ダイオード ダイオードの基本動作

ダイオード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/02 07:49 UTC 版)

ダイオードの基本動作

ここでは半導体ダイオードの動作について、基本的なpn接合ダイオードを例に取って簡単にその特性を述べる。2極真空管については、真空管の項を参照されたい。

基本構造と熱平衡状態

半導体のpn接合バンド構造の模式図

pn接合ダイオードは、n型半導体とp型半導体が滑らかに繋がった(接合された)構造をしている。pn接合部ではお互いの電子正孔が打ち消し合い、これら多数キャリアの不足した空乏層が形成される。この空乏層内は、n型側は正に帯電し、p型側は負に帯電している。このため内部に電界が発生し、空乏層の両端では電位差(拡散電位)が生じる。ただしそれと釣り合うように内部でキャリアが再結合しようとするので、この状態では両端の電圧は0である。

整流動作

順バイアス

順方向バイアス時のpn接合ダイオード

ダイオードのアノード側に正電圧、カソード側に負電圧を印加することを順バイアスをかけると言う。これはn型半導体電子、p型半導体正孔を注入することになる。これら多数キャリアが過剰となるために空乏層は縮小・消滅し、キャリアは接合部付近で次々に結びついて消滅(再結合)する。全体でみると、これは電子がカソードからアノード側に流れる(=電流がアノードからカソード側に流れる)ことになる。この領域では、電流はバイアス電圧の増加に伴って急激に増加する。また電子正孔の再結合に伴い、これらの持っていたエネルギーが熱(や)として放出される。また、順方向に電流を流すのに必要な電圧を順方向電圧降下と呼ぶ。

逆バイアス

逆方向バイアス時のpn接合ダイオード

アノード側に負電圧を印加することを逆バイアスをかけると言う。この場合、n型領域に正孔、p型領域に電子を注入することになるので、それぞれの領域において多数キャリアが不足する。すると接合部付近の空乏層がさらに大きくなり、内部の電界も強くなるため、拡散電位が大きくなる。この拡散電位が外部から印加された電圧を打ち消すように働くため、逆方向には電流が流れにくくなる。より詳しくは、pn接合の項を参照のこと。

実際の素子では、逆バイアス状態でもごくわずかに逆方向電流(漏れ電流、ドリフト電流)が流れる。さらに逆方向バイアスを増してゆくと、ツェナー降伏やなだれ降伏を起こして急激に電流が流れるようになる。この降伏現象が始まる電圧を(逆方向)降伏電圧または(逆方向)ブレークダウン電圧と言い、降伏によって急激に逆方向電流が増加している領域を降伏領域ブレークダウン領域)と言う。この降伏領域では電流の変化に比して電圧の変化が小さくなるので、この領域での動作特性を積極的に定電圧源として利用するのが定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)である。

注釈

  1. ^ 現代の半導体工学からの視点では、探る過程で表面が荒らされること自体に意味がある。

出典

  1. ^ Frederick Guthrie (October 1873) "On a relation between heat and static electricity," The London, Edinburgh and Dublin Philosophical Magazine and Journal of Science, 4th series, 46 : 257-266.
  2. ^ 1928 Nobel Lecture: Owen W. Richardson, "Thermionic phenomena and the laws which govern them", December 12, 1929
  3. ^ Thomas A. Edison "Electrical Meter" アメリカ合衆国特許第 307,030号 Issue date: Oct 21, 1884
  4. ^ Road to the Transistor”. Jmargolin.com. 2008年9月22日閲覧。
  5. ^ Ferdinand Braun (1874) "Ueber die Stromleitung durch Schwefelmetalle" (On current conduction in metal sulphides), Annalen der Physik und Chemie, 153 : 556-563.
  6. ^ Karl Ferdinand Braun. chem.ch.huji.ac.il
  7. ^ Diode”. Encyclobeamia.solarbotics.net. 2006年4月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年1月2日閲覧。
  8. ^ Sarkar, Tapan K. (2006). History of wireless. USA: John Wiley and Sons. pp. 94, 291–308. ISBN 0-471-71814-9. https://books.google.co.jp/books?id=NBLEAA6QKYkC&pg=PA291&redir_esc=y&hl=ja 
  9. ^ 五十嵐 征輝 (2011). パワー・デバイスIGBT活用の基礎と実際 MOSFETとトランジスタの特徴を活かしたスイッチング素子. Tōkyō: CQ出版. ISBN 9784789836098. OCLC 752002563. https://www.worldcat.org/oclc/752002563 
  10. ^ 液晶を使って光ダイオードを作製 東京工業大学
  11. ^ サーモエレクトロニクスを指向した基礎材料の開発 科学技術振興機構
  12. ^ データダイオード Waterfall片方向セキュリティゲートウェイ 東芝(インダストリアルICTソリューション社)






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