カードローン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/06 05:40 UTC 版)
概要
銀行または協同組織金融機関(以下「金融機関」と総称)が発行するカードを利用するローンである。カードを利用して予め契約した貸出枠の範囲でCD・ATMを通じて資金を借り入れることができる。ATM・CDについては、金融機関が設置するもののほか、金融機関が提携する金融機関が設置するものを利用することができる。
なお、カードを用いずにインターネットバンキングなどを利用してローン口座から普通預金口座への振替で資金を貸し付ける形態のみのローンもあるが、これはネットローンやネットキャッシングなどと呼ばれ、カードローンとは異なる。
種類
個人向けのカードローンは、担保を必要としない無担保型と、不動産、農地、有価証券などを担保とする有担保型に大別される。いずれも用途は自由ではあるが、事業資金として利用することはできない(事業資金として利用することができる個人事業主向けのカードローンを別に設けている金融機関もある)。2020年に日本貸金業協会が公表したデータ[1]によると「趣味・娯楽費」が利用用途の40%を占めていたが、コロナ禍以降、「家賃の支払い」や「趣味・娯楽費」「食費」「医療費」などが利用用途の上位を占めている。[2]
カードについて
カードローンで利用するカードは、金融機関の普通預金口座のキャッシュカードを利用することができるものと、専用のカードが別途発行されるものに大別される。後者の場合は、金融機関に預金口座を開設していない場合でも利用することができる。また、消費者金融の一部ではスマホを使った「カードレス」で利用できるものもある。
仕組み
カードローンは、金融機関が指定する者(以下「保証会社」)が保証(機関保証)するため、無担保型であれば、担保・連帯保証人は不要であるが、申込の際は金融機関および保証会社の両社が審査を行うこととなる。また、審査の結果、保証会社の保証が受けられない場合は、カードローンを利用することはできない。
万が一、延滞や貸倒が発生した場合は、保証会社が金融機関へ代位弁済し、保証会社が債務者へ債権回収することとなるので、この場合、保証会社から直接借入れて延滞したものと同等の取立てに遭うこととなる可能性もある。
正社員や公務員以外は、金融機関に大口の定期預金・投資信託の取引、担保とされる不動産または農地、有価証券を所有していないと、信用上発行が難しいとされるが、大手消費者金融、大手クレジットカード会社が保証委託するカードローンでは申込基準が緩和されていたが、銀行カードローンが原因の自己破産や多重債務が社会問題化され、限度額が50万円を超える申込には、収入証明書の提出が必要とするなど、審査基準が厳格化された。また、金融機関は自主規制として50万円に満たない申込に関しても、申込者の職場へ在籍確認を取るなどして返済能力を確認する対策を講じている[3]。ただし、コロナ禍以降のリモートワークの普及や個人情報保護の観点から電話での取次ができないことも多くなっており、大手消費者金融では、電話ではなく提出書類による在籍確認に切り替えている[4]。
返済方法は、1回払いまたはリボ払いで完済となるまで、毎月の約定返済日に口座自動振替で返済していくかたちとなるが、資金に余裕が有ればATMで直接カードローン口座へ入金したり、リモートバンキングで自名義の普通預金等から振替することも可能である。ただし、1回払いで借り入れた場合は翌月または翌々月に借り入れ金額+利息を全額返済する。
有担保型カードローンは1980年代から2000年代前半にかけて都市銀行が取り扱ってきたが、不動産担保評価額の減少(担保割れ)などが頻発するようになったため新規募集はされなくなり一時途絶えたが、2005年頃に三井住友信託銀行の旧中央三井信託銀行店舗で「α-Style」の名称で有担保カードローンの取扱を開始している。(不動産担保融資は一部の銀行や抵当証券系ノンバンクで証書貸付に限って継続されている状況にある。
クレジットカードとの違い
カードローンとクレジットカードの違いは次表の通りである。
カードローン | クレジットカード | |
---|---|---|
取り扱い業者 | 銀行、消費者金融 | クレジットカード会社、信販会社など |
利用目的 | 現金融資(キャッシング) | ショッピング、現金融資(キャッシング) |
貸付枠 | 審査次第では大きな枠を設定も可能 | 比較的小さめの設定となることが多い(キャッシング枠の付帯が無ければ貸付機能無し) |
詳細 | ローンカードを使って、そのままショッピングすることはできない(カードローンは現金を借りる機能に限定) | 「キャッシング枠」を付帯することで融資を受けることは可能(※ショッピング枠のみでキャッシング枠の設定が無い場合もあり)クレジットカードはショッピングがメインの機能で、キャッシングはオプション機能の位置づけ |
また、多くのクレジットカードや消費者金融のキャッシングでは100万円未満のキャッシング利用する場合、法律の最大利率である実質年率18%に設定されているのに対し、銀行カードローンでは実質年利1.5%~14.0%の金利水準が一般的。
- ^ “暮らしのどのような場面で貸金業者が役に立っているの?【貸金業界の状況】”. 2023年6月22日閲覧。
- ^ “お金を借りる方法98選!即日で今すぐ借りたい人におすすめな借り方を解説”. 株式会社CyberOwl. 2023年6月22日閲覧。
- ^ “与信審査の厳格化について(貸金業者)”. 2023年8月17日閲覧。
- ^ “在籍確認なしのキャッシング5社!カードローンは即日・職場連絡なしで利用できる?”. 2023年8月15日閲覧。
- ^ “貸金業法が改正された後の総量規制とは”. スルガ銀行. 2019年4月22日閲覧。
- ^ “2020年度版のカードローン利用者による実態調査 | ゼニエモン”. ゼニエモン. 2020年5月8日閲覧。
- ^ 米澤文 (2015年7月27日). “銀行カードローンが消費者金融を大逆転 「住宅ローンより稼げる」カードローン絶好調の秘密”. 産経新聞 2017年9月1日閲覧。
- ^ “銀行カードローン破産の裏側”. ワールドビジネスサテライト(テレビ東京). (2016年3月18日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ “銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書”. 日本弁護士連合会 (2016年9月16日). 2017年9月1日閲覧。
- ^ “カードローン、多重債務の温床に?貸出残高が急増、3メガで1.6兆円”. 産経新聞 (2017年5月16日). 2017年9月1日閲覧。
- ^ “銀行カードローン 残高急増、過剰融資を懸念”. 毎日新聞. (2017年4月17日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ 藤田知也 (2017年5月18日). “銀行カードローン、19年ぶり高水準 5兆6千億円”. 朝日新聞 2017年9月1日閲覧。
- ^ “カードローンの利用は慎重に 無担保で借りられ追加も簡単”. 東京新聞. (2017年6月15日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ “<銀行カードローン>止まらぬ融資 増える破産”. 河北新報. (2017年6月4日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ “若者もシニアも破産急増!?銀行カードローン”. クローズアップ現代+(NHK). (2017年4月12日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ “金融庁、銀行カードローンを立ち入り検査へ 貸し出し上限導入も焦点”. 日経新聞. (2017年9月1日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ 『カードローンホットラインの開設について』(プレスリリース)金融庁、2017年9月1日 。2017年9月1日閲覧。
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