ナルコレプシー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/04/24 13:16 UTC 版)
| ナルコレプシー | |
|---|---|
| 分類及び外部参照情報 | |
| ICD-10 | G47.4 |
| ICD-9 | 347 |
| OMIM | 161400 |
| DiseasesDB | 8801 |
| eMedicine | neuro/522 |
| MeSH | D009290 |
| プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
目次 |
概要
笑い、喜び、怒りなどの感情が誘因となる情動脱力発作(カタプレキシー)を伴う患者も多いが、その症状が無い患者もいる[1]。通常であればノンレム期を経た後で発生するレム睡眠が入眠直後に発生する、入眠時レム睡眠期 (SOREMP) が出現するため、入眠時に金縛り・幻覚・幻聴の症状が発生する。更に夜間はレム睡眠とノンレム睡眠の切り替わりで中途覚醒を起こすため、目は覚めても体を動かそうとする脳の一部が眠っているために金縛りを体験することになる。入眠後から起床時までは、そのような状況のため概して睡眠が浅くなりやすくなり、夢を見る回数が増える。ほとんどが悪夢で、現実とリアルな夢の境目が分からずにうなされる場合が多い。
ナルコレプシーは、睡眠障害の研究・治療が行われていく課程で、イギリス人医師トーマス・ウィリス (Thomas Willis) によって最初の報告がされ[2]、1880年にフランスの医師ジャン=バティスト=エドゥアール・ジェリノー (Jean-Baptiste-Édouard Gélineau) によって名付けられた[3]。直訳としては「Narco=眠り」「Lepsie=発作」を意味するため、「眠り発作」となる[4][3]。日本では周囲から見た患者の様子から「居眠り病」「過眠症」とも呼ばれる事があるが、他の傾眠傾向の睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群など)を一括りに扱うそのような病名は適切ではない。このように一般への知名度が極めて低いうえ、専門医が少ないため、罹患者に対する正しい診断・治療が受けにくいことや、まわりの人間からの理解が得られないなど、罹患者には精神的にも大きな負担がかかっているのが現状である。
発症期は主に15歳前後が多く、40歳以上の発症はまれである[3]。本病気の症状特性上、病気であること自体に患者本人が気付く場合が少ないため、発症から確定診断までの平均期間が約15年と極めて長期になっている。そのため、日本ナルコレプシー協会は、社会的認知度向上に向けて2009年より全国の各中学校・各高等学校にむけて『ナルコレプシーとは』とのパンフレットを配布しはじめた。現在確定診断を受けた患者数は日本国内においておよそ2000人前後(2009年12月現在)であるが、決して珍しい病気ではなく、日本では600人に1人程度(0.16%)[5][3]は罹患していると想定されている。なお、世界の有病率の平均は2000人に1人程度(0.05%)であり、その4倍近い日本人の有病率は世界最高であるという[3]。
また、治療を行っていない状態で機械や自動車の運転中などに発作が起きると重大な事故の原因となりうるため、日本睡眠学会では、運転中の居眠りや事故経験によっては、治療によって改善されるまでは車両運転を控えるべきであることを医師が伝える必要があるとしている[3]。
原因
ナルコレプシーの病因として関連性が注目されているものには、オレキシンの欠乏がある[3]。オレキシンは視床下部から分泌される神経伝達物質で、1998年に櫻井武(現・金沢大学大学院医学系研究科教授)と柳沢正史(テキサス大学サウスウェスタン医学センター教授)らのグループによって発見された[6]。オレキシン遺伝子を破壊したマウスにはナルコレプシー症状が現れることが明らかになっている[7]。また、任意のヒトのナルコレプシー患者においても視床下部のオレキシンを作る神経細胞が消滅していることが明らかにされている[8]。さらに、オレキシン神経細胞を破壊し人為的にナルコレプシーを引き起こしたマウス[9]に、オレキシン遺伝子を導入したり、脳内にオレキシンを投与することでナルコレプシー症状が改善されることも明らかにされた[10]。
他に、ナルコレプシーの病因として関連性が注目されているものには、HLAとの関連性がある[3]。人のナルコレプシーにおいては、HLA-DR2がほぼ全例で陽性であるという調査結果が1983年に発表された[3]。また、日本人のナルコレプシー患者の間では、ほぼ全例においてHLA-DQ1も陽性であるという調査結果がある[5]。但し、日本国外、とくに黒人においてはDR2陰性の患者も多く存在するという[5]。これらのことから、ナルコレプシーが自己免疫疾患である可能性が示唆されているが、2012年現在、証明はされていない[3]。
睡眠障害国際分類第2版 (ICSD-2) では、睡眠障害の診断名が第1版に比べて細分化されており、ナルコレプシーにおいても「情動脱力発作を伴うナルコレプシー」「情動脱力発作を伴わないナルコレプシー」「身体疾患によるナルコレプシー」「特定不能のナルコレプシー」の4つに細分化されている。このうち、「情動脱力発作を伴うナルコレプシー」と「身体疾患によるナルコレプシー」では、脳脊髄液中のオレキシン1(ヒポクレチン-1)濃度が110pg/mL以下(正常コントロール群平均値の3分の1以下)であることがナルコレプシーの補助診断基準に含められている(前者は第3項、後者は第2項の選択的条件の1つ)[3]。これには、90%以上の患者で髄液中のオレキシンが低値となること、正常群や他の要因による患者では低値とはならないことに基づく[3]。逆に、「情動脱力発作を伴わないナルコレプシー」の疫学は判明していないとされている[3]。
2012年現在、ヒトのナルコレプシーは、オレキシン神経が自己免疫疾患を理由として後天的に損傷を受けたことに伴う神経伝達障害であるとする仮説が有力とされている[3]。
- ^ 睡眠障害国際分類 (ICSD) の診断基準上は、情動脱力発作が見られない場合でも、日中の過度の眠気に加えて、反復睡眠潜時検査でSOREMP(入眠時レム睡眠期)が2回以上かオレキシン低値の場合にはナルコレプシーと診断される。
- ^ ナルコレプシーの研究―知られざる睡眠障害の謎 本多裕 悠飛社 ISBN 9784860300180 p54
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x “ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン項目 (pdf)” (日本語). 2012年3月23日閲覧。
- ^ ナルコレプシーの研究―知られざる睡眠障害の謎 本多裕 悠飛社 ISBN 9784860300180 p56
- ^ a b c “睡眠障害 - ナルコレプシー”. 2010年5月5日閲覧。
- ^ Sakurai et al. (1998) Cell 92: 573-585
- ^ Chemelli et al., (1999) Cell 98: 437-451
- ^ Peyron et al., (2000) Nature Med 6: 991-997
- ^ Hara et al., (2001) Neuron 30:345-354
- ^ Mieda et al., (2004) PNAS 101: 4649-4654
- ^ 平成22年4月1日より適用。新旧対照条文 ◎療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等
- 1 ナルコレプシーとは
- 2 ナルコレプシーの概要
- 3 症状
- 4 治療
- 5 昼間に眠くなるその他の病気
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固有名詞の分類
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