アルツハイマー型認知症 治療

アルツハイマー型認知症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/10/19 08:29 UTC 版)

治療

薬物療法

アルツハイマー型認知症に対しては近年治療薬の開発によって薬物治療が主に行われるようになってきたが、現在のところ根本的治療薬は見つかっていない。

現在開発中の薬
現在開発研究段階ではあるが根本治療薬として以下が臨床研究中である。
  • Aβ(アミロイドベータ)ワクチン療法
  • 抗Aβモノクローナル抗体療法
現在発売中の薬
現在使用されているアルツハイマー型認知症の治療薬は大きく分けて2種類に分かれる。
  • ドネペジル(Donepezil アリセプト®:Aricept®)
    現在重症のアルツハイマー型認知症で使用できるのはドネペジルのみである。用量は1日あたり3-10mg(海外では23mg/日の用法もある)である。コリンエステラーゼ阻害薬に共通して最も多い副作用である消化管症状(吐き気・嘔吐・下痢)のため3mgから開始することが推奨されている。その他よく見られる副作用としては徐脈などが見られる。ドネペジルの効果についてはMMSEで1-2点程度であり劇的な改善が認められないものの、使用開始時に効果がなかった患者でも12ヶ月後に認知機能の低下が抑えられたとする報告があり、一定期間進行を遅らせることができると考えられている[19]
  • ガランタミン(Galantamine レミニール®:Reminyl®)
  • リバスチグミン(Rivastigmine リバスタッチパッチ® イクセロンパッチ®)
    分子量が小さいため経皮吸収が可能であり、飲み薬ではなく貼り薬として使用することが出来る。このため比較的消化管への副作用が少ない。アセチルコリンエステラーゼだけでなくブチリルコリンエステラーゼも阻害するため、従来のコリンエステラーゼ阻害薬よりも効果が高いとの報告がある[20][21][22][23]
  • メマンチン(Memantine メマリー®:Memary®)
    現在のところ軽症のアルツハイマー型認知症に対して適応が通っていないものの、海外の研究でドネペジルとメマンチン併用した群では自宅からナーシングホームへの入所率がドネペジル単独使用または薬剤非使用群に対し優位に低下することが分かっている[24]。メマンチンで最も多い副作用はめまいである。
周辺症状治療薬
アルツハイマー型認知症では、不眠、易怒性、幻覚妄想などの「周辺症状」と呼ばれる症状に対して、適宜対症的な睡眠導入剤抗精神病薬抗てんかん薬抗うつ薬などの投与が有効な場合がある。また、易怒性・切迫感・焦燥感のあるものには、加味温胆湯が有効であるという報告あったり、妄想、徘徊、暴力などの抑制に抑肝散が効能があることが報告されている。

その他

散歩などによる昼夜リズムの改善(光療法[25][26]、なじみのある写真や記念品をそばに置き安心感を与える回想法や、昔のテレビ番組を見るテレビ回想法など、薬物以外の介入が不眠や不安などに有効な場合もある。介護保険デイケアなど社会資源の利用も有用である。

2012年対馬に生息するツシマヤマネコが、死後の解剖の結果、異常な量のタンパク質が蓄積するなど、アルツハイマー病患者に類似した脳の変化を起こしていたことが発見された[27]

2013年東京工科大学応用生物学部の研究グループ(鈴木郁助教、生体成分計測(後藤正男)研究室)らにより、アルツハイマー病の予防にチモキノンが有効性を示すことが発見された[28]。同研究グループでは、アルツハイマー病に関係すると考えられている部分の二次元脳回路モデルを作成し、チモキノンとアミロイドベータを同時投与した[28]。その結果、アミロイドベータの単体投与時よりも細胞死を抑制する効果が発見された[28]。また、アミロイドベータの細胞毒性を抑え、シナプスの活動低下を減少させることも発見された[28]。以上のことから、研究グループではチモキノンにアルツハイマー病予防効果があると結論づけた[28]




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  2. ^ 「2025年に目指すべき社会の姿-『科学技術の俯瞰的予測調査』に基づく検討-」(2007年3月、科学技術政策研究所)
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  17. ^ Alzheimer's and High Blood Sugar Evolutionary Psychiatry、2011年9月20日
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  25. ^ 光の治療的応用―光による生体リズム調節 [リンク切れ]
  26. ^ アルツハイマー型痴呆患者の認知機能障害に対する高照度光療法の影響
  27. ^ “ネコもアルツハイマーに? 患者と同じ脳の変化”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2012年10月5日). オリジナル2012年10月5日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20121005055316/http://sankei.jp.msn.com/science/news/121005/scn12100514130006-n1.htm 
  28. ^ a b c d e 株式会社 マイナビ. “中東の健康食にアルツハイマー病に有効な成分 - 東京工科大が発見 マイナビニュース -”. 2013年10月10日閲覧。







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