イリオモテヤマネコ イリオモテヤマネコの概要

イリオモテヤマネコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/07/02 14:33 UTC 版)

イリオモテヤマネコ
イリオモテヤマネコ剥製(国立科学博物館)
イリオモテヤマネコ剥製(国立科学博物館
保全状況評価[1]
CRITICALLY ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 CR.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目 Carnivora
: ネコ科 Felidae
: ベンガルヤマネコ属 Prionailurus
: ベンガルヤマネコ
P. begalensis
亜種 : イリオモテヤマネコ
P. b. iriomotensis
学名
Prionailurus bengalensis iriomotensis
(Imaizumi, 1967)
シノニム

Mayailurus iriomotensis
Imaizumi, 1967
Felis iriomotensis (Imaizumi, 1967)

和名
イリオモテヤマネコ
英名
Iriomote cat
Iriomote wild cat
Iriomote-wilold-cat-distrib.png
イリオモテヤマネコの生息図

分布

日本西表島固有種または固有亜種[2][3][4][5][6][7][8][9]。 西表島は面積が290平方kmほどで、これはヤマネコの住む島としては(またヤマネコの生息域としても)世界最小[10]

分布域内では、主に標高200メートル以下にあるスダジイやカシからなる亜熱帯もしくは暖帯森林に生息する[2][9][11]河川の周辺や低湿原、林縁などを好む[2][4][7]

形態

体長はオス55-60センチメートル、メス50-55センチメートル、体重はオスで3.5-5キログラム、メスで3-3.5キログラムとオスの方がメスよりやや大きい[7]。尾は先端まで太く、尾長は23-24センチメートル[4][12]。胴が長く、四肢は太く短い[12]

全身の地色は暗灰色や淡褐色で、腹部や四肢の内側はより淡く、あごは白色である[12]。頭部の暗褐色の斑は頬に左右に2本ずつあり、ベンガルヤマネコのように額から背面にかけて5-7本の縞模様が入るが、ベンガルヤマネコとは違い肩の手前で途切れる[2][4][12]。体側面には暗褐色の斑点、胸部には不規則に3-4本の帯模様が入る[3][4]。尾全体は暗褐色であり、尾背面には不規則に暗褐色の斑点が入るが、尾腹面に斑紋が入らず、先端は暗色である[12]

耳介の先端は丸く黒色の毛で縁取られ、先端の体毛は房状に伸長しない[12]。また成獣の耳の背面は白濁色の虎耳状斑とよばれる斑紋がある[12]。この虎耳状斑は、ベンガルヤマネコは幼獣の時から小さな白濁した斑があり、成長するにつれ白色になるが、イリオモテヤマネコは幼獣にはこの虎耳状斑は無く、成長しても白色にはならない[12]。虹彩は淡い琥珀色である[12]。吻端の体毛で被われない板状の皮膚(鼻鏡)は淡赤褐色をしており、大型で、鼻面も太い[3][4][12]肉球の幅はイエネコの24-30ミリメートルより大きく、29-37ミリメートルである[12]

頭骨はイエネコに比べて細長いが、ベンガルヤマネコとは大きな違いはない[12]。しかし、ベンガルヤマネコよりも頭骨が厚く、その分脳の容量も小さく、脳の重量はベンガルヤマネコのオスの42グラムに対して、イリオモテヤマネコのオスは30グラムと小型である[12]後頭骨の突起と聴胞が接しない[2][3]。下顎の縫合部が短い[2][4]。歯列は門歯が上下6本、犬歯が上下2本、小臼歯が上下4本、大臼歯が上下2本の計28本で、ヤマネコなどのネコ類より上顎前臼歯が1対少ない[13]。亜熱帯に生息する哺乳類には珍しく、歯に年輪ができることが確認され、これにより年齢別での行動分析などができるようになると期待されている[14]。 臭腺(肛門腺)はベンガルヤマネコを含む他のネコ類は肛門内にあるのに対し、イリオモテヤマネコは肛門を取り囲むように存在する[12][15]

分類と系統

1967年の学会発表時にはイリオモテヤマネコは食肉目ネコ科の新属イリオモテヤマネコ属の1属1種 Mayailurus iriomotensis とされた[6]。今泉は世界のヤマネコの中でも特に原始的な特徴を形態に残すものと指摘、その点から約1000万年前の中新世から、約300万年前の鮮新世前期に出現した、化石群メタイルルス属Metailurusと近縁な原始的な特徴を残した種であるとした[3][6]。そういった観点から1000万年前の中新世から500万年頃前までの鮮新世に出現したネコ亜科の共通祖先であるメタイルルスによく似た特徴があると主張し[6][12]、このことから、イリオモテヤマネコの祖先は約300万年前に大陸から西表島などに分布域を広げたとしている[6]

一方で、他の専門家からはそれほど特殊なものではないとの見方が当初から強く、現在では頭骨や歯、標本や生体、遺伝子の研究などによる検討から独立種ではあるもののネコ属やベンガルヤマネコ属の一種とするか、あるいは独立種ではなくベンガルヤマネコの一亜種とすることがある[2][6]

核型や核内のリボソームRNAの制限酵素断片長、ミトコンドリアDNA内の12S リボソームRNAおよびチトクロムb分子系統学的解析はベンガルヤマネコと一致あるいはほぼ一致し、非常に近縁(ネコ科他種における種内変異あるいは個体変異の範疇)と推定されている[6][16]。チトクロムbの塩基置換速度および多様度からベンガルヤマネコの他亜種とは18-20万年前に分化したと推定され[17]、海洋地質学でも2万-24万年前には琉球諸島および大陸間に断続的な陸橋があったと推定されていることからこの時期に侵入したと推定されている[6]。本亜種内の遺伝学的多様性は乏しいと推定されている[8]




[ヘルプ]
  1. ^ a b The IUCN Red List of Threatened Species
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 今泉(1986)
  3. ^ a b c d e f g h 今泉(1991)
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 小原他(2000)
  5. ^ a b 加藤他(1995)
  6. ^ a b c d e f g h 増田(1996)
  7. ^ a b c d e f g h i 沖縄県(2005)
  8. ^ a b c d e f g h i j k 環境省 自然環境局 生物多様性センター
  9. ^ a b c d インターネット自然研究所
  10. ^ 今泉(1994), Pp. 50-75
  11. ^ a b c d e 今泉(2004)
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae 今泉(1994)、Pp.7-48
  13. ^ 今泉(1997)、PP.18-29
  14. ^ 琉球新報社. “イリオモテヤマネコ、歯年輪で年齢判別”. 2011年5月1日閲覧。
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 今泉(1994), Pp.119-157
  16. ^ Suzuki H et al.(1994)
  17. ^ Masuda R et al. (1995)
  18. ^ a b c d e f g h イリオモテヤマネコBOOK(2006)
  19. ^ a b c d e f g h i j 今泉(1994), Pp.75-117
  20. ^ a b 安間(2001), Pp.112-146
  21. ^ a b c d 西表野生生物保護センター. “イリオモテヤマネコについて”. 2011年5月1日閲覧。
  22. ^ 琉球新報社. “15歳1ヵ月「よん」死ぬ 最長寿イリオモテヤマネコ”. 2011年4月12日閲覧。
  23. ^ Imaizumi Y(1967)
  24. ^ a b c d e f g 今泉(1994), Pp.8-13, Pp. 144-147
  25. ^ a b c d e f g h i j k 戸川(1972), Pp.13-92
  26. ^ a b c d e f g h i j 戸川(1972), Pp. 93-138
  27. ^ a b c d e f g h i j k l m n 戸川(1972), Pp. 139-176
  28. ^ 戸川(1972), Pp.177-242
  29. ^ 沖縄県立博物館. “西表島総合調査報告書”. 2011年4月18日閲覧。
  30. ^ 伝説の生物「ヤマピカリャー」? 西表で目撃相次ぐ 琉球新報、2007年12月27日
  31. ^ a b c d 環境省. “イリオモテヤマネコ生息状況等総合調査(第4次)の結果について(お知らせ)”. 2011年5月1日閲覧。
  32. ^ The IUCN Red List of Threatened Species
    • Sanderson, J., Sunarto, S., Wilting, A., Driscoll, C., Lorica, R., Ross, J., Hearn, A., Mujkherjee, S., Khan, J.A., Habib, B. & Grassman, L. 2008.Prionailurus bengalensis. In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.4.
  33. ^ 国内希少野生動植物種 - 環境省
  34. ^ 環境省自然環境局野生生物課. “哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物I及び植物IIのレッドリストの見直しについて”. 2011年3月28日閲覧。
  35. ^ 環境省. “西表石垣国立公園 基礎情報”. 2011年3月29日閲覧。
  36. ^ 九州森林管理局. “西表島森林生態系保護地域(保全利用地区・保存地区)”. 2011年3月28日閲覧。
  37. ^ 西表野生生物保護センター. “イリオモテヤマネコを守る!〜IWCCの取り組み”. 2011年5月1日閲覧。
  38. ^ 琉球新報社. “西表で猫エイズ初確認/イリオモテヤマネコへの感染懸念/環境庁などが野良猫調査/県、竹富町と対策協議へ*影響は全く未知数”. 2011年5月1日閲覧。
  39. ^ 琉球新報社. “飼い猫の避妊義務化 イリオモテヤマネコ保護”. 2011年5月1日閲覧。
  40. ^ ヤマネコにせまる危機 - IWCC
  41. ^ 外来生物次々と侵入 広がる生態系への影響 - 八重山毎日新聞オンライン
  42. ^ a b 竹富町観光協会. “日本最南端の街、竹富町 ご当地キャラ「ピカリャ〜」”. 2011年4月23日閲覧。
  43. ^ 竹富町観光協会. “竹富町マスコットキャラクター 竹富町長訪問”. 2011年4月23日閲覧。
  44. ^ 竹富町観光協会. “竹富町マスコットキャラクター 名前が決定しました!”. 2011年4月23日閲覧。


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