コンコルド コンコルドの概要

コンコルド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/07/31 06:09 UTC 版)

コンコルド

フィルトン空港を離陸したコンコルド(2003年11月26日)

コンコルドConcorde)は、イギリスフランスが共同開発した超音速旅客機(SST; supersonic transport)であった。2003年に全機が退役した。

概要

エールフランス機

イギリスBACフランスシュド・アビアシオンなどが共同で開発した超音速旅客機。初飛行は1969年3月1日。原型機4機を含め、20機が製造された。

高度5万5,000から6万フィートという、通常の旅客機の飛行高度の2倍もの高度を、マッハ2.0で飛行した。定期国際運航路線に就航した唯一の超音速民間旅客機でもあった。

開発当時は、世界中から発注があったものの、ソニックブームなどの環境問題、開発の遅滞やそれに伴う価格の高騰、また大量輸送と低コスト化の流れを受けてその多くがキャンセルとなった。特にニューヨーク便就航に際しては激しい反対運動が展開され、法廷闘争にまで至った。最終的にはエールフランスブリティッシュ・エアウェイズの2社のみによる運行に留まる。

2000年7月25日に発生した墜落事故2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロによって、低迷していた航空需要下での収益性改善が望めなくなった事で、2003年5月にエールフランス、同年10月24日にブリティッシュ・エアウェイズが営業飛行を終了、2003年11月26日ヒースロー空港着陸をもって全機が退役した。

超音速飛行を追求した美しいデザインや、ほぼ唯一の超音速旅客機だったこともあり、現在でも根強い人気を持つ。

歴史

開発

コンコルドのプロトタイプ機

各国が超音速旅客機開発競争にしのぎを削る中、イギリスはブリストル223、フランスはシュド・シュペル・カラベルなどの超音速旅客機の研究を独自に行っていた。1962年に英仏両国はそれまで独自に行っていた開発を共同で行う方針に転換した。イギリスからはBAC、フランスからはシュド・アビアシオンが開発に参加した。

開発の主導権や名称などについて2国間での対立はあったものの、1969年3月2日に原型機が初飛行に成功、同年10月1日には音速の壁を突破した。オージー翼を採用した独特の形状を持ち、高迎え角になる離着陸時に下方視界確保のため機首が折れ曲がるなどの特徴を持ち、マッハ2の超音速で巡航するコンコルドの勇姿は未来を感じさせた。

なお同時にアメリカでも超音速旅客機の開発が行われ、ボーイングロッキードマクドネル・ダグラスなどによる提案が行われた結果、より高速、大型のボーイング2707の開発が進んでいたが、その後開発がキャンセルされた。

就航

その後ソニックブームオイルショックによる燃料費高騰などを受けて多くの航空会社が発注をキャンセルしたものの、1976年1月21日から定期的な運航を開始し、この日にエールフランスパリ-ダカール-リオデジャネイロ線に、ブリティッシュ・エアウェイズロンドン-バーレーン線に就航させ、間もなく他の路線にも就航させた。

主な定期運航路線

エールフランス

ブリティッシュ・エアウェイズ

商業的失敗

アメリカ合衆国テキサス州訪問にブリティッシュ・エアウェイズのコンコルドを使用したイギリスのエリザベス2世女王とエディンバラ公夫妻(1991年5月20日)

一時は上記のとおり世界中から受注したもののキャンセルが相次ぎ、製造は最終的には英仏の航空会社向けに16機(これ以外に原型機が4機)のみが行われたに過ぎず、商業的には失敗に終わった。開発当時は「250機で採算ラインに乗る」ともいわれたが、採算ラインに乗ることはなく1976年11月2日に製造中止が決定された。不人気だった理由には以下のようなものがある。

  • 通常よりも長い滑走距離を必要とすること、またその騒音およびソニックブームの影響を避けるために航路や乗り入れ先を選ぶコンコルドは、限られた航路に就航できたにすぎなかった。さらに「ソニックブームを発生させるため」との理由でアメリカをはじめとするいくつかの国では、超音速飛行を海上でしか認めなかった。また、アメリカジョン・F・ケネディ国際空港への離着陸が認められるまでにも、裁判による決着を要した。
  • 飛行距離が短いことに加えて上記の諸事情から、大西洋は飛び越せても途中給油無しでは太平洋を越えられず、日本や香港などへの極東路線を開拓できなかった。
  • 乗客の定員が100人と少なく、運賃は他機種のファーストクラスの約20%増し[1]と高額であったため、乗客はごく限られていた。経済的にも収益が上がらない上、オイルショックによる燃料価格の高騰がこれに拍車をかけた。
  • 旅客機による飛行が、エグゼクティブ層向けから運賃が安くなることで大衆化するにつれ、航空業界はボーイング747のように低コストでかつ大量輸送が可能な機体を重視するようになった。

これらの理由により、最終的にエールフランスとブリティッシュ・エアウェイズの2社のみによる運行にとどまった上、1990年代には需要と収益性が高い大西洋横断路線への定期運行に集約された。これらの定期便は飛行時間短縮を望む富裕層や準富裕層顧客を中心に利用されたほか、余剰機材も団体客向けのチャーター便や、英仏両国の政府専用機としてチャーターされた。

わずか2社により十数機が使用されていたのみだが人気を博したため、エールフランスとブリティッシュ・エアウェイズの2社ともに両社のイメージリーダーとして各種広告に使用した。さらに高い人気を受けて、1990年代後半には、21世紀に入っても継続使用できるように様々な近代化改修を行うことも検討された。

終焉

ロンドン・ヒースロー空港からブリストルへのコンコルドの最終飛行
2003年11月26日

2000年7月25日エールフランス機(Model No.101、登録番号F-BTSC)がパリシャルル・ド・ゴール空港を離陸時に、滑走路上に落ちていたコンチネンタル航空マクドネル・ダグラスDC-10型機から脱落した部品により主脚のタイヤが破裂し、タイヤ片が主翼下面に当たり燃料タンクを破損、直後に漏れ出た燃料に引火、そのまま炎上・墜落した。地上で巻き込まれた犠牲者を含め113人が死亡するという大惨事になった。小さなトラブルは頻繁にあったが、1969年の初飛行以来大規模な事故は初めてだった。エールフランスは即日、ブリティッシュ・エアウェイズもイギリスの航空当局がコンコルドの耐空証明を取り消すことが確実視されたことにより8月15日に、運航停止を決定した。

事故調査に続いて、燃料タンクのケブラー繊維の補強、耐パンク性を強化したミシュラン製のタイヤ、燃焼装置の隔離処理等の改修を受けた後、2001年11月7日に運航が再開された。しかし燃費が悪く航空機関士が必要なコックピットなど、旧式のシステムであるコンコルドの運航はコストがかかり、直前にアメリカで発生した同時多発テロで低迷していた航空需要下では収益性の改善は望み薄となった。

2003年4月10日、ブリティッシュ・エアウェイズとエールフランスは同年10月をもってコンコルドの商用運航を停止することを発表した。エールフランス機は5月、ブリティッシュ・エアウェイズ機も2003年10月24日に最後の営業飛行を終え、後継機もなく超音速旅客機は姿を消した。以後、民間人が航空路線で超音速飛行を体験する事は不可能になった。なお、航空路線でなければ民間人向けに超音速戦闘機の体験飛行が行われているため、超音速飛行を体験すること自体は可能ではある。また、2011年6月20日エアバスの親会社が2050年をめどに新たな音速を超える航空機を開発することを発表した。

一時はヴァージン・アトランティック航空がブリティッシュ・エアウェイズのコンコルドを1機1ポンドで買い取ると表明した。ヴァージン・アトランティック航空はコンコルドを買い取る事に熱心だった模様で、機内販売グッズとしてヴァージン・アトランティック航空カラーリングのコンコルド模型を限定販売していた。しかし、ブリティッシュ・エアウェイズはこの申し出を拒絶した。英仏両国で就役していたコンコルド各機は、イギリスやフランス、アメリカをはじめとする世界各地の航空関連博物館に売却・寄贈され、今も往時の姿を示している。

名称

「コンコルド」という名称は、フランス語の「concorde」と英語の「concord」、両単語とも「協調」や「調和」を意味し、ローマ神話コンコルディアに由来している。しかしフランス側の強い希望により、フランス語式の「concorde」表記が、英語・フランス語の両言語における共通の正式スペリングとなった。ただし、英語圏での発音は、フランス語式の「concorde(コンコルド)」よりはむしろ、英語の「concord(コンコード)」の読みに近い。


  1. ^ 「世界のエアライン」1979年 ブリティッシュ・エアウェイズ広告(表4)
  2. ^ http://www.concordesst.com/powerplant.html
  3. ^ 「レジェンド・オブ・コンコルド」
  4. ^ 『コズモ別冊UFO写真集1』コズモ出版社、1974年10月20日発行(58-59ページ)。ORTFの放送画面を撮った掲載写真は当時のUPI-サンテレフォート提供のもの。


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