クラップ クラップの概要

クラップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/31 15:19 UTC 版)

作中の軍事勢力のひとつである地球連邦軍の宇宙巡洋艦で、サラミス級巡洋艦に替わって宇宙世紀0090年代以降の主力艦艇となっている。

本記事では、改修艦であるスペース・アークリーンホースについても記述する。

名称

『逆襲のシャア』劇場パンフレットでは単に「巡洋艦」とされ[1]、劇場公開当時に発行されたムックでは「連邦軍巡洋艦」とされていた[2][3]。「クラップ級」とクラス名になったのは公開翌年の1989年発行の書籍『ENTERTAINMENT BIBLE (EB)』シリーズからである[4]

なお、『逆襲のシャア』の総監督である富野由悠季がそれ以前に制作したアニメ『伝説巨神イデオン』にも、同名の宇宙巡洋艦が登場している。

設定解説

諸元
クラップ
CLOP
分類 巡洋艦
艦級 クラップ級
所属 地球連邦軍
全長 292m[5]
全幅 133m[5]
推進機関 熱核ジェット / ロケット・エンジン[6]
武装 2連装メガ粒子砲×2[7]
ミサイル発射管×6[6]
8連装ミサイル・ランチャー[6]
対空機銃×14[7]

当初からモビルスーツ (MS) の運用を考慮して設計された巡洋艦であり、それまでの連邦軍の同系艦にくらべて全体的な能力のバランスがよいとされる[8]。同時期に建造された[9]ラー・カイラム級(カイラム級)戦艦と設計思想を同じくしており[10]、そのまま小型化したような外観をもっている[3]。中央部と両舷のエンジン・ブロックに推進機関を搭載、ブロック直下に放熱板[注 2]を配するというレイアウトも共通している[11]。構造や部材の互換性も高く[6]、ブリッジは上部のアンテナが1本(カイラム級は2本)であることを除けばまったく同じ構造であり、戦闘ブリッジも備えている[11]

主砲はカイラム級とほぼ同型の[11]2連装メガ粒子砲塔を両舷に各1基装備。艦首にはミサイル発射管6門、ブリッジ後方に8連装ミサイル・ランチャーを後ろ向きに装備している[3]。対空機銃はおもに単装砲が採用されており[11]、カイラム級と同型のブリッジ側面に装備された2門のみ連装砲となっている。

MSの搭載数は不明であるが、劇中では少なくとも4機の搭載が確認できる(劇中での活躍を参照)。また、小説版『機動戦士ガンダムUC』ではリディ・マーセナスがクラップ級「キャロット」のMS搭載数を「確か6機」としている[12]。標準の艦体色はグレーを基調にカタパルトとプロペラントタンク[3]がオレンジ、推進器周縁が赤で塗り分けられている。

劇中での活躍

劇場版『逆襲のシャア』では、宇宙世紀0093年の5thルナの地球落下後にアムロ・レイ大尉がブースター・ベッドで月へ向けて発進する際、ロンド・ベル隊旗艦「ラー・カイラム」に随伴する2隻が初登場(艦名不詳)。ネオ・ジオン軍MS隊との交戦後、艦隊でサイド1コロニー「ロンデニオン」に入港する。

その後、ロンデニオンに駐留する1番艦の[10]「クラップ」(ロンド・ベル隊所属)に、地球連邦軍参謀次官のアデナウアー・パラヤが乗艦しルナツーでのネオ・ジオン艦隊の武装解除に立ち会う。ジェガン3機を偵察に発進させるも騙し討ちに遭い(デッキには1機が残っているのが確認できる)、クェス・パラヤヤクト・ドーガの攻撃によりメイン・ブリッジが破損、アデナウアーや艦長らが戦死する。直後に後方へミサイルを連射し敵機の右腕を破壊するも、すぐにギュネイ・ガスのヤクト・ドーガに後部ミサイル・ランチャーを破壊される。しかし撃沈はされず、満身創痍の状態でラー・カイラムと接触して状況を報告する。

ラー・カイラムのロンデニオン出港時には3隻が随伴(同型艦を参照)。アクシズの地球降下阻止作戦に参加するが、ラー・カイラムによるアクシズ爆破以降は1隻しか確認できない。ロンド・ベル隊所属艦以外にも、同隊に増援のMS隊を送る艦隊の中に、サラミス改級巡洋艦とともに2隻が確認できる。

30年後の0123年を描いた劇場アニメ『機動戦士ガンダムF91』では、フロンティア・サイドに侵攻するクロスボーン・バンガードに対抗する月からの援軍として、カイラム級を旗艦として多数が登場。ドレル大隊との戦闘では犠牲を払いながら健闘するも、ラフレシアの攻撃により全滅する。艦体色はライト・グレーを基調にカタパルトがライト・グリーン、推進器周縁が赤(一部の艦はMSデッキのハッチも)、プロペラントタンクはグレーで塗り分けられている。

さらに30年後の0153年を描いたテレビアニメ『機動戦士Vガンダム』では、リガ・ミリティアに協力する連邦軍の艦が登場。第15話ではバグレ隊の旗艦として最後の1隻となってもザンスカール帝国軍のカイラスギリーを攻撃するが、クロノクル・アシャートムリアットにブリッジに穴を開けられ投降、拿捕される。艦体色はカーキでプロペラントタンクが赤、対空機銃は連装砲となっている。

第41話以降はムバラク艦隊所属艦が多数登場し、ザンスカールのエンジェル・ハイロゥ作戦阻止に参加する。艦体色はライト・ブラウンで、ほかの塗り分けは標準塗装と同じ。第49話では艦首にビーム・シールドを装備し、展開している艦も確認できる(ただし、次のシーンでは装備していない)。

同型艦

ラー・ザイム

劇場版『逆襲のシャア』に登場。艦名はアフレコ台本によるが[13]、ゲーム『SDガンダム GGENERATION』シリーズでは「ラー・カイム」とされた[注 3]

ロンド・ベル隊所属で、アクシズの地球降下阻止作戦に参加する。

小説版『逆襲のシャア(ハイ・ストリーマー)』では、双胴の宇宙巡洋艦として描かれており、クラップ級とは異なる。また、ラー・カイラムに異動する以前のアムロ・レイが配属されている。艦長はマシアス・テスタ少佐。サイド1コロニー「スウィート・ウォーター」内に艦を入港させ、反連邦組織エグムとの戦闘を敢行した結果、住民に死者を出す不祥事を引き起こす。その後ロンデニオンに帰投し、極秘任務(艤装補強ともいわれる)のためロンド・ベル隊から離れてルナツーに向かう。ネオ・ジオン軍のルナツー急襲の際には、クラップの士官によれば拿捕されたと思われるとされており、劇場版とは異なる見解となっている。

『逆襲のシャア』脚本の初期稿を元にした小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』では、ラー・カイラムの盾となって結果的にハサウェイ・ノアが出撃する機会を作った直後にα・アジールに撃沈されるなど、劇場版におけるラー・チャターに近い役割となっている。

漫画『機動戦士ムーンガンダム』では、宇宙世紀0092年に消息を絶ったラー・ギルスを捜索する任務を受け、アムロの乗艦として登場。『ハイ・ストリーマー』での設定を踏まえた描写がなされている。

ラー・キェム

劇場版『逆襲のシャア』に登場。艦名はアフレコ台本によるが[13]、「ラー・ギエム[4]とする資料もあるほか、ゲーム『GGNENERATION』シリーズなどでは「ラー・ケイム」とされた[14]。「ラー・キム」と表記する資料もある[11]

ロンド・ベル隊所属で、アクシズの地球降下阻止作戦に参加する。

ラー・チャター

劇場版『逆襲のシャア』に登場。EBシリーズではクラップ級の代表として取り上げられている[4]

ロンド・ベル隊所属で、アクシズの地球降下阻止作戦に参加するが、ラー・カイラムの盾となって轟沈。小説『ハイ・ストリーマー』でも同様である。

キャロット

アニメ『機動戦士ガンダムUC』に登場。

宇宙世紀0096年にコロニー「インダストリアル7」へ向かう「袖付き」の偽装貨物船ガランシェールを追跡・発砲し、スタークジェガン1機、ジェガンD型2機を出撃させるも、マリーダ・クルスクシャトリヤに返り討ちに遭う。ただし、艦自体は登場しない。

アニメ劇中では艦名は明らかにされないが、小説版ではその後のネェル・アーガマMS隊出撃の際に、機付長ジョナ・ギブニーがリディに上記の出来事を伝える際に言及されている。ロンド・ベル第2群所属とされる[12]。コミカライズ版『機動戦士ガンダムUC バンデシネ』では、リディが増援として出撃する際、オペレーターのミヒロ・オイワッケンとの会話で言及される[15]

小説版および『UC バンデシネ』ではのちにロンド・ベル第3群第16任務隊所属となり、テネンバウムとともにガランシェール追跡を続行している。MS小隊「トライスター」と合流しガランシェールを捕捉、停船勧告のためMS隊が出撃した隙に本艦はフル・フロンタルシナンジュの攻撃を受け轟沈する[16][17]。『バンデシネ』では、対空機銃は連装砲になっている[17]。なお、アニメ版でもトライスターがガランシェールを追跡する場面はあるが、経緯および展開は異なっており、母艦についても明らかにされていない。

ダマスカス

Damascus[注 4]

劇場アニメ『機動戦士ガンダムNT』に登場。初出は、同作品のベースとなった小説版『機動戦士ガンダムUC』の追補作品「不死鳥狩り」。

ほかの同型艦よりも格納庫が拡張されており[18]、外観上は艦体中央が横に膨らんでいる。宇宙世紀0097年にユニコーンガンダム3号機「フェネクス」を捕獲する「不死鳥狩り」作戦を展開する「シェザール」隊の母艦となる。艦長はアバーエフ大佐。艦体色は白を基調に、カタパルト、放熱板、プロペラントタンクがダーク・グレー、推進器周縁などが赤で塗り分けられている。

映像作品以外

ガーパイク
漫画『機動戦士ガンダムF91プリクエル』に登場。0123年のクロスボーン・バンガード襲撃の直前、新型MSの競合試験においてガンダムF91#F91の模擬戦に立ち会う。艦長はシェル・バークス中佐。
ラー・エルム
小説『ベルトーチカ・チルドレン』に登場。ロンド・ベル隊所属で、ラー・ザイムに続いて撃沈される。
テネンバウム
小説版『UC』およびコミカライズ版『UC バンデシネ』に登場。
ロンド・ベル第3群第16任務隊としてキャロットとともにガランシェールを追跡するが、シナンジュの攻撃によりキャロットに続いて轟沈。
ウンカイ (Unkai)
『UC』の追補作品「戦後の戦争」、および漫画『機動戦士ガンダムUC バンデシネ Episode:0』に登場。
0094年6月15日、サイド1コロニー「ヘヴン」から2基のコンテナ(中身はシナンジュ・スタイン)をグラナダに運搬する任務に就くが、ネオ・ジオン残党の襲撃に遭う。実際には一部の連邦軍幹部およびアナハイム・エレクトロニクス社が画策した裏取引による「強奪に見せかけた譲渡」であるが、情報局員のリークによって一部MSパイロットが発砲し戦闘となる。その結果、強奪されたコンテナの中身であるシナンジュ・スタインに搭乗したフル・フロンタル大佐の攻撃により轟沈する。
艦体色は薄紫を基調に、カタパルトや推進器周縁が薄茶色に塗り分けられている。漫画版によれば艦長はゲイリー・ガンゼル。搭載MSはジェガン(D型先行配備機)プロト・スタークジェガン(漫画版では通常のスタークジェガン)も1機配備されている。
ラー・デルス (Ra Dels)
「戦後の戦争」および『UC バンデシネ Episode:0』に登場。
ウンカイの護衛任務に就くが、こちらもシナンジュ・スタインの攻撃によって轟沈。
艦体色は白を基調に、カタパルトがグレー、推進器周縁が赤、放熱板が紫に塗り分けられている。漫画版によれば艦長はササイという女性で、裏取引のことは知らず、ゲイリー艦長を叱責する。搭載MSはジェガン(D型先行配備機)。
ラー・ギルス (Ra-Gills[6])
漫画『機動戦士ムーンガンダム』に登場。
ロンド・ベル隊所属で、艦籍番号はSCC-180926[6]。0092年にサイド1コロニー「ムーンムーン」近傍を航行する不審船(偽装貨物船「アタラント3」)を発見、停船命令を無視され交戦状態となる。
艦体色はグレーを基調に、本体の喫水部[6]およびMSデッキのハッチや推進器周縁が白、プロペラントタンクがオレンジで塗り分けられている。艦長はラウロ・バチーク。搭載MSはジムIIIジムIII・パワードシータプラス
ラフィン・ブル
漫画『F91プリクエル』に登場。サナリィ所属で、クロスボーン・バンガード侵攻前の0123年のフロンティア・サイドで稼働試験をおこなうF91ヴァイタル2機の母艦。両舷のエンジン・ブロックの前部にデッキが増設されている。試験観測用のアイザックも搭載されている(のちに改修型2機に増加)。

注釈

  1. ^ "clop"とは馬が歩く時の擬音語である。
  2. ^ 劇場パンフレットでは「巨大なレーダー」とされていた[1]
  3. ^ 「ラー・カイザー」という艦名が記載された資料もあるが[10]、ラー・チャターやラー・キエムとともに紹介されており、ラー・ザイムの誤りである可能性が高い。
  4. ^ 『ガンダムNT』劇中のブリッジのモニター表示より。
  5. ^ 劇場公開当時に発行された書籍では、老朽化した巡洋艦を練習艦として運用したものとされていた[24][25]
  6. ^ 小説版では、艦長をはじめ正規の将校や下士官も逃げ出したのだろうとシーブックが推測し、メカニックのナント・ルースが何も言えなくなる場面がある[22]。また、正規の軍人は逃亡したと断定する資料もある[26]。アニメ劇中では、正規の艦長については語られない。
  7. ^ SDガンダム GGENERATION GENESIS』のプロフィールモードでは、クラップ級に似ているが関連は不明とされた。
  8. ^ スクイード同様、内側のカタパルトも使っている。
  9. ^ ゲーム「スーパーロボット大戦シリーズ」では、ハイパー・メガ粒子砲が搭載されている。

出典



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