ウィルコム 概歴

ウィルコム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 21:33 UTC 版)

概歴

創業期

500mW基地局
2006年

1994年に第二電電が中心となって企画会社が設立されて事業会社に移行後、1995年に「ポケット電話」の名称でPHS事業を開始した。アステルNTTパーソナル(以下、同業2社)による20ミリワット(mW)の基地局よりも出力・受信感度が高い500mWの基地局(建柱)を中心に整備した。これは、他事業者は主要株主のNTTグループ電力会社が所有する電柱などの設備を利用してアンテナを設置していたが、本サービスはより少ない設置場所でエリアを確保する必要があったためとされる。

基地局が高出力で、サービス開始初期は都内など基地局の設置が過密な地域において干渉が発生し、通話不能となるトラブルが発生した。このトラブル解消のために一時的にサービスを中止して、基地局間の同期を取るよう改修を実施した。そうした初期のつまずきはあったものの500mW高出力という特徴を生かし、他の同業各社に比べて利用可能エリアの拡大が早かったためPHSではトップグループとなった。

しかし当時のPHS全体の問題として同時期に普及し始めた携帯電話との相互通話ができず[9]、1996年10月の暫定接続以後も携帯電話・PHS間の通話料も高額だった[10]。携帯電話側が料金を値下げした結果、料金面でもPHSの優位性が縮小した[11][12]。携帯電話と比較した場合、郊外や山間部などで通話エリアの劣勢が指摘された[13]

H"(エッジ)

1999年9月、対抗策としてDDIポケットは端末側のハンドオーバー処理を高速化し高速移動中の通話安定性を向上した新シリーズの「H"(エッジ)」を「ハイブリッド携帯」のキャッチフレーズで展開開始(従来のポケット電話も併売)。その翌2000年11月に、当時としては高品質なカラー液晶や音源等、およびダイバシティアンテナを搭載した新カテゴリー「feel H"(フィールエッジ)」を発売した。この頃にポケット電話はほぼ終売しH"シリーズとなる。「H"」という名称は、英語のedgeで時代の先端という意味のほかロゴ全体でDDIポケットの基地局のアンテナを形取り、H(エッチ)に濁点をつけて「エッヂ」と読ませたものである。ハイスピード、ハイクォリティーの頭文字のHが2つでH"と読ませるなど複数の意味をもつとしていた[14]

この時は、「PHS」という名称を積極的に用いておらず、単にブランド名の「H"」や「ハイブリッド携帯」の語句のみ使用していた。これは、「簡易型携帯電話」とも表記されていたPHS全体のブランドイメージ低下を払拭しようとの対策だった。当時の携帯電話と比較して音質面では優れていたものの、一般的消費者への浸透をみることはなかった。その他の諸事情も併せ、結果的に契約者数の減少傾向に確実な歯止めを掛けられずにいた[15]

同業2社では2002年前半に音声端末(今で言うフィーチャーホン)の新機種開発・発売をほぼ打ち切ったが、DDIポケットでは引き続き新型機を発売しており、2002年9月に従来の「H"」機種で『Eメール使い放題』を開始。2003年4月に、ドコモPHSの「ブラウザホン」、アステルの「ドットi」で導入されていたiモード等と同様のcHTMLを表示できるブラウザを搭載し、音声端末初のパケット通信に対応した「AirH" PHONE(エアーエッジフォン、後のAIR-EDGE PHONE)」が遅まきながら導入された[16]。2004年5月に京セラから発売されたAH-K3001Vでは、日本国内の携帯電話・PHSで初めてフルブラウザOperaを搭載した[17]。このヒットにより、300万弱で横ばいだった契約者数の底打ちに成功している。

データ通信

エアーエッジフォン

1997年4月1日、2G携帯電話に比して高速な通信速度が可能なデータ通信を前面に打ち出したPIAFS1.0に準拠した回線交換方式32kbpsデータ通信「 αDATA 32」を開始[18]。PIAFSに準拠しない独自方式の「 αDATA 」も存在し、PIAFS未対応のG3FAXワープロパソコン類のアナログモデムなどアナログ固定電話回線向けの機器と接続してデータ通信が行えるサービスも存在した。

1999年7月30日に、PIAFS2.1規格を導入した64kbps通信「 αDATA 64」が可能となる[19]。32k通信については同業2社と足並みをそろえたが、64k通信については全国ほぼ一斉に64kbps通信のサービス開始を可能としたため、4月に先行していたドコモPHSのサービスエリアに対しては優位に立った。これは他社はハードウェアの交換作業が伴ったのに対し、DDIポケットはリモートでのソフトウェアアップグレードという方法で対応できたためである。ただし、ドコモPHSの64kデータ通信はギャランティ接続であるのに対して「αDATA64」はベストエフォート接続のため、十分な回線速度が出なかったり、ハンドオーバー時に切断されるなど不都合な点が残る形となった。

2000年9月に、富士通のモバイルノートパソコンFMV BIBLIO LOOX」に、αDATA64対応のデータ通信モジュール「 H" IN 」が内蔵された「LOOX S5/53W」「LOOX T5/T3W」が発売された。これらは購入後にオンラインサインアップで回線契約を行うことができ、MWAや、2010年前後に普及した3G方式のワイヤレスWANモジュール内蔵ノートパソコンの趨りと言える機種である。

パケット通信

2001年6月1日、日本のPHS事業者では唯一であるパケット通信サービス「AirH"(エアーエッジ、後のAIR-EDGE)」を開始[20]。定額制で最高32kbpsのパケット通信が可能なことから、モバイル利用ユーザを中心に大ヒット。そのおかげでようやく契約者数の減少に歯止めを掛けることができた[21]。翌年に最高128kbpsもサービスインした。前述した最高64kbpsの回線交換方式のデータ通信も併せ、パソコンやPDAとの接続でのモバイルデータ通信定額制(後にパケット定額制へと繋がる)が可能であることを強みに携帯電話との差別化に成功した。

AirH" PHONEの開始に併せて最初は台湾、次いでタイベトナムとPHSの国際ローミングサービスも提供を開始した[22]

カーライル・グループによる買収

2004年6月21日にアメリカ合衆国カーライル・グループによる買収が発表され、10月1日に同社が筆頭株主となった。買収額は2200億円[23][24]

経営移行手続完了となる2005年1月1日時点での資本構成はカーライルが60%で筆頭株主、従来のDDIポケット(以下「旧DDIポケット」)の第2位株主で13.25%出資していた京セラ株式会社が30パーセント、旧DDIポケットの筆頭株主で80.93%出資していたKDDI株式会社が10%となる(旧DDIポケットの株式の所有割合は2004年3月31日現在のもの)。

カーライル・グループが買収した動機付けとしてはPHS/AIR-EDGEのモバイルデータ通信市場での優位性や将来性、さらにそれらの中国/国際市場への展開も視野に入っていると考えられていた。

2005年2月2日、ウィルコムへ社名を変更し、エアーエッジの表記も「AirH"」から「AIR-EDGE」へ変更された。社名変更に伴うブランドイメージの刷新という意味合いもあるが、「AirH"という表記では日本人以外はエアーエッジと読むことができない」という問題点に基づいたものであり、ウィルコムの筆頭株主であるカーライル・グループの意向が強く働いたとされていた[25]。AirH"という命名の根拠だった元ブランドの「H"(エッジ)」に関しては表記の変更は発表されなかったことから、事実上「H"」ブランドの将来的な消滅を示唆するものとなった。パケットデータ通信規格に別にEDGE (Enhanced Data Rates for GSM Evolution) と呼ばれるものが存在するが、全く無関係である。

同日、高速化サービス「AIR-EDGE MEGA PLUS」(旧トルネードWebサービスの改良版)を開始し、2月18日に256kbpsの定額データ通信サービス「AIR-EDGE[PRO]」を開始した[26]

音声定額制

DDIポケットだった当時はKDDIグループ内部における携帯電話auとの兼ね合いからデータ通信を中心にした事業展開を行っており、音声通話に対しては消極的だった。しかしKDDIグループからの離脱に伴い、音声通話についても積極策に転じた。

2005年3月15日、ウィルコム沖縄を含むウィルコム同士のメール定額を含む音声通話定額制プラン「ウィルコム定額プラン」を発表、5月1日に開始した。ウィルコム定額プラン専用のデータ通信が定額制となるオプションプランも併せて導入。移動体通信としては日本国内初の通話定額制サービスの開始となった[27]

音声定額制導入に伴って契約数は増加に転じ、2005年3月末までの契約数は子会社ウィルコム沖縄を含めたグループ全体で300万契約を取り戻した。その後も加入者数は増加し続け、2005年12月23日付けでDDIポケット時代の1998年7月に記録した約361万件の過去最高契約数を更新した。その後2006年5月末に400万件、2007年3月末に450万件を突破した。

しかし2006年10月から携帯電話事業者間で始まった番号ポータビリティとそれに伴う料金値下げ競争から価格優位性が薄れた。特にソフトバンクモバイルの定額プラン「ホワイトプラン」の影響が大きいとされる。データ転送速度の遅さ、ワンセグおサイフケータイなど携帯端末の高機能・多機能化の流れにも取り残されて純増数が鈍化傾向となり、ついに2007年8月は純減となった。

音声定額制導入に当たってはNTT東西会社への接続料(アクセスチャージ)を削減するため、VoIP対応交換機(ITX:Ip Transit eXchange)[28]を高トラフィックな地域に優先的に導入していた[29]

KDDI傘下を離れたことに関係しそれまではできなかった携帯電話と比較してのSAR値の低さなどを大きな売りとしてアピールできるようになっていた。

他事業者との事業提携強化

2005年12月1日から、「ウィルコムADSL」サービスを旧アッカ・ネットワークスイー・アクセスに吸収されたため、同社の回線)のADSL回線のホールセールにより開始。ウィルコムのPHSサービスとの同時契約による割引なども導入[30]

2006年2月1日から、テレマティクスカーナビゲーションのインターネット接続)分野でHondaインターナビと協業、「カーナビ専用定額サービス」を開始。月額1,050円のカーナビ専用定額制を導入[31]

2006年3月1日から、J:COMとの提携によりウィルコムのPHSサービスを「J:COM MOBILE」としてJ:COMが再販。同社の固定電話サービス「J:COM PHONE」のオプションサービス「とくとく・トーク」に加入すると、J:COM MOBILEへの通話料を割り引く[32]

2006年6月1日から、NTTコミュニケーションズとの提携により同社の公衆無線LANサービス「ホットスポット」を、「ウィルコム無線LANオプション」としてウィルコムが再販[33]

高度化PHS開始

2006年2月23日から、高度化PHSであるW-OAM方式の採用により、大都市を中心に一部地域で最大408kbpsの通信速度サービスを開始[34]。今後さらに1.5Mbps以上のデータ通信サービスを提供する計画もある[35]

2006年末以降発売の音声通話型端末では音声通話においてW-OAM方式の一種であるBPSKによる通信方式にも対応したものが増えていた。

次世代PHS免許取得

2007年12月21日、次世代PHS技術を採用した広帯域移動無線アクセスシステム(BWA)の特定基地局の開設計画認定の申請に対して総務省より開設認定を取得。これにより、2009年10月からの次世代PHSサービスが実現可能となっていた[36]。2008年5月26日には次世代PHSのブランド名を「WILLCOM CORE」(ウィルコムコア)とすると一旦、発表した。COREは、英語の「」と、Communication Of Revolution and Evolutionの略から来ていた。ただし、2009年1月22日にこの“次世代PHS=WILLCOM CORE”という位置づけから、次世代PHSだけではなく従来PHS、3G携帯MVNO、無線LANと複数の通信手段を利用して快適に通信できるサービス全体をWILLCOM CORE、次世代PHSサービスのみの呼称はWILLCOM CORE XGPXGP:eXtended Global Platform)とするという方針の変更を発表していた。

そのため、XGPが展開される前に2009年3月9日よりNTTドコモFOMAハイスピード網のMVNOを利用したWILLCOM CORE 3Gサービスを開始していた。提供は、最長で2012年12月までを予定していた。XGPエリア網の進展により、イー・モバイルのドコモローミング同様、都道府県単位での繰り上げ終了も有り得るとしていた。従来のPHS契約からWILLCOM CORE 3Gサービスへの機種変更」(契約変更も可能だが、実質的には既存PHSの解約WILLCOM CORE 3G新規契約と同様であるため、契約期間の引き継ぎやサポートコインの引き継ぎは出来ず、電話番号の維持も出来なくなる。ただし、端末の分割分が残っている場合の支払は引き続き必要だが、その他年間契約の解除手数料などは一部免除される。サポートコインについては、同一請求の回線があり、そちらを存続させる場合に限り、その回線の上限分までは継承可能。サポートコインの提供やW-Value selectに付随するW-VALUEサポートの適用、あるいは、ウィルコムあんしんサポートの対象外となる。

WILLCOM CORE XGPについては、2009年10月1日からサービスを開始することを公式発表した。開始当初は、東京都山手線内の一部地区からのサービス提供となることや対応する通信機器の台数に限りがあることから、2010年3月まではXGP専用の料金プランである「XGPデータ定額フラット」並びにPRIN接続料を無料とするキャンペーン期間に設定し、対応通信機器も無償レンタル(貸与)される[37]。ただし、申込自体は東京特別区内の住所で契約し、ウィルコムの契約を既に持っている場合に限る。

ウィルコムは「次世代PHS」という名称はすでに公式には使用しなくなっており、メディアに対しても使わないようにと要望していた。これは、XGPブランドの浸透を図るだけでなく、XGPではデータ通信サービスしか行う予定がなく、電話のイメージのあるPHSという言葉を入れると誤解を招くからである。

ソフトバンクの下で経営再建

2009年9月18日、ウィルコムは、私的整理のひとつで第三者機関が仲介する裁判外紛争解決手続(事業再生ADR)に入る方針を取引金融機関に伝え、約1000億円の債務返済期限の延長を求める方向で最終調整に入ったことが一部報道で明らかになった[38]。9月24日に事業再生実務家協会への事業再生ADRの手続きを正式申請し、受理された[39]。現在の通信事業を継続しつつ、経営再建を目指す方針としていた。

しかし、事業再生ADRの手続きが明らかになったことで、顧客に先行きの不安感が流れたためか、契約数が減少する負のスパイラルを引き起こす結果となり、2010年2月18日、東京地裁会社更生法の適用を申請した。2009年12月末での負債総額は単体ベースで2060億円であり、通信業の経営再建会社としては平成電電の負債額を抜き過去最悪となった[40]。同時に、企業再生支援機構へ支援を正式に要請した。今後ソフトバンクアドバンテッジ パートナーズからの支援を前提に協議を行う。会社更生法申請に伴い、久保田幸雄社長は事業統括担当の管財人代理兼代表執行役員として、新たな経営陣に加わって経営に参画するが、他の取締役はすべて辞任を余儀なくされた。その後、4月1日に管財人および管財人代理が追加選出された事に加え、久保田自身の体調不良などの理由により、久保田管財人代理兼代表執行役員が4月23日付で辞任し、旧経営陣はすべて姿を消すことになった。

子会社のウィルコム沖縄については会社更生法の適用申請を行っておらず、沖縄県での事業については、本件に伴う特段の影響はないとしていた。ただし、ウィルコム本体と兼任していた役員は総辞職した。

事業再生スキームとしては、PHSサービスやMVNO事業はウィルコムを更生させて従前通り継続させる方針だが、WILLCOM CORE XGPについては、スポンサー会社が今後設立する受け皿会社が譲受して、事業分割する方針いわゆる、新旧分離の方針を掲げていた。ただ2010年8月2日には、XGP事業の譲受とPHS事業のコスト削減に協力する立場だったソフトバンクが、管財人からの要請により、PHS事業も含めたウィルコム全体の直接支援を行うことで合意していた[41]。管財人にソフトバンクモバイルCOO宮内謙、管財人代理にソフトバンクモバイル取締役専務執行役員CTO宮川潤一、同社執行役員経営企画本部長田中錬・同社財務経理本部長内藤隆志が就任していた[42]。管財人は、ウィルコムの事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利の全権を、独占して握っていた。

2010年10月14日付で更生計画案が東京地裁に提出され、現在のPHS事業そのもののみをソフトバンクグループの完全子会社となるウィルコムに残した上で、ソフトバンクグループとアドバンテッジ パートナーズによる受け皿会社であるWireless City Planning株式会社(WCP)を2010年6月に設立の上、XGP事業および、PHSを含む設備の資産(基地局・電柱を含む)およびロケーションの賃貸借にかかわる権利をWCPが吸収分割方式にて譲受することを明らかにした。東京地裁からの認可が正式に下りた時点で事業家管財人が代表取締役、事業家管財人代理が取締役へ横滑りした上で、追加で取締役・監査役を選任する予定としていた。その後、2010年11月30日付で更生計画案が認可され、12月1日付でソフトバンクグループ4社目の通信事業者となり、宮内管財人が代表取締役に正式に就任した。

ソフトバンク傘下に入ってからは「だれとでも定額」や「もう1台無料キャンペーン」などの料金施策を打ち出し、2011年1月には契約者数が純増に転じ、2012年4月には累計契約者数が過去最高の468万1000件(2007年7月の465万9100件以来、4年8ヵ月振り、ただし、SoftBank 3Gを含む、以下同)となる急激な回復成長をし[43]、9月23日に500万件を突破した[44]

WCPによる当該事業の譲受は2010年12月21日付で実施。WCPへ移行後のXGPについては、中国移動が導入予定とされる次期PHSに転換する方向も検討していることをソフトバンクグループが明らかにしていた。これはPHSではなく、TD-SCDMAの後継方式であり、第3.9世代移動通信システムの一つであるTD-LTE方式(AXGP)による音声携帯電話あるいは、同方式によるデータ通信ともいわれていた。WCPのAXGP基地局を展開する際は既存のウィルコム基地局を利用し建物制限が無い限りは全てPHSとの併設のオムニアンテナ新型機に替えていた。[2]

2011年7月7日に3年かけPHS基地局を現在の16万局から約3割減の11万―12万局にすると発表した。ソフトバンクの第3世代携帯電話(3G)の鉄塔基地局にPHS専用基地局を併置。基地局の賃料や電気代、回線料などの負担を軽減できソフトバンクのインフラ活用により、年550億円かかっていたPHS基地局の維持費を同250億―同350億円に圧縮し、経営改善につなげる。すでに3月から一部作業を進めていた。2014年夏までにすべての作業を完了する。ウィルコムはこれにより設備維持費を年200億―同300億円削減できると試算していた。高さが40メートルあるソフトバンクの3G鉄塔基地局は、上部にPHS専用の基地局を併設でき、半径2キロメートルの地域を補える。ウィルコムは今後、3G鉄塔基地局との併設により、不要なPHS基地局を選定していくとした。

ソフトバンク鉄塔基地局に併設のウィルコム基地局

2012年6月14日にソフトバンクモバイル取締役専務執行役員CTOで、ウィルコムの管財人代理も務める宮川潤一のTwitterによると、圏外でウィルコムが使用できない全国すべての道の駅について、ウィルコムの基地局を設置する計画がほぼ固まったとの事、設置にあたってはすぐに取りかかれるところと時間がかかるところとで1年強の差が生じるものの、宮川はやりきることを表明。ソフトバンクモバイルが基地局用に利用していた鉄塔にウィルコムの基地局を設置する動きも始まったとしていた。

2013年1月17日より、「ウィルコムプラザ」においてグループ会社のイー・アクセスやソフトバンクモバイルが販売していた製品やサービスの取り扱いを開始しており、特に、イー・アクセスとは当社の製品やサービスの「イー・モバイルショップ」への供給も行われており、グループ内での交流も盛んになっていた。7月1日付で東京地裁から会社更生手続終結の決定を受けたことを発表したことで[45]、会社更生法の適用申請から約3年4ヶ月で再建を果たした。同日付けでソフトバンクの連結子会社となったことが発表された[46][47]

イー・アクセスと合併、ブランド統合へ

2013年12月3日に、グループ会社のイー・アクセスに2014年4月1日付で吸収合併されることが発表されたが、合併期日は2014年2月17日に延期(2014年6月1日付けに変更)が発表された[48]

合併発表後、PHSサービスに関する問合わせが相次いだことから、合併により法人としてのウィルコムは消滅するが、PHSサービスについては、継続して提供することが発表された[49]

2014年3月27日、6月1日実施の合併の翌日にソフトバンクが保有する普通・優先株式のすべてをヤフーが買収することになり、社名を「イー・アクセス株式会社」から「ワイモバイル株式会社」に改称、ブランドも「Y!mobile」への改称を表明した。しかし、2014年5月19日に株式買収を中止して協業に留めることを発表、ワイモバイルへの社名変更も当面見送ることになった。ただし、ウィルコムの吸収合併は予定通り行われた[50]。見送られていたワイモバイルへの社名変更については当初予定から1ヶ月遅れの7月1日に実施[4]。ブランド変更は8月1日付で「Y!mobile」へ変更することが7月17日に正式発表された[51]。法人としてのワイモバイルは、2015年4月1日付けで、親会社のソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイル、ソフトバンクBBのグループ3社と合併し、存続会社の「ソフトバンクモバイル」(合併後の7月に「ソフトバンク」へ社名変更)に吸収され消滅したが、PHS事業を含む「Y!mobile」のブランドは継続・承継された[52]

2018年3月31日、ソフトバンク・ウィルコム沖縄がPHSの新規契約受付を停止[53]


注釈

  1. ^ 3G網などとのデュアルモード端末については、ソフトバンクモバイル網を利用した、緊急速報メール (SoftBank)としてすでに提供済みであり、今後も、3G単独端末及びデュアルモード端末については、ソフトバンクモバイル網による提供を継続する。
  2. ^ 他の携帯電話・PHSの地域会社は大阪市に本社を置いていた。
  3. ^ DDIセルラーグループとは異なり、電力会社が出資していないため沖縄県は九州会社の管轄となっていた。

出典

  1. ^ ウィルコム - 日本のロゴ(成美堂出版2007年)47頁
  2. ^ ヤフー株式会社によるイー・アクセス株式会社の株式の取得に関するお知らせ - ヤフー プレスリリース(2014年3月27日)
  3. ^ ヤフー株式会社によるイー・アクセス株式会社の株式取得の中止と今後の協業について - 同上(2014年5月19日)
  4. ^ a b c 社名変更に関するお知らせ - ソフトバンク 旧ワイモバイルプレスリリース(2014年7月1日)
  5. ^ 株式会社インプレス (2021年12月22日). “ソフトバンク、ウィルコム沖縄を22年4月に吸収”. ケータイ Watch. 2021年12月22日閲覧。
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  7. ^ 株式会社インプレス (2021年2月1日). “[特集:ケータイ Watch20周年 【今日は何の日?】ウィルコムが誕生した日]”. ケータイ Watch. 2021年2月1日閲覧。
  8. ^ PHSテレメタリングプランの提供終了について”. ソフトバンク (2019年4月23日). 2020年12月11日閲覧。
  9. ^ PHSから自動車・携帯電話の相互通話が可能に
  10. ^ PHSとは|2020年に終了したPHSの歴史を振り返る|トラムシステム
  11. ^ 黎明期から普及までの携帯電話の基本料金の推移
  12. ^ ポケベル、PHS、携帯電話の加入者数推移
  13. ^ 普及開始時期における携帯電話・PHSの進化
  14. ^ WILLCOM|99.07.12 高機能通信端末"エッジ"の導入!!
    WILLCOM|00.09.22 『feelH"(フィール・エッジ)』のリリースについて
  15. ^ TCA、10月末日現在の携帯電話/PHS加入者数を発表
  16. ^ WILLCOM|03.02.27 AirH"PHONE 【エアーエッジフォン】 の導入について
  17. ^ 京セラ | ニュースリリース
  18. ^ WILLCOM|97.04.01 32kbpsデータ通信、4月1日より全国一斉開始
  19. ^ WILLCOM|99.07.23 64kbpsデータ通信の提供について
  20. ^ WILLCOM|01.05.16 新データ通信サービス『AirH"(エアーエッジ)』の開始について
  21. ^ TCA、11月の携帯電話契約者数を発表
  22. ^ WILLCOM|03.03.18 台湾地域での国際ローミングサービスの提供について
  23. ^ KDDI 会社情報:ニュースリリース > カーライル・グループ及び京セラによるDDIポケット買収でKDDIと合意
  24. ^ ThecarlyleGroup >fund >buyout >casestudy >WILLCOM
  25. ^ 通信速度256kbps、体感で1Mbps強 - 新「AIR-EDGE」サービス、2月18日から (MYCOMジャーナル)
  26. ^ WILLCOM|05.01.18 AIR-EDGE MEGA PLUSおよびAIR-EDGE(PRO)の開始等について
  27. ^ WILLCOM|05.03.15 WILLCOM新サービス「ウィルコム定額プラン」等の提供について
  28. ^ [1]PDF
  29. ^ ITX導入済収容局マップ、2006年11月公式発表、インプレス報道
  30. ^ WILLCOM|「ウィルコムADSLサービス」の開始について
  31. ^ WILLCOM|Hondaが提供する「インターナビ・プレミアムクラブ」向けに「カーナビ専用定額サービス」を提供
  32. ^ WILLCOM|ジュピターテレコムとウィルコム、モバイル事業で提携
  33. ^ WILLCOM|「ウィルコム無線LANオプション」サービス開始について
  34. ^ WILLCOM|データ通信サービスの高速・快適化について〜PHS高度化通信規格「W-OAM」の導入〜
  35. ^ WILLCOM|ますます速く快適に
  36. ^ WILLCOM|「次世代PHS」導入に向けた2.5GHz帯での免許認定について
  37. ^ WILLCOM|「WILLCOM CORE XGP」のサービス開始について
  38. ^ NIKKEI NET(日経ネット):ウィルコム、返済延長要請へ 私的整理、PHS継続し再建急ぐ
  39. ^ WILLCOM|事業再生ADR手続き利用のお知らせ
  40. ^ 帝国データバンク
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  44. ^ ウィルコムの累計契約数が500万件を突破 ウィルコムプレスリリース(2012年4月6日)
  45. ^ ウィルコム発表「更生手続終結決定のお知らせ」
  46. ^ ソフトバンク発表(株式会社ウィルコムの会社更生手続終結に伴う連結子会社化に関するお知らせ)
  47. ^ ウィルコム、順調な業績回復で更生手続終結……ソフトバンクの連結子会社に RBBTODAY(2013年7月1日)
  48. ^ 合併効力発生日の延期に関するおしらせ
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    【WILLCOM FORUM 2005】 八剱社長、次世代技術や音声定額の動向を紹介
    高度化通信規格「W-OAM」対応のW-SIM発売について
    ウィルコムの新しい音声端末ラインアップの発売について〜全機種が高度化通信規格「W-OAM」(ダブリュー・オー・エー・エム)に対応〜
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  69. ^ 医療・福祉機関向け専用料金
  70. ^ 更生手続終結決定のお知らせ - 株式会社ウィルコム プレスリリース 2013年7月1日
  71. ^ イー・アクセスとウィルコムの合併、6月に延期
  72. ^ イー・アクセスとウィルコム、合併を6月に延期
  73. ^ ウィルコム
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  75. ^ 株式会社インプレス (2021年12月22日). “ソフトバンク、ウィルコム沖縄を22年4月に吸収”. ケータイ Watch. 2021年12月22日閲覧。
  76. ^ ウィルコム 有価証券報告書(平成17年度)(PDF)
  77. ^ ニュースリリース 京セラ株式会社との携帯電話事業譲渡に関する基本合意のお知らせ
  78. ^ 名古屋市交通局広告への抗議について
    名古屋市交通局からの回答について






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