ダーツ 道具

ダーツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/29 05:39 UTC 版)

道具

ダーツ

スティール・ティップのハウスダーツ(店舗に備えられた貸出用)
ソフトダーツの構成部品

ダーツの構造は矢先方向より、ポイント、バレル、シャフト、フライトに分割される。これらのパーツはそれぞれ交換可能であることが多い。

ポイント

ポイントとはダーツの先端であり、矢でいうところの鏃(矢尻=やじり)にあたる。

スティール・ティップ・ダーツでは金属製であり、ソフトの逆と言うことでハードダーツと呼ばれることもある。 スティール・ティップ・ダーツで用いられるティップは元々交換ができないか、専用の機材が必要なものが多い。

ソフトダーツではプラスティック製であり、ティップと呼ばれることも多い。ティップは的に当たった際に折れたり、強く変形したりする消耗品である。また、種類も豊富であり、硬さや粘り強さ、長さなどがメーカーごと、種類ごとによって違う。また、近年ソフトダーツの先端だけを金属製にすることでスティール・ティップ・ダーツに対応できるようにした、コンバージョンポイントという金属製ポイントも出てきている。この他に、ティップとバレルのネジの雌雄を逆転させ、より重心が前よりでスティール・ティップ・ダーツの感覚に似せようとした、4BA規格と呼ばれる規格のソフトダーツが市販されている(通常のソフトダーツのティップは2BA規格と呼ばれる。ティップのネジ部の外径は4.7 mm)。また2013年末にはダーツメーカーのMonster Barrels DesignとL-Styleの共同開発で、2BA規格よりもネジ部の外径が1.6 mm細く、バレルをより細くすることが可能なNo.5という規格が登場した。

バレル

ダーツ中央の金属製の部分であり、矢で言うところの箆(の)の前半部にあたる。投げる時にはこのバレルの部分を持つことが一般的である。バレルとは樽(たる)の意であり、もともとは太く中空であったことから、樽に見立てて「バレル」と呼ばれるようになった。バレルの材質は真鍮(しんちゅう)、ニッケル合金、タングステン合金など様々である。比重の重いタングステン合金やニッケル合金で作られたものの方がより細くなり、的に当たった際に干渉し合いにくいが、同時に高価になりやすい。また、形状や滑り止めの刻み、重量なども様々である。

重量に関してはスティール・ティップ・ダーツのほうがより重いものが多く、JSFD公式ルール上は50 gまでのバレルが認められているが、実際には20–25 gを用いる選手が多い[2]。軽い場合ダーツボードに深く刺すために重いものに比べて高速で投げる必要があるため女性は男性よりも重いダーツを使う傾向がある。ソフトダーツではこれより軽いものを用いることが多く、16–20 gぐらいのものが多い。これはソフトダーツマシンの破損を防ぐ意味もある。

シャフト

シャフトとはダーツ後部のフライトが取り付けられている部分であり、矢で言うところの箆(の)の後半部にあたる。

材質は金属やナイロン、ポリカーボネイト、カーボンコンポジットなど様々なものが使われている。ボード上でダーツ同士(フライト同士)がぶつかった時に干渉を避けるため、このシャフト部分が回転したり、磁石で外れたり、柔軟な素材を使うことで曲がったりすることも多い。また、フライトを取り付ける構造も様々なものが存在するが、一般的なものとしては最後部に十字の切れ込みが入っており、そこにフライトを差し込んで固定するものである。

長さも様々であり、ダーツをプラスあるいはマイナスの迎え角を付けた投げ方をした場合短いほうがダーツの姿勢の上下振動が速くなるので競技者から見て曲線的に飛んでいるように見え、長いほうがダーツの上下振動が遅くなるので直線的に飛んでいるように見える。結果シャフトの長さを変化させることでダーツボードに刺さるダーツの角度を調整することが可能である。どちらの場合でもダーツの重心を中心に振動するのでダーツの重心位置の飛行経路には変化は無い。この振動の調整はスタッキングと呼ばれるダーツボード上のダーツにダーツを当ててグルーピングを高めるテクニックを用いる際重要になる。

長さは短いほうからエクストラショート、ショート、インビトウィン、ミディアムという区分で呼ばれることが多いが、メーカーによって多少、長さに差があることもあり、明確に何 mmからがどの区分である、というようには定義されていない。一般的には35–50mm程度であることが多い。さらに素材の違いによる重量差を利用して重量調整にも用いられる。

バレルとの接続部のシャフトに装着するゴム製のリングをオーバンドという[3]

昔の規格でバレルに差し込む方式の木製シャフトの場合はCane/ケーンと呼び分ける。

フライト

フライトとは最後尾の翼のことであり、矢で言うところの矢羽である。材質は様々で紙、布、鳥の羽などを使っているものもあるが、現代ではポリエチレンフィルム製であるものが多い[4]

フライトには進行方向とダーツの向きが一致していない時、これを引き戻す役割がある。これは航空機における垂直尾翼水平尾翼と同じく水平方向、垂直方向への挙動を安定させているということである。反面、航空機と違い手を離れた後に推進力を得ることがない為、安定にエネルギーを費やした分、ダーツの速度が失われ、飛距離当りの落下率が増える。さらに、プラスあるいはマイナスの迎え角を付けた投げ方をした場合フライトが大きければ大きいほどダーツの姿勢の振動の周期が短くなる。これによりダーツボードに刺さるダーツの角度を補正することができる。この補正効果はシャフトの長さの変更でも得ることが可能だがフライトの大きさを変更したほうがより効果が顕著に現れる。

フライト形状は非常に種類が多い。大きく分ければスタンダード、シェイプ(ハローズ・シェイプ)、ティアドロップ、ストレート/スリム、ハート、V-ウイングなどといった種類がある。また、この他に特殊な形状をしたものもある。原則として翼面積が増えれば上記の振動の周期を短くする効果は高くなり、同時に失速することも多くなるが、形状とシャフトの長さによって効果が変わる為、同じ面積であっても同じ効果が得られるとは限らない。また、一般的なフライトは4枚翼であるが、近年は3枚翼のものも販売されている。また、従来のシャフトの十字の切れ込みに差し込んで固定するだけでは、きちんと4枚の翼が90度間隔で開かないことがあるが、開いた状態で成形されたものやシャフトとフライトが一体成形されたものが存在する。

フライトはダーツの中でもっとも面積が広く、目立つ部分であるため、様々な意匠が施されている。また、多くはポリエチレンフィルム製である為、容易に自作が可能であるので、プレイヤー自身の好みの意匠を印刷し、フライトを自作しているプレイヤーもいる。材質、形状のみならず意匠まで含めて考えるとフライトの種類は極めて多いものとなり、またバレル、フライトとの組み合わせもある為、ダーツのセッティングは莫大な組み合わせが考えられるようになる。

ダーツボード

ダーツボード

現在最もよく使われているダーツボードはロンドンと言われるタイプで高級品はサイザル麻を圧縮して、廉価品は紙を巻いて作られ、ソフトダーツのダーツボードはプラスチックによって作られる。

ボードの中心にはブル(BULL)と呼ばれる部分がある[5]。このブルを中心に同心円の複数のエリアがあり、スパイダーと呼ばれる放射状の線によってそれぞれ20等分され、その外周にエリアのナンバーが表記されている。同心円の帯状の部分のうち内側のものをトリプルリング(イギリスでは、TripleではなくTreble)、外側のものをダブルリングという。ナンバーはゲーム性を高めるために大きい数字の横に小さい数字がくるような配置になっていることが多い[6]

多くのゲームは盤面の数字が高いほど得点が高くなるが、後述の『ラウンド・ザ・クロック』などのゲームなどのように数字は単なるゲーム上の記号にすぎずに得点とは関係ないものもある。

そのほかヨークシャー、QUADRO240、ロンドン5s、マンチェスター、アイリッシュブラック、アメリカンダーツ、野球ダーツ、ゴルフダーツ、ベルジャンダーツ、磁石でひっつくもの、マジックテープでひっつく物、吸盤でひっつくものなど様々な大きさと種類がある。

得点

得点になるのは一番外側のダブルリングと呼ばれるエリアよりも内側に刺さったものであり、ダブルリングの外側の部分(アウトボード)に刺さっても得点にはならない[3]

  • 中心のブルは二重円になっており、内側のインナーブルの得点は50点(25のダブル扱い)だが、外側のアウターブルの得点は25点または50点でゲームの種類により異なる[7](後述)。
  • 帯状のエリアでは外側にあるダブルリング内ではナンバーの表示の2倍の得点、内側にあるトリプルリング内ではナンバーの表示の3倍の得点となる[7]
  • 中心のブルと帯状のエリア(トリプルリングとダブルリング)を除いたエリアがシングルであり、ナンバーの表示がそのまま得点となる[8]。内側のシングルのエリア(ブルとトリプルリングに挟まれたエリア)をインシングル、外側のシングルのエリア(トリプルリングとダブルリングに挟まれたエリア)をアウトシングルという[6]

1投での最高得点は、20のトリプルリングでの60点となる。

ブル

ボードの中心にはブル(BULL)と呼ばれるエリアがある[5]

呼称と得点
中心にある二重の円について、狭義では内側の円のみをBULL(ブル)またはBULLSEYEと呼び50点、その周辺の部分を得点と同じく25やアウターブルと呼ぶ。広義では二重の円全体をBULLまたはBULLSEYEと言い、内側の円内をインナーブル(「ダブルブル」とも呼ばれる)、その周囲の部分をアウターブル(「シングルブル」とも呼ばれる)という[注 1]。狭義の定義は、スティール・ティップ・ダーツや01で用いられることが多く、広義の定義はソフトダーツやクリケットで用いられることが多い。
01におけるダブル・アウトルールの時、インナーブルでもフィニッシュすることができ、形式的にはインナーブルはダブルとして何の問題もないが、インナーブルはダブルではないもののフィニッシュできる箇所とすることもある。
ソフトダーツにおけるBULL
ソフトダーツの01ゲームにおいては、初心者からプロまで二重円全体を50点とする場合が非常に多い。このルールをFat Bullと呼ぶ。このような背景があることもあり、ソフトダーツではBULLの定義を広義で使うことがほとんどである。ソフトダーツでは、最高点ではあるものの面積が狭いTriple 20を狙うよりも、面積が広くそこそこ高得点のBULLで得点を減らしていく方が効率的であり、クリケットやスティール・ティップ・ダーツよりもはるかにBULLの重要性が高くなる。特に、最近は上級者やプロのトーナメントでFat Bullルールが採用されている場合、フィニッシュにMaster Outルール(トリプル、ダブル、BULLのみフィニッシュ可能とするルール)がほぼセットで採用されているため、トリプルやダブルに比べて面積の広いBULLを前半とフィニッシュで狙うのが定石であり、上級者になればなるほどBULLの重要性が高まる。

ダーツマシン

一定以上の高得点を得たり難易度の高いエリアにダーツを複数刺すなど、高得点のスローをアワードとして区別し特別な演出が設けられているものがある[3]。ただしアワードを得てもゲーム上の利得は無い。ソフトダーツマシンなどでは、個人のカードに累計のアワード数を記録しておけるものもある。


注釈

  1. ^ さらに、二重の円全体をBULL、内側の円のみをBULLSEYEと呼ぶ用法や、内側の円をBULLSEYEと呼びその周辺の部分をBULLと呼ぶ用法もある。
  2. ^ もっとも、1本のダーツを投じることを1スロウ、3本投じることを1ラウンドと解説される場合もある。
  3. ^ 例えば150をフィニッシュするとき、Double Outの場合、定石としてT20-T20-D15、T20-BULL-D20、T20-T18-D18、T19-T19-D18があげられる。Master Outの場合、勿論Double Outのように打っても良いが、BULL-BULL-BULLという方法のみが他に比べて圧倒的に難易度が低いため、実質的にプレイヤーはこの方法しか選択しない。
  4. ^ 例えば4のダブルに刺さった場合は、4×2となり、8までクリアしたものとされ、次のターゲットは9となる。
  5. ^ 持ち点が奇数であった場合は切り上げとなり、1を足した上で半減させる。

出典

  1. ^ JSFD[ダーツボード]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。
  2. ^ JSFD[バレル]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。
  3. ^ a b c 村松治樹『勝つ! ダーツ 最強のテクニックBOOK』2015年、106頁。 
  4. ^ JSFD[フライト]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。
  5. ^ a b 村松治樹『勝つ! ダーツ 最強のテクニックBOOK』2015年、108頁。 
  6. ^ a b 村松治樹『勝つ! ダーツ 最強のテクニックBOOK』2015年、12頁。 
  7. ^ a b 村松治樹『勝つ! ダーツ 最強のテクニックBOOK』2015年、14頁。 
  8. ^ a b 村松治樹『勝つ! ダーツ 最強のテクニックBOOK』2015年、107頁。 
  9. ^ JSFD[少し特殊なケース]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。
  10. ^ JSFD[基礎知識]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。[リンク切れ]
  11. ^ JSFD[各ゲームについて]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。
  12. ^ PDC World ChampionshipDarts Database
  13. ^ PDC World Japan Qualifying EventDarts Database
  14. ^ PDC World Cup of DartsDarts Database
  15. ^ Betfair World Cup of Darts - Quarter-Finals (2013)Professional Darts Corporation
  16. ^ http://jsfd.or.jp/?page_id=101





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