オートバイ用エンジン エンジン補機類

オートバイ用エンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/09 22:26 UTC 版)

エンジン補機類

燃料気化装置

オートバイ用エンジンの気化装置も排ガス規制の強化に伴って、キャブレターから燃料噴射装置へと移行している。1980年代から最上級車種の一部に電子制御式燃料噴射装置が搭載される流れを見せたこともあったが、当時はまだ電子機器の信頼性が確立されておらず、普及はしなかった。1990年代中盤以降からは強化される排ガス規制への対応のため、燃料噴射装置の採用が増えていくことになった。400cc以下の比較的小排気量のオートバイには制御機構が一部電子化されたキャブレターが用いられ続けていた。2000年代中期以降は排ガス規制が一層強化され、ほとんどの車種で三元触媒と同時に燃料噴射装置が採用されるようになった。

点火装置

オートバイ用エンジンの点火装置には古くはマグネトーとコンタクトブレーカーを組み合わせた機械式点火装置が用いられた。しかし、アメリカで最初の排ガス規制が施行されたことに伴い、1960年代の後半よりコンタクトブレーカーがCDIに置き換えられた電子制御式点火装置への移行が進んでいった。

マグネトーはフライホイールに取り付けられることが多かったことから、フライホイール・マグネトー式(フラマグ式)とも呼ばれた。電源をバッテリーに頼らないことが利点であったが、性能向上や排ガス規制への対応のために高度な点火時期制御が要求されるようになると、クランク角度センサーやパルシングローターからの信号をイグナイターやDC-CDIが検知して行うバッテリー点火が普及した。

始動装置

オートバイ用エンジンの始動装置は、かつてはキックスターターが一般的だった。初期のオートバイでは電機系の性能が低くてセルモーターを搭載できない理由があったほか、車体を軽量にできる利点があるため、現在でもキックスターターによる始動方式の車種は生産されている。初期のキックスターターはクラッチの出力軸を駆動していたため、ギアをニュートラルにしてクラッチを接続した状態でなければ始動できなかった。後に入力軸を駆動するプライマリーキックと呼ばれる形式が登場して始動が容易になった。排気量の大きな単気筒エンジンでは圧縮圧力による反力が大きいため、デコンプレッション機構と呼ばれるシリンダーの圧力を解放する機構が装備される場合も多かった。

1970年代中期頃からは、大排気量車を中心にキックスターターとセルモーターを両方搭載するセル・キック併用方式が普及しはじめ、オートバイは扱いやすい存在となっていった。その後、バッテリーは小型化し信頼性も高くなってきたことから、1980年代中期以降はセルモーターのみを装備してキックスターターを装備しない車種がほとんどとなった。オートバイ用エンジンのセルモーターは直結式がほとんどである。

一部にはリコイルスターターが装備された車種も存在する。競技用車両の中には軽量化のためにキックスターターすら装備されず、押しがけ専用となっている仕様のものも存在する。

過給機

オートバイ用エンジンにおいてターボチャージャースーパーチャージャーは一般的ではないが一部の車種で採用されたことがある。1980年代の初頭に一部のメーカーにより欧米販売車種を中心に導入された。2000年代、欧州ではプジョー・モトシクルから、スーパーチャージャー搭載のスクーターであるプジョー・ジェットフォース・コンプレッサーが販売された。2015年、カワサキはスーパーチャージャーを搭載したNinja H2ならびにNinja H2Rを発売した。


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