シアノアクリレート
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/26 16:43 UTC 版)
用途
挙動
シアノアクリレートは、主に接着剤として使用されるが、効果的に使用するには、いくつか注意と知識が必要である。室温での保存期間は未開封で約12ヶ月、開封後は1ヶ月である。エポキシ樹脂系接着剤とは異なり、隙間を埋めるのには適していない。また、厚塗りよりも非常に薄く塗布するほうが効果的である。人間の皮膚や組織を含む多くの物質を接着でき、実際に医療用の製品もある。綿や羊毛のように吸湿性のある天然繊維に付着すると急激に硬化して発熱する。
シアノアクリレートは剪断強度が低く、あとで削り取るような部品の仮止め用接着剤として使用することもある。このような仮止めの例としては、旋盤上の捨てブロックへの工作物の取付け、またピンやボルトの接着固定などが挙げられる。また、硬化時間は長いがより強力な他の接着剤と併用し、他の接着剤の強度が発現するまで保持するために使うこともある。
電子機器
シアノアクリレートは、電子機器の試作品(ワイヤラッピングを参照)やラジコン模型飛行機の組み立てにおいて、ナットとボルトが緩まないようにするために使用される。金属の接着性が高く、汎用性も高いので、模型やミニチュア愛好家に人気がある[要出典]。
観賞用の水槽
シアノアクリレートは、アクアリウム愛好家がサンゴの株分け(fragging)を行なう際にも使用される。ミドリイシのようなハードコーラルは、切断枝をライブロックやセラミック製の台座(コーラルプラグ)に接着して、新しい株を生育させることができる。シアノアクリレートは水槽内で直接使用しても安全で、エポキシパテやシリコーンよりも硬化が早い。水分と反応して硬化するのも、水中で使用するのに都合がよい。もとのシアノアクリレートは、水分と熱の両方に対して「弱い」接着剤として分類されている[7]が、無水フタル酸を添加すると耐水性・耐熱性とも高まると報告されている[8]。
平滑表面の接着
一般的なシアノアクリレート接着剤は、平滑なガラスにはあまりよく接着しない。ただし、ガラス用に特別配合されたシアノアクリレートまたはエポキシを塗布する前の仮止めとして使用することはできる[9]。ガラス繊維のマットや薄い織物の周囲を機械的に接着することで、継ぎ目を補強したり、小さな部品を組み立てることができる。
充填材
重曹(炭酸水素ナトリウム)と混ぜることで硬く軽量な充填剤として使うこともできる。この場合、最初に重曹を隙間に詰め、そこに接着剤を滴下する。これは、接着剤が効きにくい多孔質材料にも使えるので、模型飛行機愛好家がポリスチレン発泡部品を組み立てたり修理したりするのに使うことがある。また、軽量飛行機のプロペラ羽根先端の小さな欠けを修復するのに使うこともある。
シアノアクリレートのブランドの1つである「SupaFix」は、充填剤として酸化カルシウムを使用しており、モルタルのような手触りのより硬い材料となる。これは硬質材料を接合したり、ひび割れた鋳物を補修するために使用できる[10]。
科学捜査
シアノアクリレートは、ガラス、プラスチックなどの非多孔質表面上の見えない指紋を捉えるための科学捜査手法にも使用される[11]。シアノアクリレートを温めて蒸散させ、目に見えない指紋残渣と大気中の水分を反応させると、指紋隆起部上に白いポリマーが形成されるので、その隆起部を記録する。形成されたポリマーは、白いプラスチックなどの上でなければ肉眼でも確認できるが、蛍光や非蛍光染色との併用で見えない、または見えにくい指紋を強調して見やすくすることができる。
木工
木工には希薄なシアノアクリレート接着剤が速乾性で光沢のある仕上げ材として使用される。硬化速度を調節するために、油(沸騰させた亜麻仁油など)が使用される。また、隙間やひび割れを埋めるためにおがくずと組み合わせて使う。これはピアノ響板、木製楽器、木製家具の補修にも使われる手法である。また、ペンブランク(ペンの軸胴部)の仕上げにも使われることがあり、この場合は旋盤を使ってシアノアクリレートを薄く複数回塗り重ねて硬く透明な表面を作り、光沢を出すため研磨して仕上げる。
医療
CA接着剤は、1970年代初頭またはそれ以前まで、骨、皮およびカメの甲羅を修復するために獣医学で使用されていた。ベトナム戦争で病院に運ぶまでに負傷した兵士の出血を抑えるためにCAスプレーが使用されている、と1966年にハリー・クーヴァーは語っている。n-ブチルシアノアクリレートは、1970年代から医療に使用されてきた。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、皮膚を刺激する可能性があるとして、「Dermabond」の医療用接着剤としての使用を1998年まで承認していなかった[12]。研究により、シアノアクリレートは従来の吻合(縫合)よりも創傷閉鎖に対してより安全で機能的であることが確認されている[13]。接着剤は、創傷閉鎖について以下の点で優れている[14][15]。
シアノアクリレートを使用して、指先の皮膚の損傷を修復するロッククライマーもいる[16][17]。同様に、弦楽器奏者は手指(指たこ)の保護にシアノアクリレートを使用することもある。CA接着剤は毒性も非常に低く、素早く皮膚を被覆できるが、接着剤とその飛散成分を大量に皮膚につけると、薬傷を引き起こす可能性がある[要出典]。
一般的なシアノアクリレート接着剤は100%エチルシアノアクリレート(ECA)であるが、用途に応じて配合がカスタマイズされている。皮膚用の接着剤としては、以下の3種が販売されている[18]。
- 2-オクチルシアノアクリレート(販売名「Dermabond」、「SurgiSeal」)
- n-2-ブチルシアノアクリレート(販売名「Histoacryl」、「Indermil」、「GluStitch」、「GluSeal」、「PeriAcryl」、「LiquiBand」)
- 2-エチルシアノアクリレート(販売名「Epiglu」)
アーチェリー
シアノアクリレートはアーチェリーで矢のシャフトに矢羽を付けるために使われる。矢羽用接着剤には、シアノアクリレートをキットとしてパッケージ化したものがある[19]。接着剤チューブには、矢羽をシャフトの所望の位置に固定するために、細長い金属ノズルを取り付けて接着剤を精度よく塗布できるようになっているものが多い。
化粧品
シアノアクリレートは、爪の先端や爪を覆う人工爪の強化のために、美容産業で「爪の接着剤」として使用されているが、眼に入って薬傷を負う事故も発生している[20]。
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- ^ WEICON Contact Cyanoacrylate Adhesives
- ^ CA PLUS Adhesives, Inc.
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