カールグスタフ (無反動砲)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 14:53 UTC 版)
採用国
日本におけるカールグスタフ無反動砲
日本の陸上自衛隊では、カールグスタフM2を84mm無反動砲として採用しており、“84RR(Recoilless Rifle)”の略号で呼ばれる。部隊では通称として「ハチヨン」や単に「無反動」などと呼称されている。
通常は普通科小銃小隊1個班に1門を装備している。本装備を使用する隊員は小銃ではなく9mm拳銃を携帯し、予備弾運搬手が随伴する。使用可能弾種は榴弾、対戦車榴弾、照明弾、発煙弾の4種類があり、通常の砲弾以外に7.62mmNATO弾を使用できる訓練用アタッチメント(筒内砲)がある。これは砲身内に砲弾の代わりに装填して空砲などを発射できるもので、演習で実弾のかわりに使用する。
それまで使用していた89mmロケットランチャー(バズーカ)に代わる歩兵携行用対戦車兵器として、1978年度予算の85門を端緒として調達を開始した。当初は輸入による調達であったが、1984年からは豊和工業によるライセンス生産が開始された。イラク人道復興支援活動で陸上自衛隊がイラクのサマーワに派遣された際には、宿営地に対する自動車突入などのテロ対策用小火器として持ち込まれている。
2001年(平成13年)から01式軽対戦車誘導弾に更新されることとなっていたが[3]、コスト・多用途性・汎用性に勝ることから多用途支援火器として存続することとなり、2012年(平成24年)からはカールグスタフM3の調達が開始され[3]、平成24年度には多用途ガン表記で、平成25年度以降からは84mm無反動砲(B)表記で調達されている。2016年度予算で30門が調達され、まず水陸機動団に配備後、第一空挺団へ優先配備される模様である[4]。調達価格は約1,000万円である。
2023年10月19日、SAAB社は陸上自衛隊からカールグスタフ300門以上の発注を受けたことを発表した。2025年に納入するとしている[5]。防衛装備庁の公表資料によると2023年度はM3型325門の調達となっている[6]
東洋経済オンラインの報道によるとM3型の調達は2023年度で終了し、2024年度からはM4型に移行する計画である[7]。
旧式のうち、余剰となったものは特科・機甲・施設・後方支援部隊の自衛火器として管理替えされ、現在も第一線で使用されている。
予算計上年度 | 調達数 | 予算額
括弧は初度費(外数) |
---|---|---|
平成24年度(2012年) | 3門 | 0.3億円 |
平成25年度(2013年) | 17門 | 2億円 |
平成26年度(2014年) | 24門 | 3億円 |
平成28年度(2016年) | 6門 | 0.6億円 |
平成29年度(2017年) | 3門 | 0.3億円 |
令和4年度(2022年) | 8門 | 1.1億円 |
令和5年度(2023年) | 325門 | 35.7億円 |
合計 | 386門 | 43.0億円 |
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使用した84mm無反動砲を清掃する自衛隊員
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84mm無反動砲の砲身後部ノズルを開放し、弾薬を装填する陸上自衛隊員
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砲弾を運用している隊員
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84mm無反動砲を装備した陸上自衛隊員(西部方面普通科連隊)
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陸上自衛隊が採用する84mm無反動砲
登場作品
映画
- 『宇宙戦争』
- 終盤の戦闘で、アメリカ陸軍第10山岳師団の兵士が宇宙人の侵略兵器「トライポッド」に対して使用。劇中では「グスタフ」と呼ばれている。
- 『ガメラ3 邪神覚醒』
- 陸上自衛隊の先遣小隊がイリスに対して使用するが、効果はなかった。撮影では自衛隊の協力により、実物が(空砲による射撃で)使用された。
- 『ゴジラシリーズ』
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- 『ゴジラvsビオランテ』
- 権藤一佐が、抗核エネルギーバクテリアを弾頭に装備したロケット弾をゴジラに打ち込むために使用する。
- 『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』
- 自衛隊の対ゴジラ特殊部隊が、1996年に大阪都へ上陸したゴジラを食い止めるために使用し、ホウ素弾と呼ばれる架空の弾を発射する。ただし、後部の形状がSMAW ロケットランチャーのようになっているなど、各部が異なる。
- 『戦国自衛隊1549』
- ロメオ隊の隊員が後半の戦闘で、天導衆こと第三特別実験中隊の90式戦車とAH-1Sを撃破するのに使用。前者に対しては対戦車榴弾を用いているが、後者に対しては現実には存在しない誘導弾を用いる。
- 『ターミネーター:新起動/ジェニシス』
- 回想シーンの1973年にT-800(守護者)がT-1000に襲われた少女時代のサラ・コナーを救出する際に所持。発砲シーンは無いが、砲尾から煙が出ていることから、T-1000との戦闘で使用した模様。
- 『バトルフィールド・アース』
- ジョニー達人類がサイクロ人への反乱に使用。スティンガーミサイルと混同されており、ミッキーがサイクロ人の飛行機を撃ち落とした際は、追尾式のミサイルを射出した。
- 『ラストスタンド』
- 麻薬組織の戦闘員が使用。
テレビドラマ
- 『戦国自衛隊・関ヶ原の戦い』
- 物語冒頭の陸上自衛隊の演習時に使用するが、戦国時代にタイムスリップしてからは登場しない。
- 『ネオ・ウルトラQ』
- 第6話「最も臭い島」に登場。怪獣「セーデガン」に対して、陸上自衛隊が使用する。
- 『世にも奇妙な物語』
- 「通いの軍隊」に登場。ニュー・イバラキ軍のUH-1 2機編隊に対して前島が使用し、先頭の1機を撃墜する。
アニメ
- 『機動警察パトレイバー the Movie』
- 『ギルティクラウン』
- 『クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』
- 温泉Gメンの後生掛が使用する。
- 『やわらか戦車』
- 第1空挺団の隊員が基地内に侵入した缶元総理に使用する。
漫画
- 『怪獣自衛隊』
- 第50普通科連隊の隊員が怪獣「ヒルコ」との戦闘で使用する。
- 『続・戦国自衛隊』
- 戦国時代にタイムスリップした、自衛隊とアメリカ海兵隊の装備として登場する。小説版では、対戦車榴弾だけでなく発煙弾を使用して敵の目を眩ませる戦法も行われている。
- 小林源文の作品
小説
- 『日中尖閣戦争』
- 第1挺進団の町田三曹と小川士長が中国海軍のミサイル艇に対して放つが当たらず、やむなく91式携帯地対空誘導弾による攻撃に切り替える。
- 『日本国召喚』
- 自衛隊の装備として登場。日本が国ごと転移した異世界にて、第2巻ではトーパ王国に派遣された自衛官が使用し、対戦車榴弾で魔王軍のブルーオーガを撃破する。外伝2巻ではエスペラント王国に遭難した岡三曹から緊急避難の名目で現地の銃士ザビルに貸与され、HE441B榴弾で魔獣ゴウルアスを攻撃する。
- 『日本黙示録 非常時宣言発令』
- 物語中盤にて、警戒配備中の74式戦車を破壊した兵器として登場。搭乗員の「カールグスタフにやられた」という一言を、主人公が“カールグスタフという人物に攻撃された”と誤解する、というシーンがある。
- 『ルーントルーパーズ 自衛隊漂流戦記』
- 異世界に飛ばされた自衛隊の装備の1つとして登場。ドラゴンの頭部に対戦車榴弾を発射し、倒すことに成功する。
ゲーム
- 『Far Cry 2』
- 『Operation Flashpoint: Cold War Crisis』
- アメリカ軍陣営の対戦車ミサイル手兵科で使用可能な無反動砲としてM2が登場する。
- 『Wargame Red Dragon』
- NATO陣営デッキの步兵で使用可能な対戦車兵器としてM2/M3が登場する。
- 『怪盗ロワイヤル-zero-』
- 「バズーカ」の名称で登場。
- 『コール オブ デューティシリーズ』
- 『バトルゴリラ』
- 『バトルフィールドシリーズ』
- 『メタルギアソリッド ピースウォーカー』
注釈
- ^ "Granatgevär"とはスウェーデン語で“擲弾銃(擲弾発射筒)”を意味する。
- ^ つまりは製造メーカー名に因むものであり、本砲の他にも“カールグスタフ”の通称および正式名称を持つスウェーデン製の兵器は多種類が存在する。
- ^ Ch・D・バーニー准男爵、“バーニー砲”の名で知られる独自機構の無反動砲の設計・開発で著名。
バーニー卿は無反動砲に関する自身の理論を本銃の開発で実証した後、その結果を基に作動形式・構造を発展・改良させ、本国イギリスで“バーニー砲(Burney Gun)”の名で呼ばれる各種の無反動砲を開発した。 - ^ ただし、パンツァーシュレックは「携帯式対戦車ロケット弾発射筒」であり、本砲のような無反動砲ではない。
- ^ M2-550は射撃精度が大幅に向上したが、「標準的な交戦距離からして過剰な装備である」「高価で複雑なため野戦での運用に難がある」と実用面からはそれほど評判は芳しくなく、FFV550は重くかさばるものであったため「本砲のメリットである簡便性を損っている」として開発側が予想したほどの需要がなく、1990年代にM3型が開発されるとメーカーのラインナップから削除された。
- ^ これにより大幅な軽量化が達成されたが、砲身命数(砲身寿命)は低下している(ただし、1993年に行われたアメリカ陸軍の研究所による耐久テストでは2,380発までの耐用年数があり、メーカーの保証値の4.5倍の実用命数があるとされている)。
- ^ この新型砲身の命数は1,000発とされている。
- ^ FFV597は分離装薬式で、砲尾から装薬(発射薬)が充填された薬莢を、砲口から外装式の弾頭を、それぞれ別個に装填する必要があった。このため、迅速な射撃準備と連続発射が困難だった。
出典
- ^ 井上孝司 (2017年6月3日). “軍事とIT 第195回 特別編・カール・グスタフ無反動砲”. マイナビニュース 2019年9月23日閲覧。
- ^ Marius Zgureanu (2017年7月7日). “Super-munitii pentru Karl Gustav” (ルーマニア語). Romania Military. 2019年9月25日閲覧。
- ^ a b 毒島刀也『陸上自衛隊「装備」のすべて』 ソフトバンククリエイティブ、2012年、ISBN 978-4-7973-5807-0、pp.54-55
- ^ 奈良原裕也、「ソ連戦車の脅威に対応!「高精度・大威力化」」『軍事研究』(株)ジャパン・ミリタリーレビュー、2017年5月号、196-206頁、ISSN 0533-6716
- ^ “SAAB社プレスリリース”. 2023年10月21日閲覧。
- ^ 令和5年度 月別契約情報/随意契約(基準以上)2023年10月10日契約、防衛装備庁。2024年1月27日閲覧。
- ^ 清谷信一 (2024年1月25日). “「旧式」装備を大人買いする防衛省の無責任さ 無反動砲に見る「ずさんな装備調達」の実態”. 東洋経済オンライン. 2024年1月27日閲覧。
- ^ “防衛省・自衛隊:予算の概要”. www.mod.go.jp. 2022年9月19日閲覧。
- ^ 契約に係る情報の公表(中央調達分)防衛装備庁。2024年1月27日閲覧。
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