キャンプ キャンプの概要

キャンプ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/27 14:18 UTC 版)

近代的なキャンプを始めた人物として名が挙げられることがあるThomas Hiram Holding(1844 – 1930)がキャンプをしている様子。ロープと二本の棒と布で雨よけの三角屋根をつくり、簡素な調理道具などを持参している。
でテントを設営して行うキャンプ(ウェストバージニア、2007年)
冬季のキャンプ(スウェーデンにて)雪の上にテントを設営している。
空の下でのキャンピング(カリフォルニア州デスヴァレー国立公園、2012年)
樹木にハンモックと 露よけ用タープを張って夜をすごすキャンプ。これが可能なのは基本的には低地で、かつ比較的暖かい夏季のみ。高地や他の季節では凍えてしまう。

日本語の「野営」や「露営」にあたる英語は正しくは 「camping キャンピン(グ)」 である。camp のほうはあくまで「野」(野外)という意味である。

概説

キャンプというのは、野外で一時的な生活をすることを指している。ラテン語の「campus カンプス」とかフランス語の「champ シャン」というのは「野」を意味するが、英語のcampやcampingはそれと同系統の語である。

現在では、「キャンプ」と言うと、その多くがテントや即席の小屋状のもので過ごすことが指されていることが多くはあるが、それは結果としてそうなっているにすぎず、キャンプというのは実際には特にそういったものに限定されているわけではなく、岩窟などの自然の地形を利用したものもキャンプであるし、登山などでは簡単なツェルトなどでビバークしたり冬季の積雪期に雪洞など掘ってそれを利用するものもキャンプに当たるし、広義には特に幕や屋根類が無くとも、ともかく野(野外、屋外)で一時的に生活することをキャンプという[1]

英語のcampの意味では野営以外に「兵役」「陣営」「陣取る」などの意味があり、野営はしないがコンサートや同じ目的で人々が集う事を「キャンプ」と称することがある。プロ野球のキャンプもそう呼ばれる(キャンプ_(日本プロ野球))。

現在、キャンプは様々な目的で行われている。現在、しばしばキャンプに期待されているのは、キャンプで同志(仲間)と協同生活を行うことで、自己を見つめなおしつつ、自分の中の協調性責任感ボランティア精神(奉仕精神)や連帯感や友情を育むことであり、キャンプはものの見方や見え方を変え、人生観価値観すら変えてゆく力がある、と考えられている[1]

同志と一緒に活動していれば何処でも同じというわけではなく、キャンプというのは特に自然の中で活動するからこそ大きな効能がもたらされる、と考えられている。人為的・作為的な空間であり一種の保護装置と化してしまった都市から離れて、大自然の中で生活すると、都市での日常行動を打ち破る創造的行動が要求されることになるのであり、またキャンプする人は勇気と活力でもって自然と接するうちに、自然の美しさや厳しさを知ることもできる[1]。またキャンプの一連の活動の中で登山・釣り・水泳などの活動をするうちに知らず知らずのうちに身体を鍛えることもできる[1]

歴史

そもそも人類はその歴史をふりかえってみれば、長いあいだキャンプ生活を体験してきたと言える[1]

人類の野外生活の歴史

北アメリカ、Siksikaインディアンのティピー群(モンタナ州
米国の開拓者たちは幌馬車に生活道具を積み込んでおり、野外で生活できた。
ハワイのマウナロア山における探検隊のキャンプ(1841年、隊所属の画家が描いたもの)

現代の「キャンプ」が生まれる背景となっているものを理解するために、人類の野外での生活がもともとどのようなものであったか、学術的な分類やいくつかの事例をピックアップすることで紹介する。

人類というのは起源の地アフリカを離れ、長い長い年月をかけてヨーロッパや中央アジア・東アジア、南米、北米などへと移動してゆき地球上で広がったということが20世紀の研究で次第に分かってきている。人類が地球上で広がっていったこの時代、新しい環境、新天地を求めて野外で移動を繰り返しつつ生活していた人々がかなりの割合いたわけである。

人類学などでは、もともと人類のほとんどは狩猟採集生活を送っていた、としている。また学術の世界などでは人類の生活形態を移動型と定住型とに大分類することがあるが、太古の時代は前者の型、つまり狩猟・採集をしつつ移動したり、また遊牧をする人々(遊牧民)の割合が大きかったということが知られている。

水場の付近の木々で火を起こし、調理を行い暖をとり、時には火を使ってクマオオカミなど野生の動物を遠ざけるなどしたかも知れない。しかたなく何ら雨露を防ぐものがない状態で生活する場合もあっただろうが、岩壁の張り出し・岩窟・洞穴・大木などがあればそれを利用して雨露をしのいだこともあったろうし、その場で得られる樹木などの材料や皮などで雨・露をしのいだこともあったかも知れないし、天幕を作りそれを張る知恵を得てからはそれも用いるようになったのだろうと考えられている。

古代のローマ帝国は本拠地イタリア半島から周囲の地域を次々と制圧してゆき巨大な帝国となったのであったが、ローマ帝国の軍人たちはかなたの戦地に向かい、数か月から数年の間、そこで滞在しつつ様々な軍事行動を行った。彼らは木の棒を立て、そこに布(や皮)を張るテントを使用していたらしいことが遺物などによって判っている。

たとえば北米の原住民(インディアン)たちのうち平原で移動生活を行うものたちはティピーを張り、その中で生活をしていた。

また例えば、モンゴルの大平原で遊牧を行っていたモンゴル人ゲルを用いて大自然の中で生活を送っていた。ゲルは移動式可能でありながら、かなり大掛かりで本格的な住居できわめて快適な住環境をもたらす。こうして自然の中で自在に移動しつつ生活することができた彼らは、13世紀ごろにはモンゴル以外に東アジアを制覇するだけでなく、西方遥かかなたヨーロッパの地まで進出することができ、地球規模の巨大な帝国を築くことになった。

人類の歴史を振り返ると、次第に定住型の生活をする人の割合が増えたわけであるが、特に欧米では近代化が進められるにつれ、都市部の人工的な環境で、自然からすっかり切りはなされた状態で生活する人々の人口の割合が相当に増えることになった。

近・現代のキャンピングの誕生

19世紀後半になると、野外で生活することに教育的な意味を認め、一定のプログラムのもとで集団生活が行われるようになった[1]。かつて人類の大半が経験していた野外での生活を、近代産業社会の中で再体験するものとして現代流のキャンプは誕生したのである[1]1861年に米国コネティカット州のガナリーにおいてFrederick William Gunn フレデリック・ウィリアム・ガンが子供たちを集めて学校キャンプを行ったことが、現代流のキャンプの始まりである、と言われている[1]。1881年にはニューヨーク、ブルックリンYMCAでもキャンプが行われるようになり、これがF.ダドリーに継承されて非常に盛んになった。1896年にはヨーロッパはドイツのベルリンからワンダーフォーゲル運動(渡り鳥運動)によってキャンプ活動は普及するようになった[1]

ギャラリー

日本における歴史

日本でももともと縄文時代、日本にいた人々の大半が大自然の中で狩猟採集生活を行っていたと考えられており、野外で行う生活というのは太古から行われていたと考えてよい。ただしその後、弥生時代になり定住型の農業で生活する人々が日本列島に広まったことで状況は変わり、また平安時代などになると、都が造られ、都市生活者の割合が増えたことで、大自然の中で行う生活を知らない人々の数が増えてゆくことになったわけである。

(なお日本の江戸時代の旅人などの中には、大きな油紙を持参している人もいて、山中で日没を迎えてしまった場合には、樹木の下などでその油紙で身体をくるむようにして露や雨をしのぎ、体温を保ち、夜明けを待った(現代風に言えば「ビバークした」)とも言われている。)

ところで、近代的な考えのキャンピングがいかにして日本に導入されたかについて解説すると、江戸幕府にかわり明治政府が日本の舵取りをするようになると、その政府は西洋諸国の諸制度を模倣して取り入れるようになり、自由教育の一環として西洋のスポーツの多くが取り入れられ、キャンプもそのひとつとして紹介され、教育活動のひとつとして推進されるようになった[1]。1894年(明治27年)に刊行された志賀重昂による『日本風景論』中、「登山の氣風を興作すべし」として「山中に露宿する方法及び注意、山中の茵褥、露宿の際の着衣」を図解し、実践する者が急増した。1907年(明治40年)に、学習院の院長になった乃木希典は夏期に行われていた遊泳演習にキャンプを取り入れ、3週間にわたり160人の学生とキャンプ生活を行った。日本における全国的規模のキャンプとしては最初のものは、1922年にYMCAが日光中禅寺湖の湖畔で中等学生のための組織キャンプを行ったことだという[1]。第二次世界大戦に突入するとキャンプをしている余裕は無くなってしまったわけであるが、その大戦が終結すると、日本では学校キャンプが盛んになった。民間団体によるキャンプ推進のほうも、また行政組織によるキャンプ推進のほうも、双方ともに盛んに行われ、1965年には日本キャンプ協会が設立されキャンプに関する啓蒙活動を行うようになった[1]


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注釈

  1. ^ 車で10分程度の近隣にコンビニエンスストアスーパーがあることも多い。
  2. ^ 使われるテントの種類はグランピング事業者ごとにさまざまで、ユルト、ベルテント、ティピーウィグワムログハウスキャンピングカーキャンピングトレーラー、ジプシーキャラバンなどがある。テントとは別にキャビンなども用意されていてマッサージサービスを受けられるところまである。食べ物や飲み物もオーダーでき、シェフがいて好きな食べ物も注文できるグランピング事業者もある。電気や水道も使え、食器や家具もついている。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 平凡社『世界大百科事典』vol.7, p.167-168『キャンプ』
  2. ^ 「トレーラーハウス等の規制のあり方に関する検討会」報告書 - OTO対策本部関係省庁連絡調整会議 トレーラーハウス等の規制のあり方に関する検討会、平成11年12月14日


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