されることがある。

G-d英語版のように、ハイフンは、単語中の文字を隠すために使用されることがある。文体をよくするためにenダッシュも同様に使う(“G–d”)。


  1. ^ ビビアン・クック 著、岡田毅、石崎貴士 訳 『英語の書記体系』(初版)音羽書房鶴見書店、2008年9月15日、168頁。ISBN 978-4-7553-0238-1 
  2. ^ 松浪有、池上嘉彦、今井邦彦 編 『大修館英語学事典』(初版)大修館書店、1983年7月1日、981頁。 
  3. ^ 日経新聞電子版Wiki


「ハイフン」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ハイフン」の関連用語

ハイフンのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ハイフンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのハイフン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS