トルエン 用途

トルエン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/10 17:27 UTC 版)

用途

トルエンは溶媒として一般的に用いられ、ペンキ塗料シンナー、多くの化学物質、ゴム印刷インク接着剤マニキュア皮なめし殺菌剤等、様々なものを溶解することができる。フラーレン指示薬としても用いることが可能である。ポリウレタンの原料であるトルエンジイソシアナートをはじめ、フェノールトリニトロトルエン等の有機化合物の原料である。また内燃ガソリンエンジンのオクタン価向上剤としても用いることができる。工業的には脱アルキル化によるベンゼン生成、不均化によるベンゼンとキシレンの生成などが挙げられる。火薬・爆薬としても用いられ、特に化合物のトリニトロトルエンは爆薬として有名であり[1]自衛隊では1号TNT爆破薬という装備品がある[4]

地球温暖化防止対策として水素の利用が進む中、トルエンに水素を反応させてメチルシクロヘキサン(前述)に転換して貯蔵、運搬する技術が注目されている[5]

毒性と代謝

トルエン蒸気の吸入には中毒性があり、強い吐き気を催す。長期にわたり繰り返し吸入を続けた場合、回復不能の脳障害を負うことが確認されている。また耳毒性も確認されている。

トルエンは液体からの蒸気吸入だけではなく土壌汚染地下水汚染等により経皮・経口で体内に入る可能性がある。また、塗料樹脂などの建材溶剤として用いられたトルエンが室内に放出されることがあり、シックハウス症候群の原因物質の1つであると言われている[6]。また排気ガス等にも含まれている。

トルエンは代謝によりその大部分が排出される。ただし、トルエンは水への溶解度が低いため、尿といった通常の経路では排出することができない。そのため、代謝によって、より水溶性の高い物質になる必要がある。トルエンのメチル基芳香環部分と比較して酸化されやすい。そのためヒトの体内に吸収されたトルエンの95 %は、シトクロムP450によりメチル基部分が酸化されてベンジルアルコールとなる。この代謝経路では残りの5 %がが酸化されたエポキシドとして残留する。このエポキシドの大部分はグルタチオン複合体を形成するが、細胞に対する深刻な毒性は避けられない。

トルエンの代謝経路

トルエンが酸化されて生じたベンジルアルコールは、アルコールデヒドロゲナーゼなどの作用によってさらに酸化され、最終的に安息香酸となる。こうして生成した安息香酸は、グリシン抱合を受けて馬尿酸となり、これが尿中へと排出される。このため、ヒトの尿中に馬尿酸が存在することは、トルエンに曝露されたことの指標とされる場合もある。

ベンジルアルコールの代謝経路

日本食品安全委員会では、耐容一日摂取量を、体重1 kgに対して149 μgと定めている[1]


  1. ^ a b c トルエンの概要について” (PDF). 食品安全委員会 (2008年11月12日). 2020年5月23日閲覧。
  2. ^ 芳香族・タールQ&A”. 一般社団法人 日本芳香族工業会. 2024年4月11日閲覧。
  3. ^ 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編
  4. ^ 防衛省仕様書 1号TNT爆破薬” (PDF). 防衛省 (2014年12月22日). 2020年5月23日閲覧。
  5. ^ SPERA水素システムについて”. CHIYODA. 2022年12月18日閲覧。
  6. ^ 室内環境学会編・関根嘉香監修「住まいの化学物質-リスクとベネフィット―」東京電機大学出版局(2015)VOCs


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