デジタル回路 ファン・アウト

デジタル回路

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/10 15:54 UTC 版)

ファン・アウト

デジタル回路では、ひとつの出力端子に複数の後段回路の入力がつながることはごく普通に行われる。出力端子につながれた入力端子の数のことを、出力端子を扇の要に見立てて、ファン・アウトと呼ぶ。

デジタル回路では電圧値により情報を素子から素子に伝達するが、この際電気回路であるから当然電流の流れが伴う。具体的には、出力側のレベルをLにする為には、出力端子が後ろの回路から電流を吸い込む動作をし、出力側のレベルをHにする為には、出力端子が後ろの回路に電流を吐き出す動作をする。

TTLのように、入力端子に流れ込んだり、入力端子から流れ出したりする電流が比較的大きな素子で回路を組む場合、前段の出力側素子の電流駆動能力によって、ファン・アウトの数が制限されてくる。

TTLの場合、標準タイプ・LSタイプ・ALSタイプなど様々なタイプのシリーズがあるが、そのシリーズ内の規格により出力端子の駆動能力と、入力端子が吸い込む(または吐き出す)電流の最大値が規格化されているため、同じシリーズのIC同士であれば、ファンアウトの制限値は同じになる。

ただし、多数の入力に信号を分配する目的のために、同じ論理回路でもファン・アウト値を大きくした回路素子が用意されている。そういう回路素子は論理的には何もしない、または反転するだけの単純なものである事が多く、バッファ、バスバッファ、ドライバなどと呼ばれる。

違ったタイプのシリーズを組み合わせて使う場合には、それぞれのデータシートを調べて、接続出来る個数を確認する必要がある。

CMOS型ロジックの場合は、入力端子は内部インピーダンスが高くつくられている(電源線や接地線に対する抵抗値が高い)ため、定常状態での電流値は微々たるものであるが、たくさんの入力端子を接続すると、それぞれの端子と配線部分の静電容量が並列接続されることにより、出力側から見た容量性負荷が増大する。このため、出力側素子の駆動能力が足りないと、HからL、LからHの状態遷移に時間が掛かることになり、これが回路動作上の制約となるため、やはり後段につなげられる入力端子の個数は制限される。


注釈

  1. ^ 他にも、基準となる交流波に対する位相差、電圧ではなく電流ベースなど、いろいろありうる。
  2. ^ 具体的に許される範囲は異なる。仕様などでは中間に必ず「定常的な状態として、この範囲にしてはならない」という範囲があることが多い。シュミットトリガなど故意にヒステリシスを大きく取り、直前の状態に引きずられるものとして、これを避けることもある。ただしそれでも、非同期系から同期系へのインタフェースには、必ず、セットアップ時間とホールド時間という、何らかのタイミングの瞬間の前後に変動が許されない期間があるため、完全には、準安定状態の可能性を無視してはいけない(en:Metastability in electronics)。
  3. ^ 増幅と同調の順序といった具体的な構成は実例により様々であろう(複同調といった構成もある)。
  4. ^ TTLの出力電圧範囲の入力を許容するCMOSの標準ロジックICもあり、このようなシリーズは「74HCT~」「74ACT~」のように、型番に「T」の文字が入っている。
  5. ^ 大小異なる抵抗を持つ2つの抵抗器を並列に接続した場合、電流は小さな抵抗側により多く流れて、大きな抵抗側には電流はそれほど流れない。抵抗値の大きなプルアップやプルダウンの抵抗器の有無は端子に接続された状態での動作にはそれほど影響しない。
  6. ^ : high-impedance
  7. ^ : three-state
  8. ^ : gate
  9. ^ : enable
  10. ^ : output enable
  11. ^ : chip select
  12. ^ MIL-HDBK-217F notice 2, section 5.3 での10万ゲートの0.8μmCMOS商用集積回路を40℃で使用した場合の値。2010年にはプロセスルールが0.045μmまで小さくなり、ゲート毎に必要なチップ外の接続が少なくなっているため、さらにMTBFが延びている。

出典

  1. ^ "ディジタル回路". 改訂新版 世界大百科事典. コトバンクより2024年3月10日閲覧
  2. ^ ポール・ホロヴィッツ英語版、ウィンフィールド・フィル共著「The Art of Electronics」第二版、ケンブリッジ大学出版局、1989年。ISBN 0-521-37095-7、471ページ
  3. ^ Brown S & Vranesic Z. (2009). Fundamentals of Digital Logic with VHDL Design. 3rd ed. New York, N.Y.: Mc Graw Hill.
  4. ^ ヴィリアム・クライツ(2002年)「Digital and Microprocessor Fundamentals: Theory and Application」第4版、ピアソン・プレンティスホール






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