タバコ タバコの概要

タバコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/26 18:26 UTC 版)

タバコ
タバコ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: ナス目 Solanales
: ナス科 Solanaceae
: タバコ属 Nicotiana
: タバコ N. tabacum
学名
Nicotiana tabacum L.
和名
タバコ
英名
cultivated tobacco
common tobacco

Nicotiana tabacumリンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[4]

日本の法令上の平仮名表記は、たばこ事業法2条1号によりタバコ属の植物を指し、その葉は「葉たばこ」(同法2条2号)である。カタカナ表記は農作物として耕作し、葉たばこを得、それを原材料として製造たばこを得る基盤となるタバコ属の植物を指す。そして、その加工製品は製造たばこで、同法2条3号によって「葉たばこを原料の全部又は一部とし、喫煙用、噛み用又は嗅ぎ用に供し得る状態に製造されたもの」と規定される。

名称・語源

日本語のタバコの直接の語源はスペイン語ポルトガル語の「tabaco」である。「NOVO DICIONARIO DA LINGUA PORTUGUESA」によるとタイノ族のtabacoに由来する語で、インディオのY字型の喫煙具のことを意味した[5]

スペイン語の「tabaco」自体の由来についてははっきりしない[6]。伝統的に行われている説としては、カリブ海で話されていたアラワク語族の言語の一種(おそらくタイノ語)でタバコの葉またはパイプを意味する語を借用したというものがあるが、「tabaco」の語は大航海時代以前の1410年ころからすでにスペインやイタリアで使われており、アラビア語で一種の薬草を意味した「ṭabbāq」または「ṭubbāq」に由来するともいう[7]

この単語がフランス語では「tabac」、ドイツ語では「Tabak」、英語では「tobacco」となった。

日本ではスペイン語やポルトガル語の音に近い「タバコ」として広まった。漢字当て字としては「多巴古」、「佗波古」、「多葉粉」、「莨」、「淡婆姑」などが用いられる事があるが、「煙草」と書かれる事が最も多い。中国語では「香煙」と呼ぶ。なお、山口県の一部地域には「煙草谷」(たばこたに)という姓がある。

生物的特徴

タバコの果実
タバコの種子

タバコはナス科タバコ属(Nicotiana)の南アメリカの熱帯原産の植物である[1]。栽培種としては一年草として扱われているが、原産地ではもともと多年草である[1]

タバコ属には約50の種が含まれるが、大規模に栽培される種は、タバコの他とNicotiana rustica(ルスティカタバコ、マルバタバコ)の2種に限られる。 Nicotiana tabacumはシルベストリス(N-sylvestris)という野生種と、トメントシフォルミス (N-tomentosiformis) など、トメントーサ節の野生種とを祖先とする複二倍体である[8]

タバコの種子の形状は回転楕円体である。質量は約50 μg。タバコの種子は光を感知するため発芽には太陽光が必要である。発芽温度は25℃である。

成長すると茎は直立して草丈はおよそ 2 mになる[1]。茎は繊維質で、薪などの代わりとして炊事などに利用されてきたが、電気やガスの普及に伴い利用価値は無くなっており、そのまま次期の肥料として畑に廃棄される。

葉は約30 cmの大きさの楕円形[1]。葉は30枚から40枚が着生し、このうち、葉たばことして採取するのは約6割である。これは位置によってニコチンの含有量が異なるためである。日本国内では葉を5種類に区別し、上から上葉・本葉・合葉・中葉・下葉と呼ぶ。上葉は6%程度、下葉は1%程度のニコチンを含む。葉の長さは20 cmから60 cm、幅は10 cmから30 cm程度である。葉の表面には液を分泌する細胞があり、特有の臭気を帯びる。また、葉には腺毛が多数あり、空気中のポロニウム210を吸着することが知られている[9]

花は夏期に総状花序で茎の先端部分に付く[1]。花冠の形状は漏斗に似ており先端が五裂する[1]。色は種類によって異なるが、栽培種では基部がく、先端は淡紅色のものが多い[1]。果実1つ当り3000粒程度の種子を含む。

毒性

全草にニコチンを含んでおり、誤食すると嘔吐や下痢などの症状を起こす[1]。また、誤食により筋肉の痙攣や麻痺といった症状が現れることがある[1]

この毒性によって、虫害が防がれる[10]

関連する名前

葉がタバコに似ているところから名付けられたものに以下のようなものがある。


  1. ^ a b c d e f g h i j k 佐竹元吉 監修『日本の有毒植物』<フィールドベスト図鑑> 学研教育出版 2012年、ISBN 9784054052697 p.192.
  2. ^ 田中正武. “タバコ(煙草)”. 日本大百科全書(ニッポニカ)(コトバンク). 2019年5月26日閲覧。
  3. ^ Tobacco Facts
  4. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 180. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358199 
  5. ^ 馬場良二「ポルトガル語からの外来語」『国文研究』第53巻、熊本県立大学日本語日本文学会、2008年5月、120(1)-111(10)、NAID 120006773363 
  6. ^ 『日本国語大辞典』第2版「たばこ」の語誌に載せられた諸説を参照
  7. ^ Robert K. Barnhart, ed. (1988), “tobacco”, Chambers Dictionary of Etymology, Chambers, pp. 1146-1147, ISBN 0550142304 
  8. ^ 川床邦夫『中国たばこの世界』<東方選書> 東方書店 1999年、ISBN 9784497995681 pp.2-4.
  9. ^ “タバコに放射性物質含有、製造企業は事実公表せず、厚労省が検証へ…体内被ばくや発がんも”. サイゾー. (2014年5月16日). http://topics.jp.msn.com/wadai/cyzo/article.aspx?articleid=4396358 2014年5月19日閲覧。 
  10. ^ タバコ”. 神戸薬科大学. 2023年5月31日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 「肥料施用学」タバコ”. BSI 生物科学研究所. 2022年1月13日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i j k l たばこができるまで 栽培”. JT 日本たばこ産業. 2022年1月13日閲覧。
  13. ^ ヨーロッパと「たばこ」の関わり スペインと「たばこ」”. JTウェブサイト. 2023年5月31日閲覧。
  14. ^ 進めたい,日本のたばこ対策(鼎談)”. www.med.or.jp. 2023年5月31日閲覧。
  15. ^ 其の七 たばこ屋の女房は血止めほどまける”. JTウェブサイト. 2023年5月31日閲覧。
  16. ^ タバコ:武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園”. www.takeda.co.jp. 2023年5月31日閲覧。
  17. ^ NPO法人平戸観光ウェルカムガイド『平戸検定公式テキストブック』49〜50ページ。
  18. ^ 丸山知雄ほか『タバコ産業の政治経済学』 昭和堂 2021年、ISBN 9784812220245 p.34.
  19. ^ 日本たばこ産業 (JT) ウェブサイト内 たばこ旅日和 「長崎県『煙草初植地の石碑』」
  20. ^ a b c d e f g h i j k 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)


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